Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    mya_kon

    @mya_kon

    何かがあります

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 77

    mya_kon

    ☆quiet follow

    おめでとうございます!こちらがバロック聞きながら書いた夏尾です!全くそんなことは関係ないのですが、なんか好きですよ、バロック。今回の夏尾は肩に顎乗せちゃう系です。さすがに今、ここまでの満員電車はなかなか味わいませんが、まぁ、なかなか……ね……☺️

    #夏尾
    natsuo

    満員電車の夏尾2本目 最悪だ。
     電車遅延と運転見合わせが重なって、振替輸送として選ばれたこの路線。いつもだって混んでるのに、今日の混み方は異常だよ。ぎゅうぎゅうというかギチギチというかミチミチというかビチビチというかもう無理じゃね? ってぐらい人が乗ってくる。俺はカバンを胸の前でしっかりと抱いて、爪先立ちになりながら電車の揺れに身を任せた。
     踵を降ろそうとしたら誰かの足があって、どうにもならない。避けたいんだけど、どこもかしこも人の足がある。最小スペースで乗り切るしかないのだ。だから俺一人の意思で倒れないように、とか無理なんだよな。
     俺が耐えたとしても、隣や後ろに立つ人がバランスを崩したら俺も道連れになるし、そうなるとまた別の人が道連れになって、それでまた別の人が……とどんどん数珠つなぎなのか玉突きなのかで倒れていく。この前はそれで一メートルぐらい移動した。頼むから急ブレーキだけはやめてくれ。
     電車が停まって、また押し込まれる。動ける隙間なんてないから、人に重なってスペースの節約をするしかない。はあ? 人に重なってスペースの節約をする? 意味分かんねぇ。
     気がついたら俺は知らない人と向き合って立っていたし、その人の肩に顎が乗っていた。うひ〜〜〜〜、待ってくれ。知り合いでもキツイのに、知らない人とはもっとキツイ! どうにか体を離したいが、そんなことができるわけもない。
     動き出した電車の中は異様な静けさを保っている。乗客全員が「早く次の駅に着け」と願っている時間だ。
     俺は知らない人の肩に顎を乗せながら目を瞑る。幸いこの人の後ろに立つのは小柄な女性だったし、周りの人もみんな反対側を向いているので目が合うことはない。それでも何というか無理でしょ……。知らない人の肩に顎が乗るほど混んでいるのは初めてだ。
     乗る電車を早くすれば満員じゃないかもしれないけど、それをするなら一時間ぐらい早めないといけないんだよなぁ。遅くするにしても始業時間は変わらないから限界があるし、しかもそうなると遅延が遅刻に直結する。遅延も渋滞もない自転車通勤が最強なのかな。うちから会社までどれぐらいなんだろう。会社に駐輪場ってあったっけ? ないよな。てことは駐輪場を借りることになるのか。うう〜〜〜〜満員電車が憎い〜〜〜〜。
     電車はのろのろとしたスピードで走る。この調子じゃ次の駅に着くのはいつになるんだろうか。俺はいつまで爪先立ちで、知らない人の肩に顎を乗せ続けるんだろうか。さっき一瞬だけ見えたスーツや刈り上げ感から「できる男」臭がした。てかなんかリアルにいい匂いだな。香水とかつけてるのかな。
     俺もかっこよく香水をつけたい。高校のときに流行りのものをつけてたら「つけすぎ」「くさい」「お前に似合ってない」と当時の彼女にボロクソ言われたからな。それ以降怖くてつけてないけど、やっぱいいよなぁ。
     もしかしたらいい香りの正体は洗剤なのかもしれないし、シャンプーかもしれないし、整髪料かもしれないと思い直す。とはいえ突然知らない人に「そのいい香りって何ですか?」と聞くわけにはいかない。頑張ってこの匂いを覚えて、どこかで見つけられたらいいんだけどヒントがなさすぎる。
     洗剤とかシャンプーなら普通に使えばいいけど、香水だったときが怖いよな。店員さんに使い方を聞くしかない。てか、そうか、聞けばいいんだ。分からないことは素直に聞いて、優しく教えてもらえばいい。そしたらやっぱり香水がいいな。欲しくなってきたな。
     普段の倍近く時間をかけて電車が駅に着いた。ターミナル駅は人がどっと降りる。俺もその一人なので、後ろから押されながら電車から降りる。
     俺が押されているということは、肩を借りていた人も押されているわけで、二人仲良く外に飛び出た。
    「お前」
    「え?」
    「嗅ぎすぎ」
     お兄さんが笑う。俺は意味を理解するのに時間がかかり、ワンテンポ遅れて顔が熱くなるのを感じた。


     あれから数日が経って、お兄さんのことは毎朝車内で見かけていた。
     俺よりも後に乗り込んできて、同じ駅で降りる。挨拶をするわけではないが、姿が見れるだけで嬉しい。電車は相変わらず混んでいるけど、あの日ほどひどくなることはない。あれは異常だったもんな。いくらなんでも足ぐらいはちゃんと置ける。
     と思っていたのに、今日はこの路線で人身事故が起きた。またぎゅうぎゅうに詰め込まれて出社するのかと暗い気持ちになっていたが、今回は運転を見合わせるそうだ。再開見込みなし。こりゃもう仕方ないよね。俺は意気揚々と電車を降りて、駅前のカフェに入った。
     こういうのはいかに早く見切りをつけるかだ。でないとカフェの席はすぐに埋まる。俺はイスの上にカバンを置いてレジに並んだ。すると後ろから肩を叩かれる。不思議に思って振り返ると、例のお兄さんがニヤニヤと笑いながら立っていた。
    「わ、あ」
    「席どこだよ」
    「え、えと、そこの端っこの」
    「イス二つあるな」
    「は、い」
    「一つ借りるぞ。ついでに俺のコーヒーもよろしく」
    「はぁ……え、ええと」
    「代わりにイイコト教えてやるよ」
     お兄さんが前髪を撫で付ける。その仕草も俺はどうしてか目が離せなくて、教えてもらえるイイコトが何のことかも分からず、ただ何度も頷いた。よく分からないけど、このお兄さんと少しでもお近づきになれるなら、コーヒーの一杯や二杯、席の一つや二つぐらい差し上げますとも。
     ドキドキしながら席に戻ると、お兄さんはテーブルの上に小さなスプレー容器を置いていた。
    「これ?」
    「お前がこの前死ぬほど嗅いでた香水」
    「わ⁉︎ あ!」
     持っていたコーヒーカップをひっくり返しそうになる。これ! え⁉︎
     流石にここでプッシュするわけにはいかないので、容器の匂いを嗅ぐ。あー、これこれ、お兄さんのいい香りのやつだ。えー、めっちゃ嬉しい。これでいつでも嗅ぎ放題じゃん。違う、つけ放題じゃん。ああでもこの量だとすぐなくなっちゃうのか。ちゃんとしたやつ買わないとだよな。でもでも、まずはこれを……。
    「もらっていいんですか?」
     俺が念のために聞くと、お兄さんはストローから口を離してじっと俺を見る。どっちなんだろう。もらえるもんだと思ってたけど違うのかな。お兄さんの大きな黒目は表情が読みにくい。
    「ダメだって言ったら?」
    「え!」
     思わず大きな声が出た。店内に空席がないか確認しに来た人が、チラッとこっちを見てから退店する。両手で口を押さえた俺の向かいで、お兄さんが「嘘だよ」と笑う。
    「お前にやる」
     それと、とテーブルの上の紙ナプキンにお兄さんが何かを書く。
    「香水のブランドな」
    「ありがとうございます!」
     お兄さんの手書きメモだ! 俺はそれを大事にカバンにしまった。
     今日はこのまま、電車が動かなくてもいいや。お兄さんともっと話しがしたい。
     そう思いながらコーヒーを飲む。今日は特別おいしく感じた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    mya_kon

    DONEこれは……いつか本になるから……と自分に言い聞かせて書いた夏尾……フォロワーが描いた夏尾見て書いた……わああああああああってなりながら……書いた……いつか本になるから……原稿といっても間違いではない……………
    まぐれ、気まぐれ のし、と頭に重さがかかる。確認しなくても分かる。尾形さんが俺の頭の上に手を置いたのだ。しゃがんだ姿勢のまま、俺は木の陰から一匹の鹿を見る。
     遡ること一時間前。
     俺はもっと土方さんの役に立ちたいと思い、茨戸からずっと持っているピストルの腕を上げようと考えた。せっかくなら誰かに教えてもらいたいな、と思ったのでまず最初に有古さんと都丹さんに声をかけた。普段からピストルを使ってる都丹さんや、従軍経験から有古さんなら! と考えたのだ。ところが二人は用事があったようで断られてしまった。
     そうなるととても困る。残っているのは永倉さんと牛山さんと門倉さんとキラウシさんと尾形さんだ。その中で可能性があるとしたら……尾形さんだよなぁ。もちろん尾形さんだって従軍していたし、そうでなくても狙撃の名手だ。射程距離がちょっと変わったくらいで下手くそになるとは思えない。とはいえ、尾形さんにお願いしたところで聞いてくれるとは思えない。
    2759

    mya_kon

    DONE「吸血鬼が生きる世界には、マッチョが血液を提供するバーがあるのでは?」というフォロワーさんの呟きに反応して、爆発した結果のものです。夏太郎が吸血鬼、尾形がマッチョバー店員やってます
    もっといっぱいください!「へー、血液パックの宅配もやってんだ……」
     俺がスマホでぽちぽち見てるのは亀蔵に勧められた「マッチョバー」の公式サイトだ。何でもそこで働いているのは筋肉隆々のマッチョたちで、店ではその人たちの血液を提供しているらしい。
     男の人しかいないかと思ったけど、女の人もいるんだな。前からマッチョの血液は美味しくて栄養満点とは聞いていたけど、何だか手が伸びなかったのは気軽に買える場所に店がなかったのと、なんとなーく飲んだら自分もマッチョになりそうで二の足を踏んでいた。
     マッチョになるのが嫌っていうか、マッチョになって制限がかかるのが嫌というか……。両腕が閉じれないとか、着れる服が限られるとか、注射の針が入りにくいとか聞いていて、えー、じゃあソフトマッチョぐらいがいいなぁ、と思っていたのだ。まあ、今はソフトマッチョを目指している最中だから、多少のマッチョ成分を取り入れたところで問題はないんだけどさ。
    7427

    recommended works