俺はいま、猛烈に後悔している。
容赦なく照りつける日差し。やかましい蝉の鳴き声。ボトルの水は飲み干してしまった。辺りには一軒のコンビニすら見当たらない。
「あ〜〜!チクショウ!!」
誰も居ないのを良いことに、あらん限りの力で吠える。
「クソッ。俺が死んだら傑のヤツ、ぜってー祟ってやるからな」
不快な汗を乱暴に拭いながら、脳裏に思い浮かべた親友に向かって悪態を吐く。
アスファルトの道路を歩いていたはずが、いつの間にやら獣道を進んでいた。鬱蒼と茂る木々に囲まれて、なんだ森林浴じゃんと思えれば良いのだが事態はそれほどお気楽ではない。要するに、山中で遭難している真っ最中なのだ。
月に二度。だいたい、第二と第四の土曜日が多い。傑はバイトへ向かう。どんな仕事かは知らない。ただ、遠いところだというのは分かる。毎回、わざわざスクーターに乗って行くからだ。俺や硝子が「遊ぼ〜ぜ〜」と誘っても、絶対に休まない。
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