Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    村人A

    @villager_fenval

    只今、ディスガイア4の執事閣下にどハマり中。
    小説やら色々流します。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 30

    村人A

    ☆quiet follow

    首絞め未満のお話です。未満なので絞めてません。ちょっとギスギスしてる?ので、そこだけ注意です。

    手のひらから伝わる、感情部屋の中。ベッドが軋むのは、ふたり分の体重のせいだ。
    しかしそれは、フェンリッヒの首にヴァルバトーゼが手を重ねている、なんとも物騒な現場だった。

    簡単なこと。
    ヴァルバトーゼは、今日のプリニーたちの質が殊更悪く、イラついていた。
    イラついているということは、判断能力が鈍っている。フェンリッヒもイラついていたのか、普段仕掛けないタイミングで仕込んだ。
    ──人間の血を。

    「血は飲まぬ、と──何度言ったらわかるのだ」

    そう言ったヴァルバトーゼは、フェンリッヒを自室に連れ込み──今に、至る。
    自分から連れてきて首を絞めようとしていたというのに、ヴァルバトーゼはどこか苦悶の表情を浮かべていた。
    目も口も閉じて首を差し出すように顎を上げていたフェンリッヒの、口が開く。

    「──どうされました、閣下」
    「……ッ」
    「言うことを聞かぬシモベの首など、さっさと絞めた方がよろしいのでは?」
    「…お前は、逃げぬのか」
    「わたくしは、月が輝き続ける限り─そう、この命ある限り、あなたにお仕えするという約束を結んだシモベでございます。ここであなたによって終わらせられるのであれば、それも約束を守ったと言えましょう。閣下の気の済むように──どうぞ?」

    命ある限り仕える。
    そう、今ここで主によって生を終える様なことになれば、シモベは約束を守ったことになる。
    とあらば、約束を破るのは主の方。
    すでに一度、違う者との約束を破っている。約束を絶対に守るという彼の信条が、これ以上傷付けられる訳にはいかない。
    このシモベは賢い上、頭が回る。きっと、手にかけることが出来ないと分かってこう言っているのもあるのだろう。
    ある意味、いい信頼の気持ちを持っている。

    「……ッ、俺は…」
    「お好きなように。あなた様の選択なら、わたくしは喜んで受け入れましょう」

    目は開けない。首は差し出されたまま。
    本当に手にかけない保証などないのに、まさに成すがままのシモベの首にかけた手に、力が僅かに込められる。
    どうこう出来る力では無い。力を入れるか迷っている、すぐに逃げ出せる程の力。
    苦虫を噛み潰したような顔をし、手を離したヴァルバトーゼは、歯を食いしばったまま、フェンリッヒの上から退く。

    「…よろしいので?」
    「……俺はもう、約束を破る訳にはいかぬ…それに、失ったあの痛みをもう一度味わうのは…ごめんだ」
    「ご自身で手を下されるのに、痛みですか?」
    「俺自らの手で約束は破れん、と言っておるのだ。…今回は、不問にしてやる。やるのは構わんが、機を見てやれ」
    「おや、悪魔的には万全な機だったと思いますが…まぁ、主の言うことなら、従いましょう」
    「なら血を仕込むのをやめろ。…と言った所で聞かんだろう」
    「もちろん。それとこれとは、話が別でございますので」

    約束を破り、後悔から来る胸の激痛を知っているヴァルバトーゼは、そう言ってフェンリッヒに背を向ける。

    (あの女のように、わたくしを喪うことで、あなたの心に永遠に住まうことが許されるのなら─と思いましたが、そうなればもうお仕えすることが許されない…疲れから、判断能力が鈍ったか)

    合理的ではなかった考えに、フェンリッヒは軽くため息を吐いた。

    「…悪かったな。もういい、下がれ」
    「いえ、こちらこそ申し訳ございません」

    悪かった、などと謝罪の言葉を口にする。
    不機嫌な時にシモベが要らぬことをしたというのに。
    顔が見えないため、何を考えているかは分からない。だがフェンリッヒは、小さくなったその背中を不敵な笑みで一瞥し、色々な感情を込めて──ただ一言、小さな言葉を返した。

    「…お優しいことで」

    それは皮肉か、敬念か。
    言葉の真の意味は、吐いた執事のみぞ知る。

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺👏💖💖💴💴💴
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    last_of_QED

    DONEディスガイア4で悪魔一行が祈りに対して抵抗感を露わにしたのが好きでした。そんな彼らがもし次に祈るとしたら?を煮詰めた書き散らしです。【地獄の祈り子たち】



    人間界には祈る習慣があるという。どうしようもない時、どうすれば良いか分からぬ時。人は祈り、神に助けを乞うそうだ。実に愚かしいことだと思う。頭を垂れれば、手を伸ばせば、きっと苦しみから助け出してくれる、そんな甘い考えが人間共にはお似合いだ。
    此処は、魔界。魔神や邪神はいても救いの手を差し伸べる神はいない。そもそも祈る等という行為が悪魔には馴染まない。この暗く澱んだ場所で信じられるのは自分自身だけだと、長らくそう思ってきた。

    「お前には祈りと願いの違いが分かるか?」

    魔界全土でも最も過酷な環境を指す場所、地獄──罪を犯した人間たちがプリニーとして生まれ変わり、その罪を濯ぐために堕とされる地の底。魔の者すら好んで近付くことはないこのどん底で、吸血鬼は気まぐれに問うた。

    「お言葉ですが、閣下、突然いかがされましたか」

    また始まってしまった。そう思った。かすかに胃痛の予感がし、憂う。
    我が主人、ヴァルバトーゼ閣下は悪魔らしからぬ発言で事あるごとに俺を驚かせてきた。思えば、信頼、絆、仲間……悪魔の常識を逸した言葉の数々をこの人は進んで発してきたものだ。 5897

    last_of_QED

    DONEしがない愛マニアである私が原作の奥に想い描いた、ディスガイア4、風祭フーカと父親の話です。銀の弾は怪物を殺せるか?【銀の弾など必要ない】



    白衣が揺れる。頭をかいてデスクに向かうそのくたびれた男に私は恐る恐る声を掛ける。

    「パパ、お家なのにお仕事?」

    男はこちらを振り返りもしない。研究で忙しいのだろうか。それとも、私の声が届いていないのだろうか。
    父親の丸まった背中をじっと見つめる。十数秒後、その背がこわごわと伸び、首だけがわずかにこちらを向く。

    「すまん、何か言ったか?」

    この人はいつもそうだ。母が亡くなってから研究、研究、研究……。母が生きていた頃の記憶はあまりないから、最初からこんな感じだったのかもしれないけれど。それでも幼い娘の呼び掛けにきちんと応じないなんて、やはり父親としてどうかしている。

    「別に……」

    明らかに不満げな私の声に、ようやく彼は腰を上げた。

    「いつもすまんな。仕事が大詰めなんだ」

    パパのお仕事はいつも大詰めじゃない、そう言いたいのをぐっと堪え、代わりに別の問いを投げかける。

    「いつになったらフーカと遊んでくれる?」

    ハハハ、と眉を下げて笑う父は少し疲れているように見えた。すまんなあ、と小さく呟き床に胡座をかく。すまん、それがこの人の口癖だった。よう 3321

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

    last_of_QED

    DOODLE【10/4】ヴァルバトーゼ閣下🦇お誕生日おめでとうございます!仲間たちが見たのはルージュの魔法か、それとも。
    104【104】



     人間の一生は短い。百回も歳を重ねれば、その生涯は終焉を迎える。そして魂は転生し、再び廻る。
     一方、悪魔の一生もそう長くはない。いや、人間と比較すれば寿命そのものは圧倒的に長いはずであるのだが、無秩序混沌を極める魔界においてはうっかり殺されたり、死んでしまうことは珍しくない。暗黒まんじゅうを喉に詰まらせ死んでしまうなんていうのが良い例だ。
     悪魔と言えど一年でも二年でも長く生存するというのはやはりめでたいことではある。それだけの強さを持っているか……魔界で生き残る上で最重要とも言える悪運を持っていることの証明に他ならないのだから。

     それ故に、小さい子どもよりむしろ、大人になってからこそ盛大に誕生日パーティーを開く悪魔が魔界には一定数いる。付き合いのある各界魔王たちを豪奢な誕生会にてもてなし、「祝いの品」を贈らせる。贈答品や態度が気に食わなければ首を刎ねるか刎ねられるかの決闘が繰り広げられ……言わば己が力の誇示のため、魔界の大人たちのお誕生会は絢爛豪華に催されるのだ。
    3272