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    村人A

    @villager_fenval

    只今、ディスガイア4の執事閣下にどハマり中。
    小説やら色々流します。

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    村人A

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    フォロワーさんとの会話で浮かんだネタを小説にしてみました。
    今回も執事閣下。余裕がある受けが好き。

    ずっと、傍で。仲間が増えた賑やかな地獄。
    その中では、いつもの光景があった。
    天使に難癖をつけるシモベの姿に、周りの女子たちがギャーギャーと騒ぎ始める。
    いつもの光景、いつものやりとり。それをたまたま通りがかった主は、無言で通り過ぎる。─そう、いつもは。

    「……」

    まだ止めるほどヒートアップしていた訳では無い。だが主はシモベへ近付く。

    「フェンリッヒ」
    「閣下?どうされ─」

    何故か徐に頭を撫で始めたのだ。
    親が子供にやるような優しいものではなく、少し乱暴だ。だが身長差を考えるとそうなるものかもしれない。
    突然のことに固まっていたフェンリッヒも、我に返る。

    「ヴァル様!?何をなさって─」
    「動くな」
    「は、はぁ…?」

    意図はわからない。だが、主が動くなと言えば動けない。
    突如始まったことに、その場にいる誰もが無言になった。
    同時にフェンリッヒのいたたまれない気持ちが膨れ上がってゆく。

    「フェンリッヒ」
    「は、はい」
    「俺はどこにも行かんぞ」
    「……!!」
    「仲間が増えても、お前と俺は変わらん。これまでもこれからも、変わらず共にいるであろう。そう誓ったではないか」
    「そ、そうですが…それとこの行動になんの関係が?」
    「ふむ。行動でも示している、とでも言っておこうか」
    「…?」

    分からない。主の行動が。
    困惑したフェンリッヒは一瞬抵抗の意すらも忘れてしまう。が、状況が変わった訳では無いのだ。

    「……そろそろ放して頂いてよろしいですか」
    「まぁ、そう言うな。もう少し撫でさせろ」
    「……」
    「嫌か?」
    「…わたくしは、もういい大人ですよ」

    口ぶりは嫌がるような言葉を吐くが、その尻尾は嬉しさを伝えるように左右に揺れている。それを見たヴァルバトーゼは満足そうに微笑む。

    「フフ、そうかそうか」
    「何がおかしいので?」
    「お前のそういう、いじらしい所は飽きぬ」
    「というか、このような場所で、やめて頂きたいだけなのですが」
    「なるほど。こういう場所でなければ良いのか?」
    「ヴァル様」
    「ククッ、冗談だ」

    恥ずかしいのか、頬を染めながら凄んでくるシモベに笑みが零れる。
    そこでようやく、ヴァルバトーゼはその手を放した。乱暴に撫でられていた髪はそこだけがぐしゃぐしゃだ。

    「…まぁ、お前がその気なら、俺とてやぶさかでは無いが?」
    「っ!」
    「で、どうなのだ?」
    「……我が主の御心のままに」
    「お前らしい返答だ。…では、また後でな」

    見惚れるような美しい微笑みを浮かべ、フワリとマントを翻しながらヴァルバトーゼが歩いていく。

    「…たまーに、ヴァルっちってキレーな顔するわよね」
    「デスコでもドキッとしちゃいそうなのデス」

    そのような笑みを向けられる相手、という意味をまだ幼いふたりは知らぬらしい。

    (あのお方は…本当に心臓に悪い…!!)

    いつも掻き回す側の人狼が、主相手にはペースを持っていかれる。
    主に乱された部分の髪をさらにぐしゃぐしゃに掻き回して、フェンリッヒはそのまま何を言う気力もないまま歩いていった。

    「…改めてすごいわねぇ、ヴァルっちは。あのフェンリっちを制御しちゃうんだし」
    「どっちかというと、手綱を握ってるのはフェンリっちさんかと思っていたデスが、こう見てるとどっちもどっちっぽいのデス」
    「フフ、いいじゃありませんか?面白いことには変わりありませんもの」
    「…ま、そうね!」
    「あのフェンリっちさんが赤くなるなんてめちゃくちゃレアなのデス!」

    しばらく、フェンリッヒはそのことでフーカたちにイジられていた。
    それにムキになったシモベの背を眺め、ククッと喉の奥で笑いを噛み締める主の姿が、しばらく見られていた─らしい。


    終わり
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    recommended works

    last_of_QED

    CAN’T MAKE十字架、聖水、日の光……挙げればきりのない吸血鬼の弱点の話。おまけ程度のヴァルアル要素があります。【吸血鬼様の弱点】



    「吸血鬼って弱点多過ぎない?」
    「ぶち殺すぞ小娘」

    爽やかな朝。こともなげに物騒な会話が繰り広げられる、此処は地獄。魔界の地の底、一画だ。灼熱の溶岩に埋めつくされたこの場所にも朝は降るもので、時空ゲートからはささやかに朝の日が射し込んでいる。

    「十字架、聖水、日の光辺りは定番よね。っていうか聖水って何なのかしら」
    「デスコも、ラスボスとして弱点対策は怠れないのデス!」
    「聞こえなかったか。もう一度言う、ぶち殺すぞアホ共」

    吸血鬼の主人を敬愛する狼男、フェンリッヒがすごみ、指の関節を鳴らしてようやくフーカ、デスコの両名は静かになった。デスコは怯え、涙目で姉の後ろに隠れている。あやしい触手はしなしなと元気がない。ラスボスを名乗るにはまだ修行が足りていないようだ。

    「プリニーもどきの分際で何様だお前は。ヴァル様への不敬罪で追放するぞ」

    地獄にすら居られないとなると、一体何処を彷徨うことになるんだろうなあ?ニタリ笑う狼男の顔には苛立ちの色が滲んでいる。しかし最早馴れたものと、少女は臆せず言い返した。

    「違うってば!むしろ逆よ、逆!私ですら知ってる吸血鬼の弱 3923

    last_of_QED

    DOODLE主人に危機感を持って貰うべく様々なお願いを仕掛けていくフェンリッヒ。けれど徐々にその「お願い」はエスカレートしていって……?!という誰もが妄想した執事閣下のアホエロギャグ話を書き散らしました。【信心、イワシの頭へ】



    「ヴァルバトーゼ閣下〜 魔界上層区で暴動ッス! 俺たちの力じゃ止められないッス!」
    「そうか、俺が出よう」

    「ヴァルっち! こないだの赤いプリニーの皮の件だけど……」
    「フム、仕方あるまいな」

    何でもない昼下がり、地獄の執務室には次々と使い魔たちが訪れては部屋の主へ相談をしていく。主人はそれに耳を傾け指示を出し、あるいは言い分を認め、帰らせていく。
    地獄の教育係、ヴァルバトーゼ。自由気ままな悪魔たちを良く統率し、魔界最果ての秩序を保っている。それは一重に彼の人柄、彼の在り方あってのものだろう。通常悪魔には持ち得ない人徳のようなものがこの悪魔(ひと)にはあった。

    これが人間界ならば立派なもので、一目置かれる対象となっただろう。しかし此処は魔界、主人は悪魔なのだ。少々横暴であるぐらいでも良いと言うのにこの人は逆を征っている。プリニーや地獄の物好きな住人たちからの信頼はすこぶる厚いが、閣下のことを深く知らない悪魔たちは奇異の目で見ているようだった。

    そう、歯に衣着せぬ言い方をしてしまえば、我が主人ヴァルバトーゼ様は聞き分けが良過ぎた。あくまでも悪魔なので 7025

    last_of_QED

    BLANK【5/24 キスを超える日】ほんのり執事閣下【524】



     かつてキスをせがまれたことがあった。驚くべきことに、吸血対象の人間の女からだ。勿論、そんなものに応えてやる義理はなかったが、その時の俺は気まぐれに問うたのだ。悪魔にそれを求めるにあたり、対価にお前は何を差し出すのだと。
     女は恍惚の表情で、「この身を」だの「あなたに快楽を」だのと宣った。この人間には畏れが足りぬと、胸元に下がる宝石の飾りで首を絞めたが尚も女は欲に滲んだ瞳で俺を見、苦しそうに笑っていた。女が気を失ったのを確認すると、今しがた吸った血を吐き出して、別の人間の血を求め街の闇夜に身を隠したのを良く覚えている。
     気持ちが悪い。そう、思っていたのだが。
     ──今ならあの濡れた瞳の意味がほんの少しは分かるような気がする。

    「閣下、私とのキスはそんなに退屈ですか」
    「すまん、少しばかり昔のことを思い出していた」
    「……そうですか」

     それ以上は聞きたくないと言うようにフェンリッヒの手が俺の口を塞ぐ。存外にごつく、大きい手だと思う。その指で確かめるよう唇をなぞり、そして再び俺に口付けた。ただ触れるだけのキスは不思議と心地が良かった。体液を交わすような魔力供給をし 749