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    住めば都

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    住めば都

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    あくねこ、ハウレス夢。
    朝、しんどそうにしている主様に四葉のクローバーを渡すハウレスの話。生活の思い出ネタバレあり。

    これなんと、ほぼ実話でして。ある朝、仕事行きたくね〜と思いながら起きて、家出る前の時間にハウレスを担当にしてつんつんしてたら、四葉を持ってきておまじないをしてくれたんですよ……そういうとこだぞハウレス……

    #あくねこ夢
    cats-eyeDream
    #aknkプラス
    aknkPlus
    #aknk夢
    #ハウレス
    howles.

    幸福が降り注ぎますように とある朝のこと。主人の起床時刻に寝室を訪ねたハウレスは、いつまでたってもノックに応答がないことに首を傾げた。
     常であれば、すぐに「どうぞ」と応えがあるのだが。ハウレスの主人は寝坊も二度寝もめったにしないしっかり者で、彼が起床の声掛けにくるころには、身支度まで済ませていることがほとんどなのだ。
    「失礼いたします。主様、起床のお時間ですよ」
     もしかしたら今朝は、主人の貴重な寝起き姿が見られるかもしれない。不謹慎とは思いながらも、胸を躍らせながらハウレスは扉を開けた。しかし、ことは彼が思っていたほど簡単ではないようだった。
     まだ眠っていると思われた主人は、ぱっちりと目を開いていた。しかし体は未だベッドの上にあり、毛布にくるまったまま。起きたくないと、全身で主張しているようにハウレスには見えた。
    「おはようございます、主様。……どこかお加減が優れないのでしょうか?」
    「……ううん」
     体を丸めたまま、彼女は首を横に振った。浮かない表情をしてはいるが、見たところ顔色は悪くない。体調不良や睡眠不足ではなさそうだ。であれば、あとは気持ちの問題か。
     ハウレスとしては、見るからに辛そうな主人を無理やり起こすことはしたくない。彼女は普段、頑張りすぎだと言えるほど頑張っているのだから、たまに休むくらいでちょうどいいと思う。けれど明確な理由のないまま休みを取った場合、真面目な主人が「サボってしまった」と後悔に苛まれることもまた、容易に想像がついた。
    「……ハウレス」
     起こすべきか、休ませるべきか。究極の二択を迫られていたハウレスは、主人に名を呼ばれるなり思考を放り投げた。
    「はい、いかがいたしましたか?」
    「手を、貸してほしい……」
    「はい。かしこまりました」
     聞いたことのないような弱々しい主人の声に、ハウレスの胸は痛んだ。自分にできることがあるなら、なんだってして差しあげたい。その一心で、ハウレスは主人の枕元に跪いて両手を差し出した。
    「……ありがとう」
     主人はゆっくりと身を起こした。差し出したハウレスの手に、小さな手が重ねられる。彼女は片方を引き寄せて、そこに頬を寄せた。ぽろりと一粒、目尻から涙が落ちて、手袋に吸い込まれ消えた。
    「主様……」
    「だいじょうぶ……大丈夫」
     主人はそっと目を伏せ、深呼吸を数度繰り返した。そうして目を開くとパッと手を離し、力なく笑みを浮かべる。
    「ありがとう、ハウレス。面倒かけてごめんね」
    「そんなふうに言わないでください! 主様の助けになれたのなら、俺にとってそれ以上の喜びはないのですから」
    「……うん。ありがとう」
     以降の主人は、いつも通りの様子に見えた。けれど、先ほどの姿を見ているハウレスも目には、どうしても無理をしているように映ってしまう。
     なにかほかに、主様のためにして差し上げられることはないか。
     主人が朝食をとる間、考えを巡らせていたハウレスの脳裏に、閃くものがあった。食後のお茶の給仕をベリアンに任せ、裏庭へ走る。
    「確か、この辺りに……あった!」
     ハウレスが覆い被さるようにして覗きこんだのは、クローバーの茂みだった。早朝のトレーニング中に、ここで四葉のクローバーを見つけたのだ。近いうち、主人を散歩に誘って案内するつもりでいたが、今朝の彼女にこそ、四葉のもたらす幸運は必要だろう。
     根元から摘み取った葉を、ハウレスはそっとハンカチに包んだ。急いで主人の元へ戻る。
     しかし駆け込んだ食堂に主人の姿はなく、ハウレスは踵を返して階段を駆け上がった。普段のハウレスであれば決してやらない無作法だったが、急がなければ主人は仕事へ出かけてしまう。
    「主様、失礼いたします!」
     弾む息はそのまま、ハウレスはノックもせずに扉を開けた。主人は忘れ物がないかどうか、荷物の確認をしているところらしかった。出勤用のカバンの傍に、ロノが用意したのであろう弁当包が置かれている。
    「ハウレス? どうしたの、そんなに急いで……?」
    「申し訳ありません……どうしてもお出かけの前に、主様にお渡ししたいものがあって……」
     ハウレスは深く息をついて呼吸を整えると、懐からハンカチを取り出し広げてみせた。不思議そうにしていた主人が、中から現れた四葉のクローバーに目を瞠る。
    「すごい、四葉のクローバーだ!」
    「はい。俺たちの世界では、四葉のクローバーは幸運を運ぶものとして有名なんです。これは俺が見つけたものですが、四葉に向かって大切なひとの名前を三回唱えると、その人のところにも幸運がやってくると言われているんです」
     見つけたその場で手折るのではなく、四葉の元までわざわざ主人を連れていこうとしたのは、その葉のもたらす全ての幸運を、大切な彼女に受け取ってほしかったからだ。残念ながら、その願いは叶えられなかったけれど。
    「……主様、手を出していただけますか?」
    「う、うん」
     小さな手のひらに四葉を乗せて、ハウレスは両手でそっと包むように握った。自分へもたらされる幸運も全て、主人のもとへ注がれるように。祈りを込めながら、この世でいっとう大切な名前を唱える。
    「今日という日が、主様にとって幸せなものでありますように。四葉は、このままお持ちください」
    「いいの?」
    「はい。主様のために、お持ちしたものですから」
    「……ありがとう、ハウレス。本当に、ありがとう」
     それからまもなく、主人は金の指輪を指から抜いて、ハウレスの手の届かぬ世界へと帰っていった。行ってきますと告げた声が、平生の溌剌さを取り戻していたように聞こえたのが、ハウレスの願望ばかりでなければいい。
     気休め程度にしかならないかもしれない。それでも、世界を越えて傍に在れないハウレスに代わり、渡した四葉のクローバーが、少しでも主人の気分を上げてくれることを、祈るばかりだった。
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    住めば都

    DONEあくねこ、ルカス夢。
    いつもドキドキさせられて悔しい主様が、意趣返しのつもりで「ルカスは冗談ばっかり」と返したら、実は全部本気の本心だったと暴露される話。

    交渉係を務めて長い男が、自分の思いに振り回されて本音を隠せず、苦し紛れに冗談だよって見え見えの誤魔化し方しかできないのめちゃくちゃ萌えるなと思うなどしました
    いっそ全部、冗談にしてしまえたら 目の覚めるような美人ではない。愛嬌があるわけでも、聴衆を沸かせる話術を持つわけでもない。
     至って普通。どこにでもいそうな、地味で目立たないタイプ。――それが私だ。
     おおよそ三十年かけて築き上げた自己認識は、異世界で出会ったイケメン執事たちに「主様」と呼ばれ大切にされたところで、簡単に揺らぐようなものではない。
    「フフ、主様といられる時間は、本当に幸せです♪ この時間が、永遠に続けばいいのになあ……」
    「はいはい。全く……ルカスったら、冗談ばっかり言うんだから」
     上機嫌に微笑む担当執事を、私は半眼で睨みつけた。
     ルカスとアモンは、口説くようなセリフをよく言ってくる。恋愛経験の少ない私はそのたび顔を赤くしてドギマギしてしまうのだが、彼らの思惑どおりに翻弄されるのを、最近は悔しいと感じるようになっていた。
    1884

    住めば都

    DOODLEあくねこ。ナックとハンバーグの話。友情出演、ロノとテディ。
    執事たちの話題に上がるだけですが、美味しいもの大好き自称食いしん坊の女性主様がいます。
    後日、お礼を伝えられた主様は「私が食べたかっただけだから」と苦笑したそうです。

    お肉が苦手なナックに豆腐ハンバーグとか大根ステーキとか食べさせてあげたい気持ちで書きました。
    美味しいは正義 今日に夕食のメニューは、ハンバーグだ。
     食堂に向かう道すがらで会ったテディが、鼻歌混じりで嬉しそうに言うのを聞いて、ナックは落胆の気持ちを曖昧な笑顔で濁した。
     ナックは肉全般が苦手だ。メインが肉料理の日は食べられるものが少なく、空腹のまま夜を過ごすことも多い。
     だが、ハンバーグを心から楽しみにしているらしい同僚に、それを伝えることは憚られた。食事は日々の楽しみだ。テディには心置きなく、好物を味わってほしい。
     食事の時間は一応決まっているが、執事たちは全員揃って食事を取るわけではない。一階や地下の執事たちはそろって食べることが多いようだが。
     決められた時間内に厨房へ顔を出し、調理担当に、食事に来たことを告げる。そうして、温かい料理を配膳してもらうのだ。
    2130

    住めば都

    MEMO2023クリスマスの思い出を見た感想。
    とりあえずロノ、フェネス、アモン、ミヤジ、ユーハン、ハナマルの話をしている
    執事たちが抱く主様への思いについて現時点で、あるじさまへの感情が一番純粋なのはロノかなという気がした。
    クリスマスツリーの天辺の星に主様をたとえて、でもそこにいるのは自分だけじゃなくて、屋敷のみんなも一緒でさ。
    主様と執事のみんながいるデビルズパレスを愛してるんだなあということがとてもよく伝わってきて、メインストのあれこれを考えると心が痛い。ロノの感情と愛情が純粋でつらい(つらい)

    なぜロノの贈り物にこんなに純粋さを感じているかというと。
    手元に残るものを贈っている面々は、そもそも根底に「自分の贈ったものを大切に持っていてほしい」という思いがあるはずで、贈った時点である意味主様からの見返りを求めているのと同じだと思うんですよね。
    ただ、消え物にするか否かは思いの重さだけでなくて、執事たちの自分への自信のなさとか、相手に求めることへの拒否感とか、なにに重きを置くかの価値観とか、いろいろあると思うので、消え物を選んだ執事がみんなロノほど純粋な気持ちではいないんだろうなと思っている。
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    住めば都

    DONEあくねこ、ハウレス夢
    本編2章の直後くらいに、セラフィムの騙った主様の処刑を夢に見るハウレスの話。

    始めたばっかりですが、生きてるだけで褒めてくれるあくねこくんにズブズブです。
    本編は3章1部まで、イベストは全て読了、未所持カードばっかりだし執事たちのレベルもまだまだなので解釈が甘いところも多いかと思いますが、薄目でご覧いただければと思います( ˇωˇ )
    悪夢のしりぞけ方 ハウレスはエスポワールの街中に佇んで、呆然と雑踏を眺めていた。
     多くの商店が軒を列ねる大通りは、日頃から多くの人で賑わっている。幅広の通りはいつものように人でごった返していたが、いつもと違い、皆が同じほうを目指して歩いているのが奇妙だった。
     なにかあるのだろうか。興味を引かれたハウレスは、足を踏み出して雑踏の中へ入った。途端に、周囲の興奮したような囁き声に取り囲まれる。
    「火あぶりだってさ」
    「当然の方法だよ。なにしろ奴は人類の敵なんだから」
    「天使と通じてたなんて、とんでもない悪女だな」
    「許せないよ。死んで当然だ」
     虫の羽音のような、不快なさざめきが寄せては返す。悪意と恐怖、それから独善的な正義。それらを煮つめて凝らせたような感情が、人々の声や表情に塗りたくられていた。
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