Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    住めば都

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 40

    住めば都

    ☆quiet follow

    #aknk版深夜の創作一本勝負 よりお題をお借りしました
    「逃げてもいいんだよ」バスティン夢
    ※秋のホーム会話のネタバレを一部含みます
    向こうでいろいろあった主様が、バスティンと馬に乗っているうちに元気を取り戻す話

    主様といるときか、動物を相手しているときだけ、柔らかい空気を纏うバスティンに夢を見ています。彼は穏やかな表情の奥に激重感情を隠してるのがずるいですよね……

    #aknk夢
    #aknkプラス
    aknkPlus
    #あくねこ夢
    cats-eyeDream
    #バスティン
    bustin

    安息の地を探して 天高く、馬肥ゆる秋。
     近頃の馬たちは元気いっぱいで、よく食べ、よく走り、よく眠る。前後の話の流れは忘れたが、先日バスティンは主人にそんな話をした。
     彼女がいたく興味を引かれた様子だったので、ならばとバスティンは提案したのだ。次の休日に、馬たちの様子を見に来るか、と。
     それを聞いて、元より動物好きの主人は目を輝かせた。馬たちのストレスにならないのなら、触ったり乗ったりしてみたい。そう話す彼女はすでに楽しそうで、無表情が常のバスティンまで、つられて笑みを浮かべてしまうくらいだった。
     だというのに――これは一体、どうしたことだろう。
    「……主様」
    「あ……うん。ごめん、ちょっとボーっとしてた。せっかく時間を取ってくれてるのに、ごめんね。今度はちゃんと聞いてるから、もう一回説明してもらえる?」
     馬たちと触れ合うことをあんなに楽しみにしていたはずなのに、ブラシを手にした主人はずいぶんぼんやりとしている。表情にも声にも覇気がなく、まるで萎れた花のようだ。
     バスティンが、主人を心配していることが伝わったのだろう。馬たちも気遣うように彼女の様子を伺っている。やがて一頭が歩み出て、ブラシを手に所在なく立っていた彼女の頬に、鼻面を寄せた。
     すると僅かではあるが、主人の纏っていた空気が柔らかくなる。彼女を見守りながら、手際よく馬をブラッシングしていたバスティンは、アニマルセラピーという言葉を思い出した。
     単純に疲れているというだけではなく、憔悴した雰囲気の主人のことはもちろん気になる。本当は今すぐに、なにがあったのか聞いてしまいたい。バスティンにとって、主人はかけがえのないひとだから。
     けれどバスティンは、まずは馬たちに任せてみることにした。
     彼女の手で救われる以前、人との関わりを遠ざけていたバスティンを癒してくれたのは、他でもない動物たちだった。物言わぬ彼らだからこそ、心の凝った部分を解きほぐしてくれることもあるのだと、彼は身をもって知っていた。
    「主様。主様さえよければ、こいつに乗ってみないか」
     しばらくして。主人の表情がずいぶんと柔らかくなったのを見て、バスティンは声をかけた。
    「うん……乗ってみたい、けど、私にできるかな」
    「大丈夫だ。俺がちゃんと教える」
     不安そうに言う主人に、バスティンは力強く頷いてみせた。後押しを受けた彼女が頷くのを待って、バスティンは馬の背に鞍をかける。慣れた動作でひらりと跨ると、馬上から手を差し伸べた。
    「……教えるって、そういう?」
    「? 他になにがあるんだ?」
     主人は戸惑ったように目を瞬かせたが、バスティンには彼女がなにに躊躇いを感じているのかよくわからない。ハテナを飛ばしたまま再度手を伸ばすと、今度こそ主人の手が重ねられた。
     鐙に足をかけるよう指示をして、握った手をぐいっと引き上げる。小柄な体が、すとんとバスティンの前側に収まった。
    「……わああ」
     顔を上げた主人から、感嘆が漏れる。その気持ちは、バスティンにもよくわかった。視点が高くなった分、視界が開ける。いつもよりずっと遠くまで見渡すことができて、それだけで爽快な気分になる。
    「主様、怖くはないか?」
    「ううん、大丈夫。すごいね。高くて、いつもより遠くまで見える!」
    「ああ。このまま少し、進んでみよう」
    「うん!」
     手網を引いて、まずは常歩から。
     蹄が地を蹴る音が、ゆったりと響く。バスティンは主人のほうへ一瞥を投げた。最初、躊躇っていたわりに、怖がる様子はない。
    「少し、速度を上げる。しっかりと俺に身を預けていてくれ」
    「うん!」
     次いで、速歩。
     足音のテンポが上がって、揺れが大きくなる。主人はバスティンの指示を守って、背中をぴたりと彼の胸につけていた。
     触れた場所から温もりが溶け合う。今さら距離の近さに気づいたバスティンは、鼓動が速くなるのを感じた。
    「結構速いけど、まだまだ速く走れるんでしょう?」
    「あ、ああ。どうする、少し走らせてみるか?」
    「うん、お願い!」
     応じる主人の声は、すっかり普段の力強さを取り戻していた。バスティンは馬の腹を蹴る。
     駈歩は、びゅんびゅんと風を切って進む。このときの景色が後ろへ流れていくさまは、バスティンを風とともにどこまでも行けそうな心地にさせる。
     言葉どおり少しだけ馬を駆けさせると、バスティンは手綱を操って徐々にスピードを落とした。慣れないうちは、長時間乗っていると尻が痛くなるからだ。
    「すごかった! あんなに速くて、風を切ってビュンビュン進むんだね! なんだかこのまま、どこまででも行けちゃいそう!」
     主人はどうやら、バスティンと同じことを感じたようだった。興奮冷めやらぬ様子の彼女に、彼は思わず微笑む。
    「主様が望むなら、俺がどこまででも連れていく。主様を苦しめるもの全てを振り切って、この世の果てへでも」
    「……バスティン」
     驚いたようにバスティンを呼んだ主人は、やがて緩く首を横に振った。
     辛いのならば逃げてもいいのだと、伝えたいことは上手く言葉にならなかった。だが主人は、バスティンの言葉に込められた真意を、きちんと汲み取ってくれたらしい。
    「ありがとう。でも……私は、帰るよ。一緒に帰ろう?」
    「…………ああ、そうだな」
     主人の答えは、バスティンが望んでいたものではなかった。辛いのなら逃げ出してしまえばいいものを。しかし彼女は戻るという。
    「……主様。これだけは、どうか覚えていてほしい。もしも世界中の全てが敵になったとしても――俺は最後まで、あなたの味方だ」
     ならばせめて、と。祈るような気持ちでバスティンは言葉を紡いだ。彼女には、のびのびと健やかに生きていてほしい。そのためならば、バスティンはどんなことだってできる。
    「……ありがとう。バスティンのおかげで、もうちょっと頑張れそう」
    「……そうか。だが、頑張りすぎには注意だ」
    「うん、わかってる。気をつけるよ」
    「そうしてくれ」
     バスティンは馬首を返した。来た道を主人と二人、パカパカと鳴る蹄を聞きながら戻っていく。
     もしもまた、彼女が萎れてしまいそうになったら、ここへ来よう。日々の憂いも疲労も、馬上で切る風の中に捨ててしまえばいい。
     彼女の望むまま、どこへでも行こう。どこか遠く、逃げることを選びたがらないこのひとの心が、休まるところまで。
     今日の夕食はなにかな〜と、主人はずいぶん平和な話を始める。背後で決意を固めていたバスティンは、そんなことはおくびにも出さず、彼女の話に相づちを打つのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖🐎
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    住めば都

    DONEあくねこ、ルカス夢。
    いつもドキドキさせられて悔しい主様が、意趣返しのつもりで「ルカスは冗談ばっかり」と返したら、実は全部本気の本心だったと暴露される話。

    交渉係を務めて長い男が、自分の思いに振り回されて本音を隠せず、苦し紛れに冗談だよって見え見えの誤魔化し方しかできないのめちゃくちゃ萌えるなと思うなどしました
    いっそ全部、冗談にしてしまえたら 目の覚めるような美人ではない。愛嬌があるわけでも、聴衆を沸かせる話術を持つわけでもない。
     至って普通。どこにでもいそうな、地味で目立たないタイプ。――それが私だ。
     おおよそ三十年かけて築き上げた自己認識は、異世界で出会ったイケメン執事たちに「主様」と呼ばれ大切にされたところで、簡単に揺らぐようなものではない。
    「フフ、主様といられる時間は、本当に幸せです♪ この時間が、永遠に続けばいいのになあ……」
    「はいはい。全く……ルカスったら、冗談ばっかり言うんだから」
     上機嫌に微笑む担当執事を、私は半眼で睨みつけた。
     ルカスとアモンは、口説くようなセリフをよく言ってくる。恋愛経験の少ない私はそのたび顔を赤くしてドギマギしてしまうのだが、彼らの思惑どおりに翻弄されるのを、最近は悔しいと感じるようになっていた。
    1884

    住めば都

    DOODLEあくねこ。ナックとハンバーグの話。友情出演、ロノとテディ。
    執事たちの話題に上がるだけですが、美味しいもの大好き自称食いしん坊の女性主様がいます。
    後日、お礼を伝えられた主様は「私が食べたかっただけだから」と苦笑したそうです。

    お肉が苦手なナックに豆腐ハンバーグとか大根ステーキとか食べさせてあげたい気持ちで書きました。
    美味しいは正義 今日に夕食のメニューは、ハンバーグだ。
     食堂に向かう道すがらで会ったテディが、鼻歌混じりで嬉しそうに言うのを聞いて、ナックは落胆の気持ちを曖昧な笑顔で濁した。
     ナックは肉全般が苦手だ。メインが肉料理の日は食べられるものが少なく、空腹のまま夜を過ごすことも多い。
     だが、ハンバーグを心から楽しみにしているらしい同僚に、それを伝えることは憚られた。食事は日々の楽しみだ。テディには心置きなく、好物を味わってほしい。
     食事の時間は一応決まっているが、執事たちは全員揃って食事を取るわけではない。一階や地下の執事たちはそろって食べることが多いようだが。
     決められた時間内に厨房へ顔を出し、調理担当に、食事に来たことを告げる。そうして、温かい料理を配膳してもらうのだ。
    2130

    住めば都

    MEMO2023クリスマスの思い出を見た感想。
    とりあえずロノ、フェネス、アモン、ミヤジ、ユーハン、ハナマルの話をしている
    執事たちが抱く主様への思いについて現時点で、あるじさまへの感情が一番純粋なのはロノかなという気がした。
    クリスマスツリーの天辺の星に主様をたとえて、でもそこにいるのは自分だけじゃなくて、屋敷のみんなも一緒でさ。
    主様と執事のみんながいるデビルズパレスを愛してるんだなあということがとてもよく伝わってきて、メインストのあれこれを考えると心が痛い。ロノの感情と愛情が純粋でつらい(つらい)

    なぜロノの贈り物にこんなに純粋さを感じているかというと。
    手元に残るものを贈っている面々は、そもそも根底に「自分の贈ったものを大切に持っていてほしい」という思いがあるはずで、贈った時点である意味主様からの見返りを求めているのと同じだと思うんですよね。
    ただ、消え物にするか否かは思いの重さだけでなくて、執事たちの自分への自信のなさとか、相手に求めることへの拒否感とか、なにに重きを置くかの価値観とか、いろいろあると思うので、消え物を選んだ執事がみんなロノほど純粋な気持ちではいないんだろうなと思っている。
    1511

    related works

    住めば都

    DONE #aknk版深夜の創作一本勝負 よりお題をお借りしました
    「逃げてもいいんだよ」バスティン夢
    ※秋のホーム会話のネタバレを一部含みます
    向こうでいろいろあった主様が、バスティンと馬に乗っているうちに元気を取り戻す話

    主様といるときか、動物を相手しているときだけ、柔らかい空気を纏うバスティンに夢を見ています。彼は穏やかな表情の奥に激重感情を隠してるのがずるいですよね……
    安息の地を探して 天高く、馬肥ゆる秋。
     近頃の馬たちは元気いっぱいで、よく食べ、よく走り、よく眠る。前後の話の流れは忘れたが、先日バスティンは主人にそんな話をした。
     彼女がいたく興味を引かれた様子だったので、ならばとバスティンは提案したのだ。次の休日に、馬たちの様子を見に来るか、と。
     それを聞いて、元より動物好きの主人は目を輝かせた。馬たちのストレスにならないのなら、触ったり乗ったりしてみたい。そう話す彼女はすでに楽しそうで、無表情が常のバスティンまで、つられて笑みを浮かべてしまうくらいだった。
     だというのに――これは一体、どうしたことだろう。
    「……主様」
    「あ……うん。ごめん、ちょっとボーっとしてた。せっかく時間を取ってくれてるのに、ごめんね。今度はちゃんと聞いてるから、もう一回説明してもらえる?」
    2707

    住めば都

    DONE #aknk版深夜の創作一本勝負 よりお題をお借りしています。
    「おかえり」ユーハン夢。
    予定の時間を過ぎても帰ってこない主様を待ち続けるユーハンの話。

    翌朝、ほかの執事からもユーハンがずっと待ってたと話を聞いて、主様は某ワンちゃんを思い浮かべたとかいないとか。
    待てと言うならいつまでも 主人の帰宅時刻五分前になったのを確認し、ユーハンは出迎えのため本邸の玄関へ向かった。
     今朝、主人は「帰宅はいつもどおりだと思う」と告げ出掛けていった。彼女が「いつもどおり」というときは、十分から二十分くらいの誤差はあるものの、だいたいこのくらいの時間に帰ってくる。
     ユーハンは姿勢よく立ったまま、主人の帰宅を待った。だが、十分経っても、二十分経っても、彼女が戻ってくる気配はない。尤も、不思議な指環の力で二つの世界を行き来する彼女の帰還は、予兆も気配もなく、突然であるのが常なのだけれど。
     そのうち帰ってくるだろうと思っていたユーハンだったが、予定の時間から一時間が経って、さすがに不安を感じた。
     事件や事故に巻き込まれたのではないか。突然の病気や怪我で、身動きが取れなくなっているのかもしれない。彼女を狙う不届きな輩に襲われて、恐ろしい目に遭っていたとしたら。
    3615

    住めば都

    DONE #aknk版深夜の創作一本勝負 よりお題をお借りしました
    使用お題「スイーツ」。メインはロノと主様、友情出演でハナマル、ユーハンという感じ。夢要素は香る程度。
    今年のパレスはさつまいもがやたらと豊作。処理に困っているロノに、主様がアドバイスをしたようです。
    パレスの日常の一部を切り取るようなつもりで書きました。
    秋の味覚の楽しみ方 本日のおやつであるスイートポテトを前に、デビルズパレスの女主人は目を瞬かせた。
     昨日はさつまいものマフィンで、一昨日は食後のデザートがさつまいものモンブランだった。その前の日は、確か夕食にさつまいものサラダが出たし、さらにその前はポタージュだったか。さすがに三日以上前ともなると記憶が怪しい。
     彼女はさつまいもが大好きなので、連日でも全く構わない。だがいくら旬の食材とはいえ、こうも同じ食材を使ったメニューが続くと、台所事情が気になってしまう。
    「最近、さつまいもの料理やスイーツが続くね。旬だから?」
    「……やっぱ、気づきますよね?」
    「まあ、これだけ続けばさすがにね」
    「だよなあ……」
     訊ねた女に、厨房の主であるロノは渋い顔になった。どうやらさつまいもメニューが続いていることを気にしていたらしい。
    2604

    recommended works