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    住めば都

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    住めば都

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    あくねこ、ハウレス夢
    本編2章の直後くらいに、セラフィムの騙った主様の処刑を夢に見るハウレスの話。

    始めたばっかりですが、生きてるだけで褒めてくれるあくねこくんにズブズブです。
    本編は3章1部まで、イベストは全て読了、未所持カードばっかりだし執事たちのレベルもまだまだなので解釈が甘いところも多いかと思いますが、薄目でご覧いただければと思います( ˇωˇ )

    #あくねこ夢
    cats-eyeDream
    #aknkプラス
    aknkPlus
    #aknk夢
    #ハウレス
    howles.

    悪夢のしりぞけ方 ハウレスはエスポワールの街中に佇んで、呆然と雑踏を眺めていた。
     多くの商店が軒を列ねる大通りは、日頃から多くの人で賑わっている。幅広の通りはいつものように人でごった返していたが、いつもと違い、皆が同じほうを目指して歩いているのが奇妙だった。
     なにかあるのだろうか。興味を引かれたハウレスは、足を踏み出して雑踏の中へ入った。途端に、周囲の興奮したような囁き声に取り囲まれる。
    「火あぶりだってさ」
    「当然の方法だよ。なにしろ奴は人類の敵なんだから」
    「天使と通じてたなんて、とんでもない悪女だな」
    「許せないよ。死んで当然だ」
     虫の羽音のような、不快なさざめきが寄せては返す。悪意と恐怖、それから独善的な正義。それらを煮つめて凝らせたような感情が、人々の声や表情に塗りたくられていた。
     嫌な予感がする。
     ハウレスは氷の手で心臓を鷲掴みにされたような心地を覚えた。自然、歩みが早まる。聞こえるのは、もはや自分の鼓動ばかりだ。
     早く、もっと早く。気は急くのに、人垣を押しのけて走り出すこともできず、もどかしさが募る。急がなければ、間に合わなくなってしまうのに!
     天使と通じていた人類の敵が、火刑に処される。
     まさか、そんなはずはない。そう信じたいのに、たどり着いた広場の中央で磔にされていたのは、ハウレスにとっていっとう特別で、大切な人だった。
    「……あるじさま」
     これは、夢だ。ハウレスの大切な主人が処刑されたというのは、知能天使がハウレスの心を折るために吐いた、真っ赤な嘘だったはず。
     頭の奥のほうで、冷静な自分が言う。けれどその声は、人としての尊厳を踏みにじられ、謂れなき罪のために殺されそうになっている主人の姿を前に、あっけなくかき消されてしまった。ハウレスの思考はもはや、「早くあの方を助けて差し上げなければ」という焦りで塗りつぶされていた。
    「主様!」
     ハウレスは、一目散に主人の元へ駆け寄ろうとした。それを阻むように、処刑を見物にきた野次馬が立ち塞がる。彼は必死に、彼らの間をかいくぐろうとした。けれど群衆の壁は徐々に分厚さを増していき、主人の姿はどんどんと遠ざかっていく。
    「主様!」
     そして、ついに――ほとんど悲鳴のように主人を呼んだハウレスの声を遮って、刑の執行が宣言された。火の手が上がり、苦悶の絶叫が広場に響く。
    「熱い……! 痛い……! 助けて……助けて……!! 助けて、ハウレス……!!」
     悲痛な声で自分の名が呼ばれるのを、ハウレスは確かに聞いた。


     勢いよく体を跳ね起こして、ハウレスは荒い息をついた。
     寝汗と涙で、頬が冷たい。うるさい鼓動ばかりを拾う聴覚が、やがて同室の執事たちの静かな寝息を捉え、それでようやく、ハウレスは夢を見ていたのだと我に返った。
     なんという、酷い悪夢だろう。ハウレスは濡れた顔を両手で覆った。遥か昔に亡くした妹の夢を見たときと同じか、あるいはそれ以上に心がぐちゃぐちゃだ。このままでは、今夜は僅かにまどろむことすらできそうにない。
    (……主様)
     深く、肺が空になるまで息を吐き出す。それからおざなりに顔を拭うと、ハウレス静かにベッドを降りた。
     主人が無事であることは理解している。ルカスの尽力によって、主人は投獄さえされずに済んだと聞いた。ハウレスへかけられた疑念も晴れた今、彼女はなにを憂うこともなく、彼女の部屋のベッドで、穏やかに眠っていることだろう。
     起こすつもりはない。ただ己の目で、彼女の無事を確かめたいだけ。一目でいい。彼女が優しい眠りの中にいるとわかれば、言葉を交わさずとも気持ちを落ち着けられるはずだから。
     部屋を抜け出したハウレスは、足音も立てずに廊下を進んだ。主人の部屋のドアを細く開けて、体を滑り込ませる。
     執事としては、あまりにも礼を失した振舞いだ。尤も、主人はハウレスの行動を知ったところで、怒ることはしないだろうけれど。むしろ、起こしてくれればよかったのにと言って、悪夢に傷つけられたハウレスの心を心配してくれるに違いない。そういう人なのだ。
     執事の身でありながら、浅ましくも彼女の優しさに縋ろうとしている。ハウレスの胸に、そんな自分に対する苦い失望が広がった。支えたい、頼ってほしいと願う反面、本当はハウレスこそが主人の存在を頼りにして、支えられている。
     ゆっくりとベッドに近づきながら、途中でハウレスは眉間に皺を寄せた。部屋の中に、人の気配がないのだ。寝息も聞こえない。
    「……主様?」
     小さく呼びかけて、ハウレスはベッドへ大股で近寄る。果たして、そこはもぬけの殻だった。温もりを探すように手を這わせたシーツはすでに冷たく、彼女がベッドを出てからしばらく経っていることを知らせた。
     いつもの場所に指輪はないので、向こうの世界に戻ったわけではないはずだ。靴での生活に慣れない主人のためにフルーレが作った室内履きもないので、屋敷内にはいるのだろう。
     しかし、在るはずの場所に探し人がいないという事実は、ただでさえ悪夢で傷ついていたハウレスの心を、さらに抉った。大切な人を失う恐怖が体中を這い回り、思わず叫び出したくなる。
     いてもたってもいられず、ハウレスは主人の部屋を出た。
     どこに行ってしまったのだろう。僅かな痕跡でもいい、なにか手がかりはないかと辺りを見回して、ハウレスは図書室の扉が僅かに開いていることに気づいた。
     ふらふらと吸い寄せられるように、図書室の扉をくぐる。僅かに夜風が頬を撫でた。バルコニーへ続く窓へ向かったハウレスは、そこでようやく求めていた人の後ろ姿を見つけた。
    「……――様」
    「え……ハウレス?」
     めったに呼ばない名前で呼びかければ、下ろしたままの黒髪を揺らして、主人が振り返った。夜闇の中にも関わらず、彼女の驚いた顔がはっきりと見える。今夜はずいぶん月が明るいようだ。
     もっと、あの方の近くに。ハウレスが心のまま傍に寄ると、主人はなぜか、ぎょっとしたように目を見開いた。
    「え、なに? どうしたの、ハウレス? なんか死にそうな顔してない? 顔色も、真っ青を通り越して真っ白だし……」
     小声で、心配そうにまくし立てる主人を見て、ハウレスは泣き出したくなった。唇を噛んで、その衝動をなんとかやり過ごす。
     大切な人が、生きて傍にいてくれる。名前を呼んでくれる。自分を心配してくれる。それを実感して、ハウレス乱れた心の中を安堵が駆け巡った。
    「ひどい悪夢を、見て……ですが、主様のお顔を見て、少し、落ち着きました……」
    「そっか……あの、悪夢って、妹さんの……?」
    「……いいえ」
     気遣わしげに問われて、ハウレスは言葉を詰まらせた。大切な人に嘘をつくのが嫌で、なんとか否定だけは返したものの、夢の内容を告げることはできなかった。
     声に出して、もしもあれが現実になってしまったら。虚構のものではあったが、妹だけでなく主人まで亡くしてしまったと思った瞬間の絶望は、まだ生々しくハウレスの脳裏に、胸裡に刻まれている。
    「……違ってたら、あれなんだけどさ。……もしかして、私が死ぬ夢、とか?」
    「!」
     核心をついた主人の問いに、ハウレスは肩を揺らす。隠しきれない動揺に気づいて、主人は苦笑を浮かべた。
    「……そっか」
    「あの……俺……もうしわけ、ありません」
     とっさに謝ってしまったものの、なにに対する謝罪なのかは、ハウレス自身にもわからなかった。それ以上、返す言葉も見当たらなくて、顔を俯かせる。
     鏡を見なくとも、情けない顔をしている自覚があった。取り繕うだけの余裕もない。デビルズパレスの悪魔執事としてではなく、ただのハウレス・クリフォードとして主人の前に立つことが畏れ多くて、ハウレスは顔を隠すように前髪を握りしめた。
    「ハウレス」
     主人は静かな声で、ハウレスを呼んだ。草花に潤いを与える朝露のように、それは罅の入った彼の心に温かく染みていく。
     ゆるゆると顔を上げ、腕を下ろしたハウレスを、主人は穏やかな顔で見上げていた。と思った次の瞬間、彼女は無防備な男の胸元に飛び込んできた。艶やかな黒髪に覆われた後頭部しか見えなくなって、代わりとばかりに、触れ合った場所から柔らかな温もりが伝わってくる。
    「あ、主様……なに、を……」
     主人と執事ではありえない至近距離に、ハウレスは慌てふためいて腕をさ迷わせた。一方で主人のほうは、離さないぞとばかりに細い腕をハウレスの背に巻つけている。
    「これが、一番手っ取り早いかなと思って。私、生きてるよ。温かいでしょう? ちゃんと触れるでしょう?」
     言われて、ハウレスは抵抗をやめた。置き場のわからなかった腕で、躊躇いがちに主人の体を抱き寄せる。すると彼女は、ハウレスの背を優しくさすってくれた。
     自分のものではない体温を噛みしめるように、ハウレスは目を閉じる。目尻から涙が一粒、溢れて頬を転がり落ちていった。
    「私は、大丈夫だよ。だって、みんなが守ってくれるもの。だから、大丈夫。私は……たぶんいつかは、あなたたちを置いていくことになるだろうけれど。でも、それはまだ、しばらく先のことのはずだから」
     大丈夫だと繰り返す主人の声には、揺らがぬ確信が感じられた。ふと、夢で聞いた悲痛な断末魔が耳に蘇って、ハウレスは「この人はきっと、あんなふうに助けを呼ぶことはしないだろうな」と独り言ちた。
     まだつき合いは浅いけれど、それでも、それくらいはわかる。ハウレスの主人は、悪魔執事たちがなにをおいても主人たる彼女の命と安全を優先すると、信じてくれている。ハウレスたちが信じてほしいと差し出した願いを、彼女は受けとって、そして応えてくれたのだ。
     だから、きっと。絶対絶命の場面でもこの人は、ハウレスたちが必ず助けに来ると愚直に信じて、待っていてくれるだろう。そして――ハウレスがその信頼を裏切ることは、絶対にない。
     ぐちゃぐちゃに混乱していた心が凪いでいく。瞑想中のように、息をゆっくり吸ってゆっくり吐けば、主人の使っているヘアオイルの甘い香りが、ハウレスの胸を満たした。
     それからしばらく、ハウレスは主人の優しさに甘えていた。やがて腕を解いて、大切な人の名を丁寧に紡ぐ。呼ばれた主人が一歩下がって距離を開けると、与えられた温もりをぬぐい去るように夜風が抜けた。その冷たさは、ハウレスに執事として正しく在れと命じるようだった。
    「主様、取り乱して申し訳ありませんでした」
    「気にしないで。……少しだけでも、眠れそう?」
    「はい。主様のおかげです」
    「それならよかった」
     朗らかに笑う主人に、ハウレスは穏やかな笑みを返した。
     今夜のことを忘れずにいようと、ハウレスは密かに決意した。抱きしめた体の温もりや柔らかさは、忘れようとしたところで、忘れられるものでもないのだけれど。それはそれとして。
     信頼されていると知っている。ハウレスも、主人を信頼している。だから、きっと――理不尽に奪われるだけの夢は、もう見ない。
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    💖😭😭👏💴💴💴💖😭😭😭💖💖💖👏👏👏😭😭😭😭☺☺💞💞👏💞💞
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    住めば都

    DONEあくねこ、ルカス夢。
    いつもドキドキさせられて悔しい主様が、意趣返しのつもりで「ルカスは冗談ばっかり」と返したら、実は全部本気の本心だったと暴露される話。

    交渉係を務めて長い男が、自分の思いに振り回されて本音を隠せず、苦し紛れに冗談だよって見え見えの誤魔化し方しかできないのめちゃくちゃ萌えるなと思うなどしました
    いっそ全部、冗談にしてしまえたら 目の覚めるような美人ではない。愛嬌があるわけでも、聴衆を沸かせる話術を持つわけでもない。
     至って普通。どこにでもいそうな、地味で目立たないタイプ。――それが私だ。
     おおよそ三十年かけて築き上げた自己認識は、異世界で出会ったイケメン執事たちに「主様」と呼ばれ大切にされたところで、簡単に揺らぐようなものではない。
    「フフ、主様といられる時間は、本当に幸せです♪ この時間が、永遠に続けばいいのになあ……」
    「はいはい。全く……ルカスったら、冗談ばっかり言うんだから」
     上機嫌に微笑む担当執事を、私は半眼で睨みつけた。
     ルカスとアモンは、口説くようなセリフをよく言ってくる。恋愛経験の少ない私はそのたび顔を赤くしてドギマギしてしまうのだが、彼らの思惑どおりに翻弄されるのを、最近は悔しいと感じるようになっていた。
    1884

    住めば都

    DOODLEあくねこ。ナックとハンバーグの話。友情出演、ロノとテディ。
    執事たちの話題に上がるだけですが、美味しいもの大好き自称食いしん坊の女性主様がいます。
    後日、お礼を伝えられた主様は「私が食べたかっただけだから」と苦笑したそうです。

    お肉が苦手なナックに豆腐ハンバーグとか大根ステーキとか食べさせてあげたい気持ちで書きました。
    美味しいは正義 今日に夕食のメニューは、ハンバーグだ。
     食堂に向かう道すがらで会ったテディが、鼻歌混じりで嬉しそうに言うのを聞いて、ナックは落胆の気持ちを曖昧な笑顔で濁した。
     ナックは肉全般が苦手だ。メインが肉料理の日は食べられるものが少なく、空腹のまま夜を過ごすことも多い。
     だが、ハンバーグを心から楽しみにしているらしい同僚に、それを伝えることは憚られた。食事は日々の楽しみだ。テディには心置きなく、好物を味わってほしい。
     食事の時間は一応決まっているが、執事たちは全員揃って食事を取るわけではない。一階や地下の執事たちはそろって食べることが多いようだが。
     決められた時間内に厨房へ顔を出し、調理担当に、食事に来たことを告げる。そうして、温かい料理を配膳してもらうのだ。
    2130

    住めば都

    MEMO2023クリスマスの思い出を見た感想。
    とりあえずロノ、フェネス、アモン、ミヤジ、ユーハン、ハナマルの話をしている
    執事たちが抱く主様への思いについて現時点で、あるじさまへの感情が一番純粋なのはロノかなという気がした。
    クリスマスツリーの天辺の星に主様をたとえて、でもそこにいるのは自分だけじゃなくて、屋敷のみんなも一緒でさ。
    主様と執事のみんながいるデビルズパレスを愛してるんだなあということがとてもよく伝わってきて、メインストのあれこれを考えると心が痛い。ロノの感情と愛情が純粋でつらい(つらい)

    なぜロノの贈り物にこんなに純粋さを感じているかというと。
    手元に残るものを贈っている面々は、そもそも根底に「自分の贈ったものを大切に持っていてほしい」という思いがあるはずで、贈った時点である意味主様からの見返りを求めているのと同じだと思うんですよね。
    ただ、消え物にするか否かは思いの重さだけでなくて、執事たちの自分への自信のなさとか、相手に求めることへの拒否感とか、なにに重きを置くかの価値観とか、いろいろあると思うので、消え物を選んだ執事がみんなロノほど純粋な気持ちではいないんだろうなと思っている。
    1511

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    住めば都

    DONE #aknk版深夜の創作一本勝負 よりお題をお借りしています。
    「おかえり」ユーハン夢。
    予定の時間を過ぎても帰ってこない主様を待ち続けるユーハンの話。

    翌朝、ほかの執事からもユーハンがずっと待ってたと話を聞いて、主様は某ワンちゃんを思い浮かべたとかいないとか。
    待てと言うならいつまでも 主人の帰宅時刻五分前になったのを確認し、ユーハンは出迎えのため本邸の玄関へ向かった。
     今朝、主人は「帰宅はいつもどおりだと思う」と告げ出掛けていった。彼女が「いつもどおり」というときは、十分から二十分くらいの誤差はあるものの、だいたいこのくらいの時間に帰ってくる。
     ユーハンは姿勢よく立ったまま、主人の帰宅を待った。だが、十分経っても、二十分経っても、彼女が戻ってくる気配はない。尤も、不思議な指環の力で二つの世界を行き来する彼女の帰還は、予兆も気配もなく、突然であるのが常なのだけれど。
     そのうち帰ってくるだろうと思っていたユーハンだったが、予定の時間から一時間が経って、さすがに不安を感じた。
     事件や事故に巻き込まれたのではないか。突然の病気や怪我で、身動きが取れなくなっているのかもしれない。彼女を狙う不届きな輩に襲われて、恐ろしい目に遭っていたとしたら。
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    住めば都

    DONEあくねこ、ハウレス夢
    本編2章の直後くらいに、セラフィムの騙った主様の処刑を夢に見るハウレスの話。

    始めたばっかりですが、生きてるだけで褒めてくれるあくねこくんにズブズブです。
    本編は3章1部まで、イベストは全て読了、未所持カードばっかりだし執事たちのレベルもまだまだなので解釈が甘いところも多いかと思いますが、薄目でご覧いただければと思います( ˇωˇ )
    悪夢のしりぞけ方 ハウレスはエスポワールの街中に佇んで、呆然と雑踏を眺めていた。
     多くの商店が軒を列ねる大通りは、日頃から多くの人で賑わっている。幅広の通りはいつものように人でごった返していたが、いつもと違い、皆が同じほうを目指して歩いているのが奇妙だった。
     なにかあるのだろうか。興味を引かれたハウレスは、足を踏み出して雑踏の中へ入った。途端に、周囲の興奮したような囁き声に取り囲まれる。
    「火あぶりだってさ」
    「当然の方法だよ。なにしろ奴は人類の敵なんだから」
    「天使と通じてたなんて、とんでもない悪女だな」
    「許せないよ。死んで当然だ」
     虫の羽音のような、不快なさざめきが寄せては返す。悪意と恐怖、それから独善的な正義。それらを煮つめて凝らせたような感情が、人々の声や表情に塗りたくられていた。
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    住めば都

    DONE #aknk版深夜の創作一本勝負 よりお題をお借りしました
    「逃げてもいいんだよ」バスティン夢
    ※秋のホーム会話のネタバレを一部含みます
    向こうでいろいろあった主様が、バスティンと馬に乗っているうちに元気を取り戻す話

    主様といるときか、動物を相手しているときだけ、柔らかい空気を纏うバスティンに夢を見ています。彼は穏やかな表情の奥に激重感情を隠してるのがずるいですよね……
    安息の地を探して 天高く、馬肥ゆる秋。
     近頃の馬たちは元気いっぱいで、よく食べ、よく走り、よく眠る。前後の話の流れは忘れたが、先日バスティンは主人にそんな話をした。
     彼女がいたく興味を引かれた様子だったので、ならばとバスティンは提案したのだ。次の休日に、馬たちの様子を見に来るか、と。
     それを聞いて、元より動物好きの主人は目を輝かせた。馬たちのストレスにならないのなら、触ったり乗ったりしてみたい。そう話す彼女はすでに楽しそうで、無表情が常のバスティンまで、つられて笑みを浮かべてしまうくらいだった。
     だというのに――これは一体、どうしたことだろう。
    「……主様」
    「あ……うん。ごめん、ちょっとボーっとしてた。せっかく時間を取ってくれてるのに、ごめんね。今度はちゃんと聞いてるから、もう一回説明してもらえる?」
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    💮💍(💮🌸)夢。
    💮の力の代償を捏造しています。
    続きは夜プラ予定。
    #aknkプラス
    ハナマルの力の代償に応えたい「ハナマル…大丈夫かな」
    宿屋の窓越しにすっかり暗くなった外を眺めていた私は思わず彼を思い浮かべそう呟いていた。


    ***

    時刻は3時間程前に遡る。

    ある依頼の為に私はハナマルと二人で街に出ていた。依頼の内容を卒なくこなしたハナマルのリクエストにより街で一杯飲んでから屋敷に戻ろうかと話していた時だった。運悪く天使の襲撃に遭ってしまったのだ。相手は知能天使ではなかったものの、数が6体と多かった。いち早く力の解放を行い、ハナマルは見事天使を倒したのだったが…。

    「…悪い、主様。ちょっと疲れちまった。馬車まで歩けそうになくて…何処か泊まれる宿屋ってありそうかい?」
    天使を倒しホッとしたのも束の間、そう言ってハナマルはよろよろした足取りで路地裏に入ると、壁にもたれ掛かりズルズルと座り込んでしまった。大丈夫?と声をかける私の声が聞こえるのか聞こえていないのか、ハナマルは浅い呼吸をするばかりだ。これはマズイと、私は近くにいた通行人に声を掛け急いで宿屋を探す。幸いにも空きのある宿屋を見つけたため、途中で薬等を買込み宿屋へ向かった。
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