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    ことざき

    @KotozakiKaname

    GW:TのK暁に今は夢中。
    Xと支部に生息しています。

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    ことざき

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    とんちきなK暁。
    診断メーカー「140文字SSのお題(ID:587150)」様の、「貴方はKKと暁人で『グラスにうつった真実』をお題にして140文字SSを書いてください。」をお借りしました。

    #K暁

    グラスにうつった真実 暁人のオフに、KKの泊りがけの仕事が重なった。映画館デートの予定はもちろん中止。これから数日、暁人は、二人が暮らしているマンションに独りきりとなる。
     これはまたとないチャンスだ。内心でガッツポーズした暁人に勘づいたのか何なのか。「めんどくせえ、オマエも一緒に来て手伝え」といつも以上にうるさくゴネるKKをいってらっしゃいのキスで黙らせ、暁人は笑顔で彼をマンションのエントランスから叩きだした。そして、その足でスーパーに向かい、食糧品とお菓子を大量に買いこんだ。ついでに、もう少しで無くなりそうな洗濯洗剤と、トイレットペーパーの予備も買い足しておく。
     これで籠城の準備は整った。

     この先二日間、暁人は髭剃りをサボる。サボるったらサボるのだ。

     ……と、意気込んだはいいものの、なにしろ暁人は生真面目なので、怠けようと決意して怠けた経験は数えるほどしかない。慣れないことをしたせいか、妙な後ろめたさが腹の底でグルグルして落ち着かない。
     ほんの少しの我慢だと、暁人は山盛りのお菓子を腹に詰めこみながら自分に言い聞かせた。いつも以上に掃除がはかどり、一日目が終わる頃には、キッチンは床にシンクにコンロ、換気扇の羽根に至るまで、ピカピカに磨きあげられていた。
     今ここに、『怠ける』という言葉の定義を暁人につっこむ者はいない。暁人のパートナーであるKKは、北陸の山奥で怪異調査の真っ最中だった。

     そして迎えた二日目の夕方。
     上下ともに真っ黒な服に着替えた暁人は、満を持して洗面台の前に立った。
     今この時のため、顔を洗うときも歯磨きするときも、できる限り鏡を見ないよう頑張ってきたのだ。ワクワクしながら鏡面をのぞきこんだ。
    「……違う」
     思わず暁人はつぶやいていた。
     おかしい。どうもしっくりこない。これでは、最低限の身だしなみを整えることすら放棄した、ただのだらしない男だ。「あの日は剃ってるほどの余裕がなかったんだよ」と言っていたから真似したのに、これはいったい、どういうことだろうか。
     試しに目つきを鋭くしてみる。違う。唇の端を片方だけ持ちあげてみる。全然違う。
     彼の髭も表情も、まったく全然こんなんじゃない。彼はもっとこう、月のない夜を煮詰めたような深い眼差しで、皮肉げに吊りあがった口角は絶妙な感じに翳があって。……そうだ。彼の口元を彩る無精髭には、もっと重たい存在感、ずっしりとした貫禄があるのだ。
     KKがいないときに実行してよかったと、暁人はしょんぼり肩を落としながら考えた。こんなみっともない姿、彼には絶対見せられない。彼が仕事を終えて帰ってくる前に、はやく剃ってしまわなければ。

     のろのろとシェーバーに手を伸ばす暁人は、洗面台の左奥、歯ブラシを立てかけているグラスの側面に、ぽかんと目を見開く髭面の男が映りこんでいることに、まったく気づいていなかった。
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    ことざき

    DONEこぼれ落ちてゆくもの。K暁。薄暗い。

    診断メーカー【あなたに書いて欲しい物語(ID:801664)】さんの【「ぱちりと目が合った」で始まり、「君は否定も肯定もしなかった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば3ツイート(420字程度)でお願いします。】から。
    忘れじの行く末に ぱちりと目が合った。それで分かった。これは夢なのだと。
     僕が右手を伸ばすと、彼もまた右手を差しだしてきた。重ねた指先は突きぬけなかった。筋張ってゴツゴツとした手の甲、かさついた皮膚の感触。やや低い、じんわりとした体温。握りこめば、同じだけの力で握りかえされた。
     彼がいる。今ここに、僕の目の前に。確かな身体を持って。夢でもかまわない。だって、彼がここにいるのだ。
     心臓を鋭い痛みが貫いた。喉が締めつけられ、押し戻された空気で顔中が熱くなった。気づいた時には、目の前のすべてが歪んでいた。
     波立つ水面のように揺らめく視界では、彼の姿を脳裏に焼きつけられない。しゃくりあげながら顔を拭おうとした僕より早く、彼の手の平が頬をおおった。そのまま親指の腹で目元をこすられる。とても優しい仕草なのに、硬いささくれが皮膚に刺さって痛い。思わず息を呑むと、覚えのある苦い香りが鼻先を掠めた。
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