うみとそらとらんでぶぅ 奏汰は視線を遥か上空に向けた。
そこには海をそのまま天井に写したような、どこまでも青い空が広がっている。雲ひとつない綺麗な青の中を、一機の飛行機が駆けていく。それは所詮『戦闘機』というものであったが、奏汰には細かい種類の違いはわからない。ただ、あの燃えているような赤い機体には誰が乗っているのかは知っていた。
ついに。待ちに待っていた人が、帰ってきたのである。
はやる気持ちを抑えながら、奏汰は海の中に一度戻り急ぎ泳いで陸地のほうへと向かった。奏汰には空を飛ぶことはできないが、海の中ならば人間よりは多少はやく移動することができる。領土の半分近くを海岸線と接するユメノサキだが、人が足を踏み入れることのできる海岸は三割程度に留まり、残りは切り立った崖になっていた。
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