運命論 何の用もない休日の午後、自室でのんびりと本のページをめくっていた。そこにパタパタと機嫌の良さそうな足音が近寄ってくるのを感じ、少し身構える。
「見てくれ明智!」
ノックもなくドアを開け放した彼に、読んでいた本を置いて渋々振り返った。ほとんど真顔のくせに、やけに楽しそうにしている。見てくれと言う割には変わった様子のない彼に、眉根を寄せた。
「……何」
「今日、運命的な出会いを果たしたんだ。俺とこたつ」
「は?」
「さらにおでんとか熱燗が作れるメーカーまで当たったから、これはもう運命に違いないと思って買ってきた。ほら、リビングいくぞ」
「え、」
ぎゅっと手を握られて引っ張られる。勢いだけで押し切ろうとするそれに一回抵抗しようか迷うが、まったく譲る気のない力の強さに無駄な労力を使わないことにする。ここで抵抗すればお互い意地になって体力が尽きるまで競ってしまうだろうし。
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