幸せな庭机の上に広げっぱなしのお菓子をゼイユの弟が美味しそうに食べる。食べ放題だから部室に来たら遠慮せずに食えよ、なんて声を掛けると、キラキラとしていた瞳を更に輝かせる。しかしすぐその瞳を少しだけ惑わせて、けれども喜びを秘めたまま、でもカキツバタ先輩のものなんじゃ、と心配そうに言う彼に、良いってことよ、と笑いかける。オイラどんどん新しいの買っちまうからねぃ、食べてもらわないと消費が追いつかないのよ、などと適当なことを言って、箱からもう一掴み押し付ける。ありがとうございます、と言う彼の、その笑顔。
後輩の面倒を見るのは元々好きだった。右も左もわからない後輩に色々親切に案内して、案内しながら自分のテリトリーに引き込んで、そのまま楽しく一緒に過ごすのだ。親切に対して邪険を返す人間は少ないし、ましてや、それが実質チャンピオンである学園最強の四天王相手となれば、それなりの敬意と配慮も勝手に付いてきて、楽しくないことなんて滅多に起こらなかった。もちろん、細々とした、主に自分のウッカリや怠惰に起因した面倒ごとはあったにはあったが、どちらかというと面倒を被っていたのは後輩達の方だったし、困っている後輩達は申し訳なくも、そこもかわいいものだった。
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