ドクターTETSU校則違反ミニスカセーラー部「毎度毎度、どっから用立ててくるんだこんなもん」
しかも還暦過ぎたジジイに着せるためときた。譲介は時々、その知性と努力をおかしなベクトルに発揮することがある。今回はセーラー服だ。
丈を詰めて腹が見えそうなセーラー服に、これまた短いプリーツスカート。どんな自由な校風の学校でも生徒指導の教員をキレさせること請け合いだ。素行の悪そうな服装に合わせたわけではないが、オレはお行儀悪く椅子を横に向けて座り、背もたれに片肘を載せた。譲介はオレに合わせるように、向かい合って床に座った。
「お前ェ、セーラー服に憧れも思い出も無ぇだろ」
こういうプレイはこういうものに何かしら良い印象を持っているやつがやるものだ。譲介が泉平高校に転入する前に通っていた学校の女子制服は、セーラーだったかブレザーだったか。もう忘れてしまった。当時のオレたちにとっては通過点にすぎなかったのだ。
「強いて言えばセーラー服が性的なアイコンになっていることへの関心があります」
「あン?」
「あなたに着せたらセーラー服のエロさが理解出来るのではないか、ということです」
「苦手な食い物にカレーかけたみたいなこと言ってやがる……で、実際どうよ?」
「うーん」
譲介は考え込んでいる。コイツたっての願いと言うから、オレも無理してこんな恥ずかしい格好をしているというのに。少し腹が立ってきたので、片脚を上げ、譲介の胸をつま先で小突く。
「見えそうですよ」
「スカート短いからな」
譲介はオレのつま先を柔らかく掴み、胸元から降ろした。
譲介はオレの膝のあいだに這ってきて、片方の腿に顎を載せた。スカートの高さから上目遣いで見上げてくる。
「なんだよ」
譲介の柔らかい髪を撫でてやると、譲介は目を細めた。
「猫じゃねえんだから……」
と口ではたしなめつつ、オレはオレで譲介の髪の手触りと満足げな表情に魅せられてしまい、撫でる手を止められない。
「いいですね、これ」
譲介がゆっくりと、息を吐きながら言う。
「掴んだか? エロい何か」
「エロは掴んでませんが、あなたの膝と手がたいへんに良いということはわかりました」
「そりゃあ多分、何も掴んでねえなあ」
撫でられ続ける譲介は完全に大人しくなってしまった。人間の膝で眠る猫のようだ。
「セーラー服関係ないですもんね……」
譲介の声は次第に眠気を帯びてきて、オレの膝を枕に寝息を立て始めた。
「おい、寝るな。首を痛めるぞ」
「……」
応答はない。どうやら疲れていたようだ。
疲労の重なったテンションのせいで、セーラー服のエロ探求なんてバカみたいなことを思いついたのかもしれない。
譲介のあては完全に外れたようだが、こういうのも悪くない。オレはバカみたいな服装のまま、譲助に片膝を提供している。ひとつ問題があるとしたら、枕にされている方の脚が痺れ始めたことだけだった。