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    @oz3011347532190

    あらむらとみずいこが好き

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    お弁当一緒に食べる水と村

    「お、男子高校生してんなぁ」
    「なんですソレ」
    「お疲れ様です」

    ラウンジの一角で弁当箱を広げる二人の後輩に、太刀川が片腕を掲げて歩み寄る。後輩の側も軽く会釈して迎え入れた。

    「お前らいつも弁当?」
    「オレはだいたい。今が作ってくれることも多いので」
    「凄いな。ていうか贅沢だな鈴鳴」
    「オレもそう思います」
    「水上は?」
    「俺は普段は買うこと多いですね。これカゲの弁当なんです」
    「ああ…影浦隊と荒船隊が呼ばれてたか」

    高校生の二人がなぜボーダー本部で食事を摂っているのかといえば、通う高校付近で警報が鳴った為である。間も無く本部から出動した隊員のほとんどが夜勤の担当者であったので、事後処理は別の隊にと割り振られた。休校となった学生達にも役割が分担されている。しかし、全員が全員というわけでもない。

    「状況はともかく、せっかく平日昼間から村上が本部に来てんだ。ランク戦しようぜ」
    「はい。食べたら向かいます」
    「おう。じゃーな」

    太刀川は現在、村上達と同じく生身の姿だ。疲労している隊員も見かけるなか、長時間本部で過ごしているにもかかわらず足取りが軽い。流石と思い眺める村上をよそに、水上は箸を止めて口を開いた。

    「あ、太刀川さんさっき風間さんが探してはりましたよ」
    「…どっち行った?」
    「真っ直ぐ。攻撃手のブースにいてはらへんかったら、多分いったんそこまで行って引き返してはります」
    「ブースにいる奴に聞いてみるわ。ありがとう水上助かった〜」
    「いいえ〜」

    心なしかゆっくりと、進行方向を変える。それが吉と出るか凶と出るかは未来視のSEを持たない人間にはわからないことだ。

    「風間さん、移動してるかな」
    「多分な。警報鳴ったし、太刀川さんの勉強絡みにあんま時間とらはらへんやろ」
    「来馬先輩も支部で自分の課題に取り組んでるみたいだったから頼れないだろうな…」

    村上が心配とも苦笑ともとれる言い回しをするなか、水上は既に違うことを考え始めていた。太刀川と水上の好物は同じ物なのだ。

    「コウく〜ん」
    「どうしたんだ」

    間延びした呼びかけを面白いと言わんばかりに笑って受け止める。水上に限った話ではないが、そういった対応に少しばかり癒される。影浦と手軽な惣菜パンと交換し獲得したおかずを咀嚼してから、水上は相談を持ち掛けた。

    「あったかいもん食いたならん?」
    「ああ、わかる」
    「うどん買うて半分にしようや」
    「半分でいいのか?」
    「一杯は無理」

    決して量を食べられる体質ではないのだが、水上も育ち盛りの男子高校だ。自分よりもよく食べるらしい村上なら可能な提案だろうと判断したうえでのこと。それに村上がこういった相談事を楽しむ傾向があるとも知っていた。

    「じゃあ食べる。あ、お金どうする」
    「俺が出す。気になるんやったらブース行く前にペットボトル買うて」
    「わかった」

    決まったのなら、と水上が立ち上がる。律儀に言葉をかけてくれる村上につい"良妻"という文字が浮かんだが伝えたところで本人は困るだけだろうと黙っておいた。耳に入ってしまうと面倒な男こと村上の師匠の存在があるのも本音だ。注文した食事を盆に乗せながら割り箸を二膳手に取っていると、自身の隊長が姿を現す。

    「仲良しやなぁ」

    隊長四人にS級経験者が一人。夜勤明けで働きっぱなしの者もいるなか、同い年の五人で同じテーブルに収まりパウンドケーキとぼんち揚げをつまみながら課題に手をつける人達に言われたくない。と水上は思った。

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    oz3011347532190

    REHABILI一緒にカーテンを買いに行く荒と村
    「こういうの見るのわりと楽しいよな」
    「そうなのか」

    肩にかけた鞄を正し、家具を眺めながら荒船が発した一言に、村上は少しばかり驚いていた。その反応を受けて辺りを見渡していた荒船が質問を投げかける。

    「お前はあんまり興味ないのか」
    「楽しいとは思うけど…拘りはないかな」
    「成程な」

    村上は家具を見ることに対してではなく、荒船がこういった場所を楽しんでいることを意外に思ったのだが、伝わらなかったようだ。

    「じゃあ…今日付き合わせて悪いなと思ってたんだけど、良かった」
    「おう。わりと乗り気だぞ」

    しかし、自身の用事に付き合わせてやって来た場所でそう言われれば少なからずありがたかった。
    支部のカーテンが汚れたのは今朝のことだ。明るい布地に本物の悪こと別所太一が珈琲をかけてしまった。洗う為にと外したところ足で踏んだまま持ち上げ更に裂けてしまったのだ。流石に新しいものを買おうと判断が下されされ、村上が出掛けるついでにと購入に名乗りをあげた。近くに大型インテリア用品店があることは知っていたが、入ったことはない。もとから会う約束をしていた荒船が土地勘のある人物だったため頼ることしにしたのだ。申し訳なさそうな後輩の姿が蘇る。荒船の台詞も添えて新しいものを持ち帰ろうと決めた。
    2070

    oz3011347532190

    REHABILI荒の寝顔が気になる村の小話。
    村上はそのSEの性質上、よく眠る。意識がないので断言はできないが寝姿を誰かに見られることなどざらにあるはずだ。勿論、時と場合は選ぶが必要ならば本来は寝床に適さない場所で眠ることだってあった。部隊に配属後、早くに任務に出られたのはその成果といえる。だが、もとより何処でも眠れる性分だったかといえばそれは違う。本部内で眠ることに抵抗がなくなったのは自身のSEを把握し稽古をつけてくれた師匠の意向によるところが大きい。どういったSEでどの程度の再現が可能でどれくらいで反映されるのか。それを見極めながら実地で弧月の扱いを教わったのだ。疲れのせいではなく学習の為に、皆が目に見える努力を重ねる新天地で一人眠ってしまうことに恐れに似た感情があったことは誰にも言っていない。目覚める度に誰かが迎えてくれたことで寝入ることへの抵抗が薄れていった。得られた成果を褒められることで、もはや自然に行えるようになったのだ。支部で自室を与えられていることを思えば、家族を除き村上の寝姿を見た回数が最も多いのは荒船という師匠だろう。だからこそとでも言おうか。目覚めの際に真面目な顔で声を掛けられ、時には笑いながら促された。そんな相手の寝顔は、村上にとってとても貴重なものに感じられたのだ。
    1903

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