どっちもタイプ任務のない平日の放課後。コンビニで菓子を買い込み教室に戻るといつもはこの時間にここにはいないはずの教師と大人がいた。
「お疲れ様です、灰原先生、七海さん」
「ナナミン!久しぶりー!」
「こんにちは」
七海に懐いている虎杖が彼の元へ駆け出した。虎杖のためにここにいる伏黒としては複雑な気持ちである。そんな心境を察したのか灰原が伏黒に疑問を投げた。
「こんな時間に教室に来るなんて珍しいね、忘れ物?」
「いえ、二人で自習をしようと思って。小腹が空いたので始まる前にコンビニに行ってきたんです」
「そうそう。今日の授業でわからないことがあったから伏黒に教えてもらうんだ」
話しながら教科書を取り出し机を動かす虎杖に伏黒は胸を撫で下ろした。
「二人はなんで教室に?」
「最初は職員室にいたんですが、夜蛾先生の五条さんへのお説教がはじまりまして」
「巻き込まれる前に避難して来たんだよ」
だけど勉強の邪魔になりそうだし戻ろうかなと灰原が言うと虎杖が慌てて止める。
「せっかくだから灰原先生も教えてよ!」
「ええ?」
「虎杖くん、先生の仕事の邪魔をしてはいけませんよ」
「ナナミンもお願い!」
「…いいでしょう」
***
「さっき行ったコンビニでさー」
自習改め勉強会が始まって一時間と少し。現状に飽きてきた虎杖が雑談を切り出した。
「セクシーかキュートか二択を迫る歌が流れてたんだよね」
「なつかしいね!」
「それで、帰り道で高専のみんながどっちのタイプかって話をしてたんだけど」
だよな!と話をふる虎杖に頷く伏黒。学生の他愛のない姿に青春だなと大人たちは目を細めた。
「ナナミンと灰原先生はーーー」
「七海がキュートで」
「灰原がセクシーで」
「ナナミンがセクシーで」
「灰原先生がキュートで」
「「「「えっ?」」」」
四人の声が重なった。お互いの表情を見て聞き間違いではないことを確認する。少しの沈黙の後、最初に口を開いたのは灰原だった。
「好きなパンを食べてる時とか、定時に帰れなくて拗ねてる時の七海って可愛くない?」
「俺はナナミンがネクタイを緩めるのとか、相手を吊し上げる時とか大人!ってかんじでかっこいいと思った!」
「灰原先生は笑うと童顔が際立って可愛らしいです」
「…」
「ナナミンは灰原先生のどこがセクシーだと思ったの?」
無邪気に聞く虎杖に言いあぐねる七海。その耳が赤くなっていることに気づいた灰原は「ところで虎杖、二問目計算間違えてるよ」と助け舟を出すのだった。
***
「セクシーな僕を思い出す時、何考えてた?」
高専からの帰り道。隣を歩く灰原が笑いながら問いかけてくる。何とは。ナニに決まってるだろうに。
「…服の裾で汗を拭く仕草が色っぽいと思っただけだ」
「ふーん?」
急拵えの回答をしどろもどろに言う七海に、教えてくれたら今夜サービスしようと思ったのになーと服を捲って見せる。
この小悪魔め、いやそう育てたのは自分だけれどもと帰宅まで煩悩と葛藤する七海であった。