牧紳一は、その名の通り、どんな時でも冷静さを失わず常に余裕を持つ、誠実で包容力のある紳士的な男である。周囲からの信頼も厚く、厳しく指導はしても後輩から誰より慕われる、牧とはそんな寛大で優しい紳士的な男であった。
だから、長年の片恋が実った相手───仙道にも、牧は極めて紳士的に言ったのだ。
「お前が嫌なことはしねぇ。その気になるまでいくらでも待つ」
ついさっき一世一代の告白をし、見事OKを貰った相手の手を握り、牧は余裕たっぷりに微笑んだ。
正直言うと今すぐ抱きたいしめちゃくちゃにしたいし閉じ込めて全て自分のものにしてしまいたいが、愛する男を無理矢理手篭めにする趣味は牧にはなかった。仙道という心底惚れた相手を、傷つけたくない、怖がらせたくない、心も体も最高に気持ちよくしてやりたい。つまり牧は、仙道を大事に大切に慈しみたかったのだ。
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