植物園の怪物達 血の池に菖蒲、蓮、睡蓮が浮いている。
異界と化した植物園で出会ったカートライトとアルヒルトと共に、狐は赤い水の上に浮かぶ真っ青な水鳥を見ていた。一切の音が消えた異空間で水鳥の目線だけが唯一、自分達以外の生きた存在のように思えた。
フンッとカートライトが鼻で笑う。
「…睡蓮の花言葉は「滅亡」だ…」
どこか自嘲気味に、カートライトが掠れた声で呟いた。聞き耳を立てる程ではないが、カートライトの声はマスクをしているせいか掠れて聞こえにくい。それに加えてこちらに喋りかけるというより、独り言に近い喋り方をするため聞き漏らしてしまいそうになる。
「じゃあ、睡蓮の下に鍵があるんだ」
流暢な日本語を喋るカートライトだったが、狐はなるべく子どもに話しかけるような易しい言葉で喋った。親切心もあったがカートライトの突き放すような性格が面白く、ちょっとからかってやりたいという悪戯心も確かにあった。
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