天淵第三話神話部分(仮) ——すると、姿が見えない神様が言いました。
「それでは、私が風を起こして、赤い霧を吹き払ってあげましょう」
人々は驚きました。大嘯穢の最中は、風は淀み、水は濁り、光は薄くなってしまうのに、どうやって風を起こすというのでしょう。
神様は、こう答えました。
「みなさん、声を出してみてください」
人々は、言われるまま、声を出してみました。
するとどうでしょう、人々の口から出た声は空気を揺らし、風になったではありませんか。
驚く人々に、神様は、自分と同じ声になるよう、声を出して見るように言いました。
低い声、高い声。
高い声、低い声。
そうして神様を真似て声を出すうち、人々はそれがとても心地良い響きを生み出すことに気が付きました。
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