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    時緒🍴自家通販実施中

    短い話を放り込んでおくところ。
    SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。
    無断転載禁止。

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    POIPOI 192

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    TRAINING5/14ワンライ
    お題【祝福/胡蝶の夢/ふりがな】
    幸せで、怖い夢をみる五条のお話です。高専時代のお話。
    毎夜みる夢 繰り返し何度も見る夢がある。俺はその中で高専の教師をしていて、硝子や、面倒だが可愛らしい生徒たちに囲まれている。そしてそんな俺の隣には髪型を変えた傑もいて、彼もどうやら俺と同じく教師らしいことが分かる。俺たちはその夢の中では呪術師を続けていて、やはり友人であり恋人同士だった。
     ここまではよくある俺の願望なんだろう。でも不思議なのは、見たこともない小さな女の子の双子二人が傑になついていることで、彼女らは俺にひらがなで書かれた肩たたき券(肩の部分には可愛らしいふりがながふられている)をくれる。「傑さまと仲良くしてくれてありがとう」「傑さまは寂しがり屋さんだから」そんなふうに俺に言った後、「結婚式は私たちがお花を撒いてあげるからね」なんてませたことを言ってきゃーって叫びながら走り去ってゆく。どうやら彼女らは俺たちの関係を知っているようで、傑も俺もここにいる人々には隠していないようだった。俺が面倒を見ている生徒たちも笑っている。「早く結婚しなよ先生」「見てるだけで恥ずかしいから早く結婚したら」「傑さんと一緒にいたらちょっとはマシになるんじゃないですか」生徒たちは口が悪かったが、俺たちの仲を祝福してくれる。いやあ、僕もそろそろ結婚したいんだけどね、傑が恥ずかしがってさぁ。——僕? あれ、俺は今僕って言った? なんで? そういえば傑がせめて僕って言えって言ってたよな。俺って言うのはよしたほうがいいって。夢の中でそれを思い出してるのかな。俺はまばたきをする。しかし次の瞬間双子が消え、傑が消え、生徒たちも消え、結局残ったのは硝子だけだった。そして彼女は言うのだ。「また気づいちゃったね」と。「気づかなきゃ夢を見てられたのに」と。俺は混乱する。僕は混乱する。そしてまばたきをして、ぼんやりと天井に向かって手を伸ばす。この部屋には、最後まで残ってくれた硝子ももういない。僕は、いや俺は、自分の部屋でどうでもいい夢を見ていたことに気づく。すぐにどっちが夢なのか分からなくて、携帯電話を触る。表示された年月日から、まだ自分が高専生であることに気づく。良かった、俺はまだ高専生だ、傑もいる、硝子もいる、見知らぬ生徒たちや双子の少女たちもいない。俺は吐きそうになりながら着替え、傑の部屋を訪ねる。するとそこにはまだ眠っている彼がいて、俺はその横顔の尊さに泣きそうになりながらベッドの脇に座り込む。
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    TRAINING4/16ワンライ
    お題【マーメイド/生霊/胸】
    さしす。八百比丘尼を保護しろという任務を命じられた三人のお話です。
    人魚と紫陽花 人魚の呪霊が流す涙を体内に取り込むと、長生きが出来る。
     そんな噂が非合法の骨董マーケットの間で立ったのは、俺たちがまだ高専一年の夏に差しかかった頃のことだった。古式ゆかしい八百比丘尼が現代に現れたのなら、伝承通り肉を食えばいい。でも何故今回は肉でなく涙なのか。俺にはそれが分からず、傑も不思議そうな顔をしていたように思う。
    「それで今回の俺たちの任務は?」
    「八百比丘尼の保護」
    「あぁ、面倒臭そうだなぁ……」
     そんなこんなで、俺は傑と二人で八百比丘尼を探す羽目になったのだった。
     でも、八百比丘尼は、人魚はすぐに見つかった。彼女が自分から、俺たちが学ぶ高専に近づいてきたからだ。彼女は教室で多分涙なのだろう、透明な液体が入った瓶を下げた胸元にナイフを置いて、生霊みたいな顔をして、「もう、私を殺してください」と言った。いや、俺たちが命じられたのはあんたの保護でそういう物理的な殺害じゃない。というか不老不死なのにナイフで刺せば死ぬのか。俺はそれを疑問に思ったが、教室にいる誰もがそれを尋ねなかった。
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    TRAINING4/9ワンライ
    お題【鬱血/閉世界仮説/フラスコ】
    さしすがちょっと辛い任務にあたるお話です。しゃべっているのは五条と夏油だけです。仄暗い感じです。
    光を灯す 桜が散ろうとする頃、フラスコや、シリンダーが並ぶ部屋にその少女はいた。手錠をかけられて机に繋がれた腕は鬱血していて、だが彼女は明るくこう言った。
    「お兄さん、あの方は?」
     あの方はどこに行ったのです? 約束したのに。
     俺はその問いにすぐに答えられなかった。答えたのは傑だった。あなたの言うあの方は私たちに捕らえられました(私たちが殺しました)。さぁ、怪我を治してもらいましょう。傑の言葉を聞いていた硝子が足を踏み出す。俺はそれを見ていられず、することも出来ることもなく、連続殺人犯のアジトから出たのだった。
     
     
     呪術師の娘が連続殺人犯、正しくは呪詛師にさらわれたのは、今から一週間前のことだった。俺たちがそれを助け出したのは昨日の話。彼女の残穢をたどって探し出したから任務はそう難しくなく、むしろこんな簡単な仕事を他の呪術師が早急にしなかったことが不思議だった。ただ呪詛師は呪いをかけていたから、最強の俺たち以外の他の呪術師は、そのトラップにひっかかったのかもしれない。それより不思議なのは、少女が今も男を待っているということだ。伝え聞いたところによると、彼女は例の男をいまだに慕って待っているらしい。高専に戻って食事をとって傑の部屋に帰る途中、まるでロミオとジュリエットみたいだなって言う彼に、俺はロマンチストすぎると友人の部屋の扉を開きながら言った。
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    TRAINING3/12ワンライ
    お題【三途の川/キャリーオーバー/腹いせ】
    訓練で渋谷に行ったさしすが色々おしゃべりしてる甘ったるいお話です。
    チョコレートドリンク 渋谷の街は、三途の川に似ているとよく思う。
     もちろん俺は死んでもいないから、そんな場所には行ったことがない。ただの概念としての見解だ。けれど会話のさざめきや、重なる足音、イヤホンをさした耳から漏れる音楽なんかが、どうもこの世のものとは思えない、って俺はあの場所を訪れる度に思った。
     これをふとした話題として傑に言った時、傑はそれは地獄じゃないの? と言った。審判を受けた人々が蠢いている場所、それが渋谷なんじゃないかって。そしてあの交差点は、それぞれの地獄に向かっているんじゃないかって。
    「地獄ね……」
     俺は交差点がよく見えるカフェで、行き交う人を見ながら言った。隣には傑と、珍しく高専の結界の中から出た硝子がいる。今日の任務は細かな弱い呪霊を一度に祓うってものだった。そして夜蛾先生がその実習場所に選んだのが、あの交差点ってわけだ。強いものが出て来た時は高専に連絡するように言われていたが、正直全て祓ってしまった方がやりやすいっていうのが俺の考えだったし、傑も硝子もそうだったろうと思う。
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    TRAINING1/22夏五ワンライ。
    お題【天井/プルタブ/映画館】
    映画を見に行った二人がいちゃいちゃするお話です。
    ライフ・イズ・コメディ! 傑と映画館に行くことになった。これって初デートだなぁ、俺たちも結構恋人らしいことをするもんだなぁ、そう俺は思って、なぜ傑がよりにもよってクレヨンしんちゃんの映画を選んだのか考えもしなかった。チケットまで事前に用意したのも怪しかったが、俺は傑と一緒に映画を観に行く、そんな事実だけに興奮してしまって、やっぱりなぜ傑って奴がクレヨンしんちゃんを選んだんだ?、恋愛映画でもないのに、とは考えなかった。でも『モーレツ! 大人帝国の逆襲』とか『アッパレ! 戦国大合戦』は俺を映画館に連れて行った五条家の呪術師も泣いていたから(俺は情緒の育っていない子どもだったので、結構長い間教育のために分かりやすい勧善懲悪のアニメ映画を見に連れて行かれていたのである)、映画の優しいジャイアンみたいに、クレヨンしんちゃんも映画は大人になると泣けるのかなって思った。それに傑と映画館に行けるんなら別に何の映画でも良かったから、もしこのチケットの映画で泣けなくたって、それはそれでいいだろうって。それで傑だけ泣いたら、ちょっと居心地が悪いかなぁ。
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