深夜。
任務を終え、部屋に戻ると、何故だか玄関前に見知らぬ子供が待ち構えていた。
「……」
「あんた、庵歌姫?」
「…………そっちこそ、誰よ」
なんだこの、クソ生意気なガキンチョは。
思わず顔を顰めるも、こんな夜更けに、知り合いでもない小さな子供が部屋の前で待っているなど只事ではない。明らかに訳ありである。
しかもこの子供、フードを目深にかぶって隠してはいるもののちらりと覗く毛先は純白で、私を睨む目は淡く透き通った空色をしていた。
────どこからどう見ても、あの馬鹿、そっくり。
「っ」
「取り敢えず、中、入んなさい。寒いでしょ」
「……」
小さな胸を反らして踏ん反り返る子供にお構いなしでがちゃりとドアを開き、真っ暗な玄関の中を顎で指せば、奴はむっとしたように口を尖らせながらも無言で敷居を踏み越えた。
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