【降風・ワンドロ】静かな山よ、カムバック【困った】 風見裕也は本当に本当に弱い幽霊である。ぬらりひょんや天狗といった名のある妖とは違い、いつ生まれたのかいつからここにいるのかさえも分からないようなそんな存在だった。
山の中にある小屋を寝床に暮らす風見は、小屋の前に畑を作って暮らしていた。今は大根とサツマイモを一緒に育てている。もうすぐ大根は収穫できるなと観察していると、村へと続く道の方から近頃よく耳にするようになった少年少女の声が聞こえてきた。
「飛田さん、こんにちは! わ~、大根、大きくなってる!」
「ほんとですね、これなら収穫できる日も遠くなさそうですよ!」
「まだ食えねえのかよ~」
本来であれば力の弱い風見の姿は人間に見えないはずなのだが、どうにも小さい子供には見えてしまうらしい。理屈はよく分からないが、子供という存在はこちら側に近いのだろう。風見は人のふりをして子供たちの方へと歩み寄る。
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