朝陽空が白んできたのに気付き、シアラはテントの中からもそもそと這い出してくる。ここは標高の高い雪山だ。テントを出た途端冷たく澄んだ空気が頬を撫でる。はぁと息を吐くと空に息が白く線を描く。
シアラはごそごそと懐を漁ると、ペンダントに加工された蜂蜜色の結晶蜜を取り出し空にかざして見つめる。日の出前の青白い空とのコントラストが対照的だ。これはシアラが初めての採集で獲た結晶蜜。とある島国のごく限られた土地でしか取れないが、そこでは年中咲いているものだから珍しいものでは無い。
「採集難易度高くねえし、安モンだから無理に売る必要も無い。初採集の記念に取っときやがれ。」
ラテロがそう言うものだから、シアラはそれに従うことにした。それから何度も採集に出て、もっと希少なものや、取るのに苦労をした蜜はあったけれども、初めてのこれはやはり特別だ。眺めていると心が落ち着くし、ぺろりと舐めると元気が湧いてくる。
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