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    gt_810s2

    @gt_810s2

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    gt_810s2

    TRAINING
     高杉に決意を打ち明けてから十日が経った。こちらから連絡するとは言ったものの、それでも週に一度は会っていたはずが高杉の方から俺を訪ねてくることはなかった。珍しく気を使われているのかとも考えたが、そういう気質の男でもない。妙なタイミングで依頼が立て込んだせいで、会いに行くことも出来ない上、話し合いの準備をすることも出来ていなかった。今日だって午前中は仕事で、午後と明日休んだら、明後日にはまた浮気調査の依頼に行かねばならないのだ。
     そもそも、何を用意したらいいのかもわからない。例えば世間一般で男と女が夫婦になる時に用意するような指輪を買うといったって、俺には金もない。そもそも俺と高杉が揃いの指輪をつけるのか? デカい金剛石のついた輪っかを左手薬指にはめる自分たちの姿を見て、酷く不似合いに思う。かと言って、それは二人が「そう」であるという証明にもなるものだ。欲しいか欲しくないか、そう聞かれたら欲しい。だが、相応しいものがわからなかった。揃いの刀でも持つか。銃刀法違反だ。着物。ペアルックなんざ恥ずかしい。柄じゃない。誓いを立てるに相応しい何か。それが考えても考えても思いつかなかった。
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    gt_810s2

    TRAINING※銀時の架空の母親・ネグレクト表現あり※

    本編の銀時の家族を否定する意図はありません。
    死体の中に放置された子供、現代で言うなら捨て子に等しいのでしょうが、彼が同じ境遇に置かれた時に今の感覚であれば確実に児童養護施設に預けられるのが妥当です。
    その場合、彼は護られて生きることになります。それが腑に落ちなかったので、本当の母親なのかもわからない顔も知らない女性を彼の母親役として宛がいました。
     暗愚で怒りっぽい父だった。だが、厳格故に人の信頼を得、俺が家を出るまで質のいい服を着て母親の作った美味い食事を腹に入れることが出来たのは、父親が臆病とも言えるほどに権力に忠実だったためだ。否定するつもりはない。強い者に媚び、弱い者を厳しく叱れば己とその家族の安全は護れるのだから。ひょっとしたら父親なりの愛情表現が、俺を常識という名の秩序で縛り圧することだったのかもしれない。ただ俺とは合わなかっただけだ。
     それは今世に限った話ではない。妙に太い眉も、怒鳴った時に肩を上げる仕草も、感情的になっても手を挙げない姿勢も、記憶の中の父親と全く同じだった。

     夢を見てから三日が経った今、記憶の中の俺と、俺自身の境目は限りなく薄くなっていた。まるでひとつの体を二人で分け合うようだ。それでいて、記憶の中の俺は別の人間ではない。まるで俺という人間が、記憶と人格それぞれ生き別れ、ようやく出会い一つになったように。
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