簒奪日和「さあやって参りましたローエングラム王朝第54代皇帝タイトル防衛戦、相対しますは発足期よりの宿年のライバル、ミッターマイヤー!本日の種目はボクシング!!果たして王冠はどちらの手に渡るのか!?」
解説者は声を張り上げる。熱狂と興奮を隠そうともせずに。楽しそうに。
私の望んだ未来とはかけ離れている。だが、ここには千年の貴き平和があると言う。
「いかがです?こうした趣向が手を変え品を変え、今では民衆の一番の娯楽となりました。多少騒がしいですがおれはこの簒奪制を気に入っています。何より大量の流血と社会的混乱が無い。未来にはもっと洗練されて残るのでしょうね」
私はこの世界ーーー未来について何も知らない。ついさっき目覚め、見知らぬ調度品の中顔を覗き込んできた見知った男に、アントン・フェルナーに置かれた状況の説明もそこそこに見せたいものがありますと連れてこられた。
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