touka_nov
MAIKING歌うことしかできないポンコツアンドロイドの🎍とマフィアの首領の🌾お話。🌾バースデーで載せたものこちらに移動。
黒のパーカーを被った男がふらふらと人ごみを歩いている。不思議と誰ともぶつかることなく雑踏を抜けると、男はふらりと路地に入り込んだ。どこかに行くあてもなさそうに、ふらり、ふらり、と歩きながら時折、立ち止まってはぼんやりと上を見上げる。ビルの隙間からは真っ青な空がのぞいていた。そうして、また、ふらりと歩き出す。あっちへ曲がり、こっちへ曲がり、どれくらい歩いたのか、ぽっかりと開けた空間に出た男の目の前には何かの店舗だと思えるガラス張りの飾り棚。今時珍しくもないヒューマノイドが一体、椅子に座っていた。柔らかそうな黒髪に白い肌、まろい頬につやつやしたピンクの唇。少年型ヒューマノイドの瞳は閉じられているが薄っすらと微笑んで見えた。まるで吸い寄せられるようにその少年の前へすすむと、男は静かにそれを見つめた。
1060makototakashiro
MAIKING親リWEBオンリー『3度の飯より君が好き‼︎』への参加作品として書いています。非常に不本意で恥じ入るばかりではありますが、当日の夜にしてここまでしか書けておりません……ですが、せっかくスペースを頂いたのに、まるっきり参加できないのでは悲しいので、書けた所まで公開させていただきます。
完成したらpixivに改めて投稿しますので、機会があれば読んでやってください。
君と俺の過去と未来(仮題) 見る角度で色を変える宝石のような瞳が揺らいだのは一瞬だった。ゆっくりと瞬きをした後、黒々としたまつ毛の向こうから現れたグレーに動揺の色は、ない。
「管理責任者のアッカーマンです。どんな些末なことでも言ってください。こちらからも必要なことはどんどん言わせてもらいます。いい仕事にしましょう」
ごく自然に差し出された手を反射的に握り返しながら、私は自分の手が僅かに震えていることに気づいた。彼にも伝わってしまっただろうかと伺うが、視線の合わない表情からは何も読み取れなかった。
こんな風に相手を観察しているとまるで冷静なようだが、今の私に冷静さなど欠片もない。動揺の色どころか動揺という概念そのものにでもなったようだ。正直に言えば、目の前の光景は夢なのではないかとすら思っていた。だって、あれほど会いたくて、しかし会えなくて、焦がれ続けた相手との再会がこんな風にやってくるなんて。都合の良い夢でなければなんだというんだ。
7591「管理責任者のアッカーマンです。どんな些末なことでも言ってください。こちらからも必要なことはどんどん言わせてもらいます。いい仕事にしましょう」
ごく自然に差し出された手を反射的に握り返しながら、私は自分の手が僅かに震えていることに気づいた。彼にも伝わってしまっただろうかと伺うが、視線の合わない表情からは何も読み取れなかった。
こんな風に相手を観察しているとまるで冷静なようだが、今の私に冷静さなど欠片もない。動揺の色どころか動揺という概念そのものにでもなったようだ。正直に言えば、目の前の光景は夢なのではないかとすら思っていた。だって、あれほど会いたくて、しかし会えなくて、焦がれ続けた相手との再会がこんな風にやってくるなんて。都合の良い夢でなければなんだというんだ。