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    OVER 2M USERS!新刊予定文からの抜粋どこからか、かすかに煙草の匂いが漂ってきた。
     禁煙家の増えるこの時代には珍しい匂いだ。人によって好き嫌いが分かれるであろう、香ばしい香りが辺りに充満する。街のいたるところがそうであるのとは違い、このマンションは禁煙を義務づけられていたわけではなかったと思うが、それでもやはり壁の色は変わってしまうし匂いも付いてしまうので、あまり良くはない。加えて寒くもなく、月の綺麗な夜ともなれば、喫煙家がベランダに出てくるというのも頷ける。
    「……右か?」
     匂いはどちらかと言うと右隣から漂ってきている。白い煙が見えるのだ、間違いない。しかし燐音は確信をもつことができなかった。なぜなら入居してから二年以上が経つが、隣はずっと無人のままだったからだ。隣に誰かが引っ越してきたなど、今までまったく聞いたことがない。
     このマンションはあまり住民同士の交流が活発ではない。それは都会だからというだけではなく、仕事の関係でプライバシーに気を遣う人間が多いからである。それは燐音とて例外ではない。ESに近い場所だから、おかしなことではないと思う。自分が住んでいる場所を知られたら困る人間もいるのだ。
     それでも、隣にく 1864