Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    ちょっとり

    流浪 @阿七おいしい

    REHABILI遙か7 阿七
    小説久々だからちょっとリハビリにSS。
    恋人の帰りを待つシチュエーションによくありがちなベタベタなネタを阿七風に調理してみました。

    漫画だとギャグにしかならないけど文字だとキュンなシチュエーションにできるかも?とか思った。浅はかな。

    2022.2.11
    嗜みに深く 阿国は頭を抱えていた。一舞台終えて一旦戻った宿の部屋、その中の光景を一目見て唸いてしまった。
     微かな寝息を立て、布団に横たわっている七緒がいる。阿国の誰よりも愛しい娘だ。その七緒が今朝は体調を崩していた。熱はないようだったが、大事を取って今日はそのまま休ませ、阿国は一人で興行場所に向かったのだった。宿を空けた時間は二刻くらいだろうか、それほど長い時間だとは思えなかった。だが、この有り様は一体どうしたことだろう。
    「…勘弁してほしい…」
     思わず素の声が出てしまう。七緒を見やってもう一度、顔を覆う。夜の阿国が纏う空色の小袖、それを抱き締めて眠る恋人の姿に目眩を起こしたくなった。
     きっと待っている間淋しく思ってくれたのだろう。それで子供のように阿国の着物を引っ張り出し、抱えることで安心したのだろうと想像に難くない。だが、できればそんな姿はこちらには隠しておいてほしかった。見られたらどうしようと恥じらって、用心してほしかった。そうでないと、もう阿国は舞台に戻れなくなってしまう。まだ今日はあと一回残しているというのに、これでは後ろ髪を引かれるどころではない。
    1050