まほやく
もけけ
らくがきバレンタインみすあき 2月の夜更けにキッチンにひとり立つ。くつくつ、ガシャガシャ音を立ててできたチョコレートスフレのカップは21個。もはや美味しそうというよりはやっと終わった、という感想になるのが悲しいところだが、この行事はそういうものだ。
ネロが手伝うというのを頑なに断ったのには訳があって、1番手前にある赤いカップのケーキを晶はじい、と不備がないようあちこちから検分した。
「ありがとうございます、賢者様」
世界中の幸福をつめたような嬉しそうな顔でリケが言う。手に持った薄黄色のカップのケーキを透明な包装の外側からしげしげと眺めている。これで大半の魔法使いには渡し終えた。残るはまだ寝ているシャイロックと公務中のアーサーとカイン、そして神出鬼没のミスラ。
1971ネロが手伝うというのを頑なに断ったのには訳があって、1番手前にある赤いカップのケーキを晶はじい、と不備がないようあちこちから検分した。
「ありがとうございます、賢者様」
世界中の幸福をつめたような嬉しそうな顔でリケが言う。手に持った薄黄色のカップのケーキを透明な包装の外側からしげしげと眺めている。これで大半の魔法使いには渡し終えた。残るはまだ寝ているシャイロックと公務中のアーサーとカイン、そして神出鬼没のミスラ。
HATOJIMA_MEMO
できた5月賢マナで出す本の話の一つです!とても途中!5月賢マナで出す話(途中) ──本当に?
──ええ、本当に。
◆
爽やかな風の香りに誘われ、晶は目を開ける。
「わ、すごい……!」
視界いっぱいに広がる草原に果てはなく、世界を空の青さと鮮やかに二分していた。晶は「ここはどこ?」と疑問を抱くよりも先に、その光景に心奪われる。
(これだけ広いと、魔法舎の皆でピクニックが出来そうだなあ)
そんな楽しい想像をしながら歩いていた晶だったが、青と緑だけの視界に突如ぽつんと現れた白に気付いて足を止めた。
(何だろう、動いて……というか、こっちに来てる?)
そう思っている間にも、豆粒ほどだった白はサッカーボールくらいの丸になり、次に晶が目を瞬いた時には、そのもこもこふわふわとした形がはっきり分かる程度になっていた。
7077──ええ、本当に。
◆
爽やかな風の香りに誘われ、晶は目を開ける。
「わ、すごい……!」
視界いっぱいに広がる草原に果てはなく、世界を空の青さと鮮やかに二分していた。晶は「ここはどこ?」と疑問を抱くよりも先に、その光景に心奪われる。
(これだけ広いと、魔法舎の皆でピクニックが出来そうだなあ)
そんな楽しい想像をしながら歩いていた晶だったが、青と緑だけの視界に突如ぽつんと現れた白に気付いて足を止めた。
(何だろう、動いて……というか、こっちに来てる?)
そう思っている間にも、豆粒ほどだった白はサッカーボールくらいの丸になり、次に晶が目を瞬いた時には、そのもこもこふわふわとした形がはっきり分かる程度になっていた。
もけけ
過去のを晒す喫茶店しりーず「あふ……」
目をゆるゆると開いて連動するように出てきた欠伸をかみ殺す。窓から日が差し込んでいて朝だと理解した。少し窮屈なのは昨日一緒にベッドに入った大きな猫ちゃんのせいだろうと振り返ると人型の大きな猫ちゃんがいた。
厄災との戦いが終わった後、なぜか帰れなかった晶は中央の国で喫茶店を開き、その2階に住居を構えている。あのころ悩まされた「傷」も皆徐々に癒えているはずだ。ところが、この大きな猫ちゃん、ミスラは賢者ではなくなった晶の住居や職場によく顔を出した。というかほぼいる。
あの頃と同じように手を握って、でもあの頃では考えられない速やかな入眠。抱き枕のように癖になってしまっているのだろうか。
ベッドを降りて、魔法舎ほど上等ではないフローリングに置いたルームシューズを履いて、洗面台へ。寝ぐせではねた髪を撫でつけて軽く梳く。
2621目をゆるゆると開いて連動するように出てきた欠伸をかみ殺す。窓から日が差し込んでいて朝だと理解した。少し窮屈なのは昨日一緒にベッドに入った大きな猫ちゃんのせいだろうと振り返ると人型の大きな猫ちゃんがいた。
厄災との戦いが終わった後、なぜか帰れなかった晶は中央の国で喫茶店を開き、その2階に住居を構えている。あのころ悩まされた「傷」も皆徐々に癒えているはずだ。ところが、この大きな猫ちゃん、ミスラは賢者ではなくなった晶の住居や職場によく顔を出した。というかほぼいる。
あの頃と同じように手を握って、でもあの頃では考えられない速やかな入眠。抱き枕のように癖になってしまっているのだろうか。
ベッドを降りて、魔法舎ほど上等ではないフローリングに置いたルームシューズを履いて、洗面台へ。寝ぐせではねた髪を撫でつけて軽く梳く。
もけけ
過去のを晒す厄災戦後。帰れなかった晶ちゃんが喫茶店を開いて、そこに入りびたる番猫の話。導入からん、と涼し気な音がなる。それを聞いたカウンターの内側の女性がにこりと微笑みを作った。
「いらっしゃいませ。一名様ですか?」
中央の国の城下とは言えない外れのほう。郊外とまではいかないが人通りはいくらか落ち着いた通りにその店はある。通りに平行に設えられた階段を少し下ったところに入り口の扉があり、1階の窓が上の3分の1だけ地上に出ているような不思議な建物の1階がそれだ。
どうやら他に従業員もいないため店主であろう可愛らしい女性にお好きな席をどうぞ、と言われ、窓際の席へ。目の前に先ほど下った階段と、少し視線をあげれば通りを行きかう人の足だけが見える。
店内には他に数人客がおり、穴場の店なのかもしれないと思い至った。紅茶を注文しがてらそっと店内を見回した。テーブル席に若い女性が二人、カウンター席に高齢の品の良さそうな男性が一人。そして。
1351「いらっしゃいませ。一名様ですか?」
中央の国の城下とは言えない外れのほう。郊外とまではいかないが人通りはいくらか落ち着いた通りにその店はある。通りに平行に設えられた階段を少し下ったところに入り口の扉があり、1階の窓が上の3分の1だけ地上に出ているような不思議な建物の1階がそれだ。
どうやら他に従業員もいないため店主であろう可愛らしい女性にお好きな席をどうぞ、と言われ、窓際の席へ。目の前に先ほど下った階段と、少し視線をあげれば通りを行きかう人の足だけが見える。
店内には他に数人客がおり、穴場の店なのかもしれないと思い至った。紅茶を注文しがてらそっと店内を見回した。テーブル席に若い女性が二人、カウンター席に高齢の品の良さそうな男性が一人。そして。
もけけ
過去のを晒すアンケートで書いた「壁に追い込む」 夜。自室のドアを開いた晶はハッとするように口元を手で抑えて固まった。少し迷うように視線をうろうろさせてぎゅ、と目を瞑り、よし、と小さく声を出して訪問者、ミスラを鋭く見据えた。鋭く、といっても晶の中で比較的、のレベルであり、ミスラにとっては誤差だった。
「なんです? 賢者様」
ほら全く響いていない。晶はめげそうになる心を叱咤して、ミスラを部屋に入れた。扉が閉まる。晶は失礼します、と丁寧に断りをいれてから、上の方にあるミスラの両肩を掴んだ。ぐ、と押す。
悲しくなるほど動かなかった。
「? どうしたんですか、さっきから。それより眠いんですけど」
「わ、わかってます!あの、ミスラ、1歩下がってもらえますか……」
1367「なんです? 賢者様」
ほら全く響いていない。晶はめげそうになる心を叱咤して、ミスラを部屋に入れた。扉が閉まる。晶は失礼します、と丁寧に断りをいれてから、上の方にあるミスラの両肩を掴んだ。ぐ、と押す。
悲しくなるほど動かなかった。
「? どうしたんですか、さっきから。それより眠いんですけど」
「わ、わかってます!あの、ミスラ、1歩下がってもらえますか……」
もけけ
過去のを晒す冬のミスあき。寒い日にかいた。早く寝かしつけてください、そういって私の手を取ったミスラはその瞬間弾かれたように手を離した。特に私には何も感じなかったがもしかして。
「? 静電気ですか?」
「ッ……そんなことよりあなた、……死んでるんですか?」
なかなか見ない焦った顔をしている。まるで、死んでほしくないみたいな、そういうふうに思ってしまう。
そう思っているうちにがし、と両肩を掴まれて胸にミスラの耳が当てられる。赤い髪が首に触れてくすぐったいし、胸がふにゅりと潰れる感触がしたが、本人はそれどころではなさそうだ。
「……うごいてますね……」
「生きてますよ。話してるし、動いてるじゃないですか」
「じゃあ手だけ死んでますよ」
すい、とミスラが私の手を掬い上げる。暖かい手だ。じんわりと温度が染み入る。ああなるほど。
495「? 静電気ですか?」
「ッ……そんなことよりあなた、……死んでるんですか?」
なかなか見ない焦った顔をしている。まるで、死んでほしくないみたいな、そういうふうに思ってしまう。
そう思っているうちにがし、と両肩を掴まれて胸にミスラの耳が当てられる。赤い髪が首に触れてくすぐったいし、胸がふにゅりと潰れる感触がしたが、本人はそれどころではなさそうだ。
「……うごいてますね……」
「生きてますよ。話してるし、動いてるじゃないですか」
「じゃあ手だけ死んでますよ」
すい、とミスラが私の手を掬い上げる。暖かい手だ。じんわりと温度が染み入る。ああなるほど。
もけけ
過去のを晒す元旦の書き初め(※現パロ)「遅いな、ミスラ……」
比較的アクセスの良い神社の初詣。人はこう、ものすごくいる。晶は石階段の下でぼんやりと空を見上げた。
赤い生地に蝶々の柄が刺繍してある綺麗な着物。親戚から譲ってもらったばかりのそれを着付けてもらうよう手配するのは手間で、細かい道具とかもわざわざ揃えて、それでもこの日を楽しみにしていた。あの人に綺麗だと思ってもらえるなら。
たくさんの人が晶の横を通り過ぎて階段を上がっていく。何人かは晶を示して何事か話しているようだ。スマホを見ても晶が少し前に送ったメッセージ以降、連絡はない。もう二十分はすぎている。
ため息を軽くついた時目の前に見覚えのない男がたった。
「ねえオネーサン、着物綺麗だね。誰か待ってるの? 来るまで俺と遊ばない?」
1956比較的アクセスの良い神社の初詣。人はこう、ものすごくいる。晶は石階段の下でぼんやりと空を見上げた。
赤い生地に蝶々の柄が刺繍してある綺麗な着物。親戚から譲ってもらったばかりのそれを着付けてもらうよう手配するのは手間で、細かい道具とかもわざわざ揃えて、それでもこの日を楽しみにしていた。あの人に綺麗だと思ってもらえるなら。
たくさんの人が晶の横を通り過ぎて階段を上がっていく。何人かは晶を示して何事か話しているようだ。スマホを見ても晶が少し前に送ったメッセージ以降、連絡はない。もう二十分はすぎている。
ため息を軽くついた時目の前に見覚えのない男がたった。
「ねえオネーサン、着物綺麗だね。誰か待ってるの? 来るまで俺と遊ばない?」
カンテラ
できたフィガロ中心。南の魔法使いたち疑似家族に愛を注いだ絵と漫画の健全詰め合わせ。レノックスの親愛エピソードネタ(バレ)あり。
始めて間もない'22年1月~9月にかけて描いたもので、今では解釈が変わった部分もありつつ、当時初心者の郷土資料として。 7
okusen15
できた【ヒス晶♀】厄災の完全討伐に成功するも、元の世界に帰れずまほやくの世界に取り込まれた晶(作中ではアキラ)と領主になったヒースクリフのバチバチ身分差恋愛です!!!大丈夫な人のみどうぞ 6096mavi
らくがきまほやく世界における言語と魔法と魔法科学(とムル・ハート)について一考20220211 前賢者いわく、「劣化版ほんやくコンニャクを食べたみたいなもの」。
とは、ヒースクリフから聞いた話だ。
「前の賢者様も、俺たちと会話ができるのを不思議がっていました。賢者様の世界には、たくさんの種類の言葉……『言語』があるんですよね。過去の賢者の書は、その色々な言語で書かれているのだから、色々な言語を話す賢者がいたはずなのに、誰も彼も言葉に困らなかったのはおかしい、っておっしゃってました」
「誰かが、言葉が通じるようになる魔法をかけてあげたわけではないんですか?」
「いえ、そういう話は聞かないし、魔法の気配もなかったので。俺が気づかなかっただけかもしれませんが……。そもそも、この世界にはひとつの言葉しかないので、ええと、その、『ほんやく』が賢者様には必要だなんて、昔からの賢者の魔法使いでもなければ思いつきもしないんじゃないかな。……よし、完成です」
15047とは、ヒースクリフから聞いた話だ。
「前の賢者様も、俺たちと会話ができるのを不思議がっていました。賢者様の世界には、たくさんの種類の言葉……『言語』があるんですよね。過去の賢者の書は、その色々な言語で書かれているのだから、色々な言語を話す賢者がいたはずなのに、誰も彼も言葉に困らなかったのはおかしい、っておっしゃってました」
「誰かが、言葉が通じるようになる魔法をかけてあげたわけではないんですか?」
「いえ、そういう話は聞かないし、魔法の気配もなかったので。俺が気づかなかっただけかもしれませんが……。そもそも、この世界にはひとつの言葉しかないので、ええと、その、『ほんやく』が賢者様には必要だなんて、昔からの賢者の魔法使いでもなければ思いつきもしないんじゃないかな。……よし、完成です」
mavi
らくがき愛憎と新しい呪文まほやくにハマりたての頃に書いたもの。たぶんもう直さないので放出
20211127 夢と思うことですよ。
ムル・ハートのごとき人物と長きにわたって交わり続け、あまつさえそれを楽しむなど、いかなる心構えが可能にするものかな。ある時、酒場の常連に問われて、シャイロック・ベネットはカウンター越しにそのように答えた。
彼との交流は、時に眠りを訪う夢のようなもの。私たちは待ち合わせ相手の人となりも、時間も、行き先も、そもそも相手がやってくるかも知ることはできない。快夢を望めば悪夢も避けて通れず、地の底に落とされる思いをした翌夜に天にも昇る心地を味わえることもある。こちらにできることといえば、素敵な夢を願って心地よい音楽や香りに包まれて床に就くとか、魘され飛び起きた時のために心を落ち着ける飲み物を常備しておくとか、そんなことだけ。
3950ムル・ハートのごとき人物と長きにわたって交わり続け、あまつさえそれを楽しむなど、いかなる心構えが可能にするものかな。ある時、酒場の常連に問われて、シャイロック・ベネットはカウンター越しにそのように答えた。
彼との交流は、時に眠りを訪う夢のようなもの。私たちは待ち合わせ相手の人となりも、時間も、行き先も、そもそも相手がやってくるかも知ることはできない。快夢を望めば悪夢も避けて通れず、地の底に落とされる思いをした翌夜に天にも昇る心地を味わえることもある。こちらにできることといえば、素敵な夢を願って心地よい音楽や香りに包まれて床に就くとか、魘され飛び起きた時のために心を落ち着ける飲み物を常備しておくとか、そんなことだけ。
plenluno
できた1/14「そういうことにしてるつもり!」8~New Year Party~展示作品③読んでいただきありがとうございました!ぜひアフターでもお楽しみください!
北の国で死の盗賊団が猛威をふるった400年間、毎年数回不定期で開催された行事のひとつがサウナでの我慢比べであった……という盛大な捏造のもと書いた作品です。
Twitterに上げたものを加筆・修正しています。
死の盗賊団主催・チキチキ★サウナ耐久戦! 「「…………」」
蒸気で白む室内に籠もる熱気。シンプルな木造の小屋に残ったのは2人の男だった。
片や、死の盗賊団首領―ブラッドリー・ベイン。
片や、死の盗賊団副首領―ネロ・ターナー。
絶対に負けられない戦いが今、始まる―――!
「いや~、やっぱボスとネロさんには敵わねえわ」
死の盗賊団の恒例行事・サウナ我慢比べにおいて3番手にまで上り詰めた男は、赤らんだ顔で小屋から出てきた。
この我慢比べはこれまで年数回不定期で行われてきたが、ブラッドリーとネロの一騎打ちの構図が崩れたことは―――、少なくとも死の盗賊団がこの体制になってからは無い。
アジトの中では子分たちによる今回の勝敗の賭けが行われている。
2952蒸気で白む室内に籠もる熱気。シンプルな木造の小屋に残ったのは2人の男だった。
片や、死の盗賊団首領―ブラッドリー・ベイン。
片や、死の盗賊団副首領―ネロ・ターナー。
絶対に負けられない戦いが今、始まる―――!
「いや~、やっぱボスとネロさんには敵わねえわ」
死の盗賊団の恒例行事・サウナ我慢比べにおいて3番手にまで上り詰めた男は、赤らんだ顔で小屋から出てきた。
この我慢比べはこれまで年数回不定期で行われてきたが、ブラッドリーとネロの一騎打ちの構図が崩れたことは―――、少なくとも死の盗賊団がこの体制になってからは無い。
アジトの中では子分たちによる今回の勝敗の賭けが行われている。
s a t o u
できたミスラが天国にアルシムする話※捏造チレッタ
「⋯⋯」
ミチル・フローレスは、しがみついた両腕にギュッと力を込めた。華奢な腕がぶるぶると震えているのは、純粋に恐怖だからだ。
「ちょっと、何です。邪魔しないでくださいよ」
気だるげな声がミチルの小さい頭の上から降ってくる。
目下、ミチルは北の魔法使いミスラの身体にしがみついているのだ。ハァ、と短いため息をついた後、ミスラはミチルの首根っこを掴んでヒョイと片手で持ち上げた。仔猫のように持ち上げられたミチルは、両腕をだらんと下ろし困ったように眉を下げている。
そんな二人の隣には、ミスラという魔法使いの象徴ともいえる扉がドンとそびえ立っている。
「⋯⋯だって、ミスラさん、これからどこへ行こうとしているんですか?」
8307ミチル・フローレスは、しがみついた両腕にギュッと力を込めた。華奢な腕がぶるぶると震えているのは、純粋に恐怖だからだ。
「ちょっと、何です。邪魔しないでくださいよ」
気だるげな声がミチルの小さい頭の上から降ってくる。
目下、ミチルは北の魔法使いミスラの身体にしがみついているのだ。ハァ、と短いため息をついた後、ミスラはミチルの首根っこを掴んでヒョイと片手で持ち上げた。仔猫のように持ち上げられたミチルは、両腕をだらんと下ろし困ったように眉を下げている。
そんな二人の隣には、ミスラという魔法使いの象徴ともいえる扉がドンとそびえ立っている。
「⋯⋯だって、ミスラさん、これからどこへ行こうとしているんですか?」