ゲヘナ
meanet_1103
MOURNING一緒に最後の審判を受けるクレス親子のお話ゲヘナ実装記念に書いていましたが
カトリックの死後フローを間違えてたので供養です。
再会 時がきた。時がきた。
トランペットが鳴り響く。
世界中に聞かせるように高らかに。神の再臨にふさわしく清らかに。
起きなさい。起きなさい。
土の中で眠るすべての人に命じるかのように厳格に、天使の演奏はいつまでもどこまでもつづく。
「……お……て…………」
ふと、別の音が混ざりだした。
「……き……て……おき……」
人の声だ。
あたたかくて、やさしい。なつかしい声。
ぼんやりした意識に浸透するさまは、まるで雨が大地に染み込むよう。
そしてついに、小さな花が咲くように言葉になった。
「おきて」
アンドルーがゆっくりまぶたを開くと、目の前に女の顔があった。
懐かしい。その微笑みも、こうやって優しくゆすり起こされるのも、すべてが懐かしい。
3840トランペットが鳴り響く。
世界中に聞かせるように高らかに。神の再臨にふさわしく清らかに。
起きなさい。起きなさい。
土の中で眠るすべての人に命じるかのように厳格に、天使の演奏はいつまでもどこまでもつづく。
「……お……て…………」
ふと、別の音が混ざりだした。
「……き……て……おき……」
人の声だ。
あたたかくて、やさしい。なつかしい声。
ぼんやりした意識に浸透するさまは、まるで雨が大地に染み込むよう。
そしてついに、小さな花が咲くように言葉になった。
「おきて」
アンドルーがゆっくりまぶたを開くと、目の前に女の顔があった。
懐かしい。その微笑みも、こうやって優しくゆすり起こされるのも、すべてが懐かしい。
mt_pck
MEMOCoC『天上のゲヘナ』KP:おり
PL:ゆひくち(PC:契裡 一夜)
もくず(PC:厳 黎誓)
ぷちこ(PC:累 遊沙)
夕(PC:九重 静也)
全生還にてシナリオ終了です。
最高だった……ありがとうございました! 13
もんじ
PASTゲヘナAn『ほもさば2nd』DLC3のはなし【ラツィール】
「暇だねぇ」
そう言いながら、膝の上にある彼の頭を撫でる。角と額の境目へと手を滑らせると、下から気怠そうな同意が返ってきた。
『膝枕をしないと出られない部屋』。そんな、よくわからない所へと来てしまったぼくたちは、こうして書かれたお題を消化している。
別に大きな危害はなさそうだからこうしてはいるけど、飽きたら出ようと密かに大広間に穴は掘っている。何本目のスプーンが折れたかは……今は忘れた。
だが、まあ今はこの部屋に居る以上は関係のない話だ。
「そうだ」
「ぼくの話をしようか」
そういえば、誰にも話したことはなかったな。
ぼくは……『ラツィール』という天使は代々、魂装術を教える天使だった。
魂装術を教えて、それでこの世界で生きやすいように人々を助けることが目的の天使だった。
5363「暇だねぇ」
そう言いながら、膝の上にある彼の頭を撫でる。角と額の境目へと手を滑らせると、下から気怠そうな同意が返ってきた。
『膝枕をしないと出られない部屋』。そんな、よくわからない所へと来てしまったぼくたちは、こうして書かれたお題を消化している。
別に大きな危害はなさそうだからこうしてはいるけど、飽きたら出ようと密かに大広間に穴は掘っている。何本目のスプーンが折れたかは……今は忘れた。
だが、まあ今はこの部屋に居る以上は関係のない話だ。
「そうだ」
「ぼくの話をしようか」
そういえば、誰にも話したことはなかったな。
ぼくは……『ラツィール』という天使は代々、魂装術を教える天使だった。
魂装術を教えて、それでこの世界で生きやすいように人々を助けることが目的の天使だった。
もんじ
PASTゲヘナAn『ほもさば』ほっするのはふぎくんに投げたやつ
〈1回目の〉→ふぎくんのやつ→〈2回目の〉と読むとよい
〈1回目の〉
「さむいなぁ」
寒い、寒い、冷えた空気が辺りを包んでいる。
ぽつりと呟いた言葉も夜の帳に消えてゆく。
こんなに寒いのは久しぶりだ。野良猫だった頃に過ごしていた、あそこに似ている。
もう昔々の話だが、忘れさせてはくれない記憶。
「あぁ、さむい……」
そう独りごちりながら、身体を小さくする。
そんな中でふと、ある人物の姿が思い浮かんだ。彼の、セペフルの姿。何故だろうか。
そう思うと、足は勝手に彼の居るであろう拠点の一区画へ向かっていた。
しばらく歩いて、彼の場所へと向かうがそこはもぬけの殻。荷物はそのままなので、出かけているようだった。
1596〈1回目の〉→ふぎくんのやつ→〈2回目の〉と読むとよい
〈1回目の〉
「さむいなぁ」
寒い、寒い、冷えた空気が辺りを包んでいる。
ぽつりと呟いた言葉も夜の帳に消えてゆく。
こんなに寒いのは久しぶりだ。野良猫だった頃に過ごしていた、あそこに似ている。
もう昔々の話だが、忘れさせてはくれない記憶。
「あぁ、さむい……」
そう独りごちりながら、身体を小さくする。
そんな中でふと、ある人物の姿が思い浮かんだ。彼の、セペフルの姿。何故だろうか。
そう思うと、足は勝手に彼の居るであろう拠点の一区画へ向かっていた。
しばらく歩いて、彼の場所へと向かうがそこはもぬけの殻。荷物はそのままなので、出かけているようだった。
もんじ
PASTゲヘナAn『ドキサバ』140字とかのSS40字
私は、結局の所。許しが欲しかったのだと思う。人らしく振る舞うための。人として生きるための。誰かを思うことを。私にはその資格などないと思っていたから。恋などというものも。愛などというものも。すべて。すべて。――だが、今は違う。貴方を見る度に思うのだ。私は、貴方に恋をしているのだと。
『これを愛や恋と呼ばぬなら』/レザー
僕の世界というのは、元々狭くて小さくて暗い暗いところだった。ある日突然、それは開けて変わったのだけれど、黒い砂が積もりに積もった僕の世界はとても見せられるものじゃない。――だったのだけど、君に恋して大好きになって、お掃除した。今では、僕の世界は君への愛が溢れているのだ!なんてね。
1903私は、結局の所。許しが欲しかったのだと思う。人らしく振る舞うための。人として生きるための。誰かを思うことを。私にはその資格などないと思っていたから。恋などというものも。愛などというものも。すべて。すべて。――だが、今は違う。貴方を見る度に思うのだ。私は、貴方に恋をしているのだと。
『これを愛や恋と呼ばぬなら』/レザー
僕の世界というのは、元々狭くて小さくて暗い暗いところだった。ある日突然、それは開けて変わったのだけれど、黒い砂が積もりに積もった僕の世界はとても見せられるものじゃない。――だったのだけど、君に恋して大好きになって、お掃除した。今では、僕の世界は君への愛が溢れているのだ!なんてね。
もんじ
PASTゲヘナAn『ドキサバ3rd』水槽の中「ナイイェル、どこ?」
自分の飼い猫の名前を呼ぶ。かつて前の支部で、同じ名前の天使の女の子に餞別で「わたしだと思って大切にしてください!」なんて、きらきらとした瞳で言われてしまって(半ば強引に)自分が飼うことになった猫。
飼う、という行為に未だに慣れず禄に世話など焼いていないが、賢い猫のようであまり手は掛からなかった。
そして、この支部は動物に寛容なようで、みんなが集まる談話室に居てもナイイェルを構ってくれる。ナイイェル自身も人なつっこく、構われるのを嫌がらないので好かれている……のだと思う。
そんな、猫のナイイェルがご飯の時間だというのに談話室に居ない。
「ナイイェル……」
何度目か分からない彼女の名前を呼ぶと、遠くから微かに鳴き声が聞こえる。声の方へと歩いて行くと、先日建造したばかりの『驚異の部屋』へと到着した。
1964自分の飼い猫の名前を呼ぶ。かつて前の支部で、同じ名前の天使の女の子に餞別で「わたしだと思って大切にしてください!」なんて、きらきらとした瞳で言われてしまって(半ば強引に)自分が飼うことになった猫。
飼う、という行為に未だに慣れず禄に世話など焼いていないが、賢い猫のようであまり手は掛からなかった。
そして、この支部は動物に寛容なようで、みんなが集まる談話室に居てもナイイェルを構ってくれる。ナイイェル自身も人なつっこく、構われるのを嫌がらないので好かれている……のだと思う。
そんな、猫のナイイェルがご飯の時間だというのに談話室に居ない。
「ナイイェル……」
何度目か分からない彼女の名前を呼ぶと、遠くから微かに鳴き声が聞こえる。声の方へと歩いて行くと、先日建造したばかりの『驚異の部屋』へと到着した。
もんじ
PASTゲヘナAn『ドキサバ』バレンタインSSバレンタインSS
▼女子側が渡したのを想定したなんかアレよ
「これを、俺に……?」
珍しく、少し驚いたようにサヴァシュは目を見開いた。数度の瞬きの後に、それを受け取る。ゆっくりと優しく、それの表面を撫でる。
「そうか、今日はバレンタインだったな」
ふっ、と笑って見せるその表情は、いつもより柔らかく、幼くさえ見えた。
「ああ、そうだ。俺も渡そうと思っていたものがあったな。……少し、待って貰えるだろうか」
そう言い残して、サヴァシュは踵を返した。早足だが、暗殺士としての性分でか足音は全くしない。
しばらくすると、何かの包みを持って彼は戻ってきた。
「……大切な者に贈り物をする日だと聞いていて準備はしていたが、こちらから渡すのは迷惑かと思っていた。俺だけ、浮かれてはいないかと。……いや、それは杞憂だったみたいだな」
2760▼女子側が渡したのを想定したなんかアレよ
「これを、俺に……?」
珍しく、少し驚いたようにサヴァシュは目を見開いた。数度の瞬きの後に、それを受け取る。ゆっくりと優しく、それの表面を撫でる。
「そうか、今日はバレンタインだったな」
ふっ、と笑って見せるその表情は、いつもより柔らかく、幼くさえ見えた。
「ああ、そうだ。俺も渡そうと思っていたものがあったな。……少し、待って貰えるだろうか」
そう言い残して、サヴァシュは踵を返した。早足だが、暗殺士としての性分でか足音は全くしない。
しばらくすると、何かの包みを持って彼は戻ってきた。
「……大切な者に贈り物をする日だと聞いていて準備はしていたが、こちらから渡すのは迷惑かと思っていた。俺だけ、浮かれてはいないかと。……いや、それは杞憂だったみたいだな」
もんじ
PASTゲヘナAn『救世主来る』天使たちの話僕は一度だけ、あのひとと共に任務をこなしたことがあった。
ずいぶんと昔の、思い出したくもない頃の話だ。
その時は、長期の任務ということもあり街の宿に連泊したものだった。大概、任務と任務の間は暇を潰つため街へと繰り出すのだが、あのひとだけは違った。ただ宛がわれた部屋に鎮座し、いつものように微笑むのだ。「あら、いってらっしゃい」と。
一日や二日そうであれば気が乗らないで済む話だが、あのひとは任務期間中ずっと、一月の間何もせずそこにいた。
ある時、僕も様子を見に行ったが、あのひとは変わらず鎮座しそこでほほえんでいた。ずっと、ずっと。
痺れを切らした他の面子があのひとを誘って出したこともあったが、誘われなければ出ても来ない。出たとしてもいつもと様子は変わらない。いつもと変わらない。ただ変わらない。
1389ずいぶんと昔の、思い出したくもない頃の話だ。
その時は、長期の任務ということもあり街の宿に連泊したものだった。大概、任務と任務の間は暇を潰つため街へと繰り出すのだが、あのひとだけは違った。ただ宛がわれた部屋に鎮座し、いつものように微笑むのだ。「あら、いってらっしゃい」と。
一日や二日そうであれば気が乗らないで済む話だが、あのひとは任務期間中ずっと、一月の間何もせずそこにいた。
ある時、僕も様子を見に行ったが、あのひとは変わらず鎮座しそこでほほえんでいた。ずっと、ずっと。
痺れを切らした他の面子があのひとを誘って出したこともあったが、誘われなければ出ても来ない。出たとしてもいつもと様子は変わらない。いつもと変わらない。ただ変わらない。
もんじ
PASTゲヘナAn『ドキサバ』ぎゅっサバ予告編(だったもの)「……ってなコトがあったんだよ!」
身振り手振りを交えながら、彼──ベルカは楽しそうに説明をする。そう、それは昨日までの5日間の話。なんだかんだで無人島でサバイバルをした話だ。
「それはすごいね!」
話を聞いていた甲蠍人のターヘルも翡翠の目を輝かせ、楽しそうに頷いた。この5日間留守番をしていた彼は、連絡が来ないと3日ほど前から三日三晩港で僕らの帰りを待っていたという。帰ってきたとき、心配そうに全力移動してきた彼の姿はまだ目に新しい。
まあ、その後に先輩達にいつもの変なことを言って怒られていたのだけど。あの悪癖がなければ素直ないい子なのになぁ、とは思っているが如何せんデリケートな問題で僕からは言えてはいない。
1163身振り手振りを交えながら、彼──ベルカは楽しそうに説明をする。そう、それは昨日までの5日間の話。なんだかんだで無人島でサバイバルをした話だ。
「それはすごいね!」
話を聞いていた甲蠍人のターヘルも翡翠の目を輝かせ、楽しそうに頷いた。この5日間留守番をしていた彼は、連絡が来ないと3日ほど前から三日三晩港で僕らの帰りを待っていたという。帰ってきたとき、心配そうに全力移動してきた彼の姿はまだ目に新しい。
まあ、その後に先輩達にいつもの変なことを言って怒られていたのだけど。あの悪癖がなければ素直ないい子なのになぁ、とは思っているが如何せんデリケートな問題で僕からは言えてはいない。
もんじ
PASTゲヘナAn『ドキサバ』攻略後SS▼アシェル
血が、滾っている。
その臭いが、感触が、色が、全てが。鮮やかに、鮮烈に、自分を狂わせてゆく。
ここは戦場。血で血を洗い、血で路を切り開く場所。ここにオレは居た。初めから、何もなかった頃から。杯を空にしてからも、それからも。
手に入れたものは分かりやすい力だった。だから、切り開いていった。それが一番単純で、わかりやすいものだったからだ。楽しかったから。それを望まれたから、そうした。
そうして、オレは鍛え続けた。刀を、己を。
だが、立ち止まった。立ち止まってしまった。そして、振り返ってしまった。
「……あぁ、何もないじゃねぇか」
今まで歩んだ道は、オレの人生は。
その時、手にしていた刀は囁いた。契約の時に交わしたあの言葉を。今となっては呪いのように消えてくれない、あの言葉を。
2598血が、滾っている。
その臭いが、感触が、色が、全てが。鮮やかに、鮮烈に、自分を狂わせてゆく。
ここは戦場。血で血を洗い、血で路を切り開く場所。ここにオレは居た。初めから、何もなかった頃から。杯を空にしてからも、それからも。
手に入れたものは分かりやすい力だった。だから、切り開いていった。それが一番単純で、わかりやすいものだったからだ。楽しかったから。それを望まれたから、そうした。
そうして、オレは鍛え続けた。刀を、己を。
だが、立ち止まった。立ち止まってしまった。そして、振り返ってしまった。
「……あぁ、何もないじゃねぇか」
今まで歩んだ道は、オレの人生は。
その時、手にしていた刀は囁いた。契約の時に交わしたあの言葉を。今となっては呪いのように消えてくれない、あの言葉を。