スペード
或夜🍆
MEMO◾︎CoCAlice in B!
HO4スペードの白兎
Oswald=Barney
「いそがなきゃ、いそがなきゃ。
…おれは急いでるんだけど、見てわかんない?
……もしかして、目、無い?」 2
kamataichi
INFOCoC6「JOKER≒JOKER」2025/01/19-28KP:はむちゃ
PL/PC:
HO♠らんまるさん/キース・スペード
HO♥ムラサキさん/ファニー・マカロン
HO♦ゆきがけさん/レミ
HO♣かまたいち/クローバー
全生還
0C2F
銃火器技能ファンブルノルマ、今回も無事達成してしまいました……。
またもクリチケ自分だけもらえなかった;;
おまけに他人のクリチケ2枚食べました;;
愛を叫ぶ酢橘
DONE𝟸𝚓𝟹𝚓 二次創作rfトランプ→四神の転生パロ
※トランプ概念では年齢操作あり
(スペードとダイヤが幼なじみ)
※今回、戦闘描写がっつり入ります
(キツめの描写が一部あり)
※怪我(+流血)有り
メイン…rfmo+tkn
(※tknに関しては最後二人称違いますが
あえてそのままにしています)
pw…トランプの枚数(ジョーカー除く)(半角数字) 27
ベイマックス好き@金田ァーーーー
DOODLE久々にツイステのデュース君を描きました!絵のクオリティーは
ん…何か…何か…って感じです。また明日も描きたいです
#ツイステ #デュース・スペード #落書き
#クオリティーが低い
香月ゆき
DOODLE相互のティルダさん宅のスペード氏とうちの兄貴ズが"「打ち上げ」と称し3人で飲み、ただ下世話な話をしてゲラゲラ笑い
17歳主人公二人が顔真っ赤にして
「あんなのでごめん」「こっちもあんなのでごめん」って言ってる図"
(ティルダさんの投稿文より)
イルギネスにちゃっかり、お持ち帰り"された"ことがあるのを暴露されたしらかげと、それに突っ込むスペード氏🤣
🔞なセリフ入りは2枚目💖 2
cutezaka
DOODLE当店では、オリジナルデザインが施された白いルイヴィトン iPhone15ケースを取り扱っています。スペードのモチーフやハートマーク、そして文字プリントがデザインされており、個性的で魅力的な印象を与えます。https://cutezaka.com/g-lv-iphone15-plus-case-338.htmlKuon_ao3
DONE[30/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス 空間の瞬きが増える。ハート、クローバー、ダイヤの欠片に囲まれたあの、暗く深い水の底へ転送されないことをアリスは強く祈る。
一方のエースは平然と――それどころかどこか慣れた様子で、不安定な色彩のざわめきを眺めていた。不意にアリスは、ひとつの可能性へと思い至る。
きぃんと響く、長く強烈な耳鳴り。
「ねえ、私が記憶喪失になったのって……もしかして今回が初めてじゃなかったりする?」
高音に擦り潰されぬよう、ほとんど叫ぶような形で。尋ねたアリスは、エースの唇が動くのを見て必死に耳を澄ます。
「この約束をくれる『君』も、今回が初めてじゃなかったりして」
掲げる小指に結ばれた水色が、アリスの見た最後の景色だった。
856一方のエースは平然と――それどころかどこか慣れた様子で、不安定な色彩のざわめきを眺めていた。不意にアリスは、ひとつの可能性へと思い至る。
きぃんと響く、長く強烈な耳鳴り。
「ねえ、私が記憶喪失になったのって……もしかして今回が初めてじゃなかったりする?」
高音に擦り潰されぬよう、ほとんど叫ぶような形で。尋ねたアリスは、エースの唇が動くのを見て必死に耳を澄ます。
「この約束をくれる『君』も、今回が初めてじゃなかったりして」
掲げる小指に結ばれた水色が、アリスの見た最後の景色だった。
Kuon_ao3
DONE[29/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス どちらからともなく、互いに喉を震わせて笑う。周囲の色彩も、つられて軽やかにゆらめく。
「さすがに全部の君を覚えていられる自信、ないぜ?」
「そんなの構わないわよ。忘れたかったら忘れて、覚えていたかったら思い出して」
「君が役持ちになって記憶を保持出来るようになったら、それまでの『アリス』達との思い出を一度情報共有しようか」
「……何を言われるのか、既にちょっとした恐怖が……」
自身の両肩を抱いて身震いしたアリスは、この穏やかな時間を少しでも引き延ばしたいと切望して、笑い声を転がした。終わって欲しくない。忘れたくない。それなのに無情にも、景色は明滅を始める。
「まずは私が他の皆みたいに、あらゆる国に同時に存在出来るようになるまで。……私も『覚えていられる』側になれる、その時まで」
524「さすがに全部の君を覚えていられる自信、ないぜ?」
「そんなの構わないわよ。忘れたかったら忘れて、覚えていたかったら思い出して」
「君が役持ちになって記憶を保持出来るようになったら、それまでの『アリス』達との思い出を一度情報共有しようか」
「……何を言われるのか、既にちょっとした恐怖が……」
自身の両肩を抱いて身震いしたアリスは、この穏やかな時間を少しでも引き延ばしたいと切望して、笑い声を転がした。終わって欲しくない。忘れたくない。それなのに無情にも、景色は明滅を始める。
「まずは私が他の皆みたいに、あらゆる国に同時に存在出来るようになるまで。……私も『覚えていられる』側になれる、その時まで」
Kuon_ao3
DONE[28/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス「記憶喪失になった私のこと、毎回怒ってくれていい。酷いよって罵ってくれたっていい」
そう言って、アリスは少し笑った。そんなことわざわざ許可しなくとも、エースは笑顔で不機嫌を振りまくのだろう。最初の頃を振り返り、アリスは頭一つ分以上高い位置にある彼の顔を見上げる。
「出逢いを繰り返して、『はじめまして』の度に私と友達になったり深い仲になったり。それぞれとの関係性を作ってくれたら……あなたにとって色んな、『唯一の私』がたくさん増えると思うの。そういうのは、どう?」
以前のアリスと今のアリスだけでなく、未来の、ひいてはこれから世界に馴染んで他の軸にも増えるであろうアリスとも全部、出逢って。好みのアリスだったり、そうじゃないアリスだったりと知り合って、比べて、重ねて。それを繰り返して。
606そう言って、アリスは少し笑った。そんなことわざわざ許可しなくとも、エースは笑顔で不機嫌を振りまくのだろう。最初の頃を振り返り、アリスは頭一つ分以上高い位置にある彼の顔を見上げる。
「出逢いを繰り返して、『はじめまして』の度に私と友達になったり深い仲になったり。それぞれとの関係性を作ってくれたら……あなたにとって色んな、『唯一の私』がたくさん増えると思うの。そういうのは、どう?」
以前のアリスと今のアリスだけでなく、未来の、ひいてはこれから世界に馴染んで他の軸にも増えるであろうアリスとも全部、出逢って。好みのアリスだったり、そうじゃないアリスだったりと知り合って、比べて、重ねて。それを繰り返して。
Kuon_ao3
DONE[27/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス 息を吐き、俯いていたエースの顔が上げられる。
「君みたいに全部綺麗に忘れて、新しい気持ちで生きていく道も、もしかしたらあるのかもしれないけど」
人差し指を自身のこめかみに添え、彼はこつこつと軽く叩いた。
「唯一覚えている俺すら忘れたら、『その人』は正真正銘、この世界から消えてしまうから」
全ての人から忘れられてしまったら、「その人」の存在が、生きた軌跡ごと無くなってしまう。こんなにも自分に影響を与え、確かに隣に居たはずなのに。薄れるどころか白く透明になり、完全に無に帰してしまう。
「だから『アリス』を俺は忘れない、忘れることなんて出来ない。……そういう訳で君とは、どんな気持ちで関わって、どんな距離感でやっていけば良いのかなって。ずっとずっと、考えていたよ」
663「君みたいに全部綺麗に忘れて、新しい気持ちで生きていく道も、もしかしたらあるのかもしれないけど」
人差し指を自身のこめかみに添え、彼はこつこつと軽く叩いた。
「唯一覚えている俺すら忘れたら、『その人』は正真正銘、この世界から消えてしまうから」
全ての人から忘れられてしまったら、「その人」の存在が、生きた軌跡ごと無くなってしまう。こんなにも自分に影響を与え、確かに隣に居たはずなのに。薄れるどころか白く透明になり、完全に無に帰してしまう。
「だから『アリス』を俺は忘れない、忘れることなんて出来ない。……そういう訳で君とは、どんな気持ちで関わって、どんな距離感でやっていけば良いのかなって。ずっとずっと、考えていたよ」
Kuon_ao3
DONE[26/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス「忘れられることよりも、忘れることの方が私は許せないタイプだろうって、前に言ってたわよね」
会話が途切れることに不安を覚えて、アリスは懸命に言葉を探す。話が終わった瞬間に、この場所から追い出されてしまう気がして怖かった。
「あなたもそうなんでしょう? だからあなたは、以前の『アリス』を忘れないように、気をつけながら私に接してた」
以前の「アリス」はこうだったと、文句を言いつつも、今思えば彼は単なる事実を述べていただけに過ぎない。だから君もこうしてくれ、などとアリスに強要するようなことはしなかった。
以前の話を聞いて何を感じ、どう動くのかは、アリスに全て委ねられていた。
「私を含むこれからの『アリス』との関わり方について、迷っているの?」
606会話が途切れることに不安を覚えて、アリスは懸命に言葉を探す。話が終わった瞬間に、この場所から追い出されてしまう気がして怖かった。
「あなたもそうなんでしょう? だからあなたは、以前の『アリス』を忘れないように、気をつけながら私に接してた」
以前の「アリス」はこうだったと、文句を言いつつも、今思えば彼は単なる事実を述べていただけに過ぎない。だから君もこうしてくれ、などとアリスに強要するようなことはしなかった。
以前の話を聞いて何を感じ、どう動くのかは、アリスに全て委ねられていた。
「私を含むこれからの『アリス』との関わり方について、迷っているの?」
Kuon_ao3
DONE[25/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス 忘れたくない。今の彼女にとって、重みのある言葉だ。それを受け取ってまず、はははとエースは笑った。
「俺との間に、何か特別な出来事があった訳でもないのに?」
異なる滞在地。容易には会えない、特有の悪癖。重なった時間の中でただ、言葉を交わし、飲み食いを共にし、ゲームに興じて、贈ったり贈られたりをした、それだけだ。
確かにそうだと、アリスは探るように指先で顎を撫でる。それでも言葉に出来ない引っかかりを喉奥に感じて、ポケットから例の水色のリボンを取り出した。
「私も同じ。なんとなく、捨てられなかった」
アリスの色だからと、持っていた理由をそう告げたエースの顔が、幾度と無くちらついて。その度に、謎だらけの彼の言動が次々と浮かんで、落ち着かない気持ちにさせられる。
570「俺との間に、何か特別な出来事があった訳でもないのに?」
異なる滞在地。容易には会えない、特有の悪癖。重なった時間の中でただ、言葉を交わし、飲み食いを共にし、ゲームに興じて、贈ったり贈られたりをした、それだけだ。
確かにそうだと、アリスは探るように指先で顎を撫でる。それでも言葉に出来ない引っかかりを喉奥に感じて、ポケットから例の水色のリボンを取り出した。
「私も同じ。なんとなく、捨てられなかった」
アリスの色だからと、持っていた理由をそう告げたエースの顔が、幾度と無くちらついて。その度に、謎だらけの彼の言動が次々と浮かんで、落ち着かない気持ちにさせられる。
Kuon_ao3
DONE[24/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス 催しが終わった以上、次にまた引っ越しが起こるまで当分大きなイベントは無いと住人は言っていた。それは即ち、いつまた引っ越しが発生してもおかしくない状態になったということだ。
出逢って、巡って、離れて、また巡って。それをずっと、果てなく繰り返すのがルール。
故にアリスは、何か予感めいたものを察知していた。
元の世界とも、この世界とも異なる、狭間の世界。夢魔と話す時に現れる、色彩豊かなゆらめきの空間。
いつの間にか佇んでいたこの場所は、帰路でも岐路でもあるような気がしてならなかった。身体の記憶というやつなのだろう。分岐点に立っているような、選択を迫られるような。強い圧迫感を覚えたアリスは、会いに行こうと思っていた人物――紅い外套の騎士が、誂えたかのようなタイミングで目の前に立っていることにより、自身の予感を後押しされる。
637出逢って、巡って、離れて、また巡って。それをずっと、果てなく繰り返すのがルール。
故にアリスは、何か予感めいたものを察知していた。
元の世界とも、この世界とも異なる、狭間の世界。夢魔と話す時に現れる、色彩豊かなゆらめきの空間。
いつの間にか佇んでいたこの場所は、帰路でも岐路でもあるような気がしてならなかった。身体の記憶というやつなのだろう。分岐点に立っているような、選択を迫られるような。強い圧迫感を覚えたアリスは、会いに行こうと思っていた人物――紅い外套の騎士が、誂えたかのようなタイミングで目の前に立っていることにより、自身の予感を後押しされる。
Kuon_ao3
DONE[23/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス 茶色くなってしまった葉を取り除く。自室の卓、エースから貰ったささやかな花束は、徐々に細く、小さくなってきた。この仮初めの花瓶もじきに、ただのグラスへと戻らざるを得ない。
傍らに長いこと置かれていた、細いリボンにアリスは手を伸ばす。丸まっていたそれは、毛糸玉のように転がって、指先とグラスに浮く花との間に橋を架けた。
怖くなったかという彼の問い掛けに思いを馳せる。
会えない間に育ってしまった。
離れ難いと思う存在が出来てしまった。
忘れたくないと思う人が、出来てしまった
エースのふるった剣よりも、アリスは今。
その本人を忘れることが、何よりも怖いと思っている。
萎れた紫の花に口付け、アリスは凛とした面持ちで部屋を後にした。
326傍らに長いこと置かれていた、細いリボンにアリスは手を伸ばす。丸まっていたそれは、毛糸玉のように転がって、指先とグラスに浮く花との間に橋を架けた。
怖くなったかという彼の問い掛けに思いを馳せる。
会えない間に育ってしまった。
離れ難いと思う存在が出来てしまった。
忘れたくないと思う人が、出来てしまった
エースのふるった剣よりも、アリスは今。
その本人を忘れることが、何よりも怖いと思っている。
萎れた紫の花に口付け、アリスは凛とした面持ちで部屋を後にした。
Kuon_ao3
DONE[22/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス アリスの脚は、会場の絨毯に縫い止められたかのように動かない。心の整理が出来ずに、思考そのものが停止しているようだった。
エースは一旦その場から離れようと歩き出す。しかしすぐさま袖を、強く強く捕まれていることに気が付いた。
「怖くなった」
線状に飛び散った血は、アリスの指の近く、エースの肘のあたりにも点々と色を付けている。
「でも。あなたがそんな風に聞いたのは何故か、の方が気になる」
エースは顔だけで振り返る。震える指先とは逆に、少女の視線はちっとも揺れてはいなかった。
「怖がって欲しい?」
剣先でも血の跡でもなく、こちらだけを真っ直ぐ見上げる少女に。エースは唇を開きかけて、閉じる。
怖がって欲しい。
492エースは一旦その場から離れようと歩き出す。しかしすぐさま袖を、強く強く捕まれていることに気が付いた。
「怖くなった」
線状に飛び散った血は、アリスの指の近く、エースの肘のあたりにも点々と色を付けている。
「でも。あなたがそんな風に聞いたのは何故か、の方が気になる」
エースは顔だけで振り返る。震える指先とは逆に、少女の視線はちっとも揺れてはいなかった。
「怖がって欲しい?」
剣先でも血の跡でもなく、こちらだけを真っ直ぐ見上げる少女に。エースは唇を開きかけて、閉じる。
怖がって欲しい。
Kuon_ao3
DONE[21/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス 三回目に訪れたカジノ会場では、運良く早々に遭遇することが出来た。
「アリス、気を付け」
「え」
「あと、目は瞑った方がいいかな」
笑顔を崩さぬまま歩み寄ったエースは、アリスが目を閉じるよりも早く剣を抜き――投げた。両手持ち用の、騎士のあの大剣を。まるで投げナイフのように。右手一本で、ぶんとアリスの後方に向かって投げつけた。
閉じろと命令する間もなく、反射で瞼が落ちる。ほとんど瞬きの速度で、開いたアリスが振り向いた先。胸に剣の突き立った大柄の男が、仰向けで倒れていた。
周囲の悲鳴を聞きつけた黒の領土の警備隊が、方々から集まってくる。最初に駆けつけた者へとエースは端的に状況説明を済ませ、面倒くさそうに倒れた男から剣を引き抜いた。
517「アリス、気を付け」
「え」
「あと、目は瞑った方がいいかな」
笑顔を崩さぬまま歩み寄ったエースは、アリスが目を閉じるよりも早く剣を抜き――投げた。両手持ち用の、騎士のあの大剣を。まるで投げナイフのように。右手一本で、ぶんとアリスの後方に向かって投げつけた。
閉じろと命令する間もなく、反射で瞼が落ちる。ほとんど瞬きの速度で、開いたアリスが振り向いた先。胸に剣の突き立った大柄の男が、仰向けで倒れていた。
周囲の悲鳴を聞きつけた黒の領土の警備隊が、方々から集まってくる。最初に駆けつけた者へとエースは端的に状況説明を済ませ、面倒くさそうに倒れた男から剣を引き抜いた。
Kuon_ao3
DONE[20/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス 紫の凛とした小花と、白い花弁の集合花。飾り気のない野の花は、背の低いグラスから水を吸い上げ、すっかり生気を取り戻した。雑草と呼ばれてもおかしくない草花達は、青青と葉を広げ己の存在を主張している。
役目を果たした水色のリボンは、くるくると綺麗に丸まった状態でその傍らに置かれていた。
置かれたまま、捨てられずに、いた。
アリスは読んでいた本を閉じる。実のところ、この二十ページ程の間ずっと物語に集中出来ていなかった。視界に映り込んでくる、白や紫、若い緑。そして何より、細い水色がどうにも気になって仕方がなかった。
『あら、会えば会うほど惹かれる、って説も広く知れ渡ってると思うけど?』
『それは君の体験が伴っている意見?』
517役目を果たした水色のリボンは、くるくると綺麗に丸まった状態でその傍らに置かれていた。
置かれたまま、捨てられずに、いた。
アリスは読んでいた本を閉じる。実のところ、この二十ページ程の間ずっと物語に集中出来ていなかった。視界に映り込んでくる、白や紫、若い緑。そして何より、細い水色がどうにも気になって仕方がなかった。
『あら、会えば会うほど惹かれる、って説も広く知れ渡ってると思うけど?』
『それは君の体験が伴っている意見?』
Kuon_ao3
DONE[19/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス 差し出されたのは、花束と呼んで良いものか躊躇われる程の、小さな花の束だった。
花屋で買うような、大きさも形も整った花ではない。草原に寝転がった時に視界の端で揺れるような、ありふれた、どこにでもある草花。けれども命に貴賤は無く、小さいながらも凛と美しく花開いている。
「このリボン……」
受け取ったアリスは花の次に、茎を縛っているそれへと視線を移した。見覚えのある水色のリボンは恐らく、渡したスコーンのラッピングに使っていたものだ。
「捨てられなくて、ポケットに入れっぱなしだったんだ」
「分かる、紐もリボンも取っておくと便利だものね」
「っく、はは、君らしい合理的な考え方だ」
心底可笑しそうに、エースは腹を抱えて笑った。
431花屋で買うような、大きさも形も整った花ではない。草原に寝転がった時に視界の端で揺れるような、ありふれた、どこにでもある草花。けれども命に貴賤は無く、小さいながらも凛と美しく花開いている。
「このリボン……」
受け取ったアリスは花の次に、茎を縛っているそれへと視線を移した。見覚えのある水色のリボンは恐らく、渡したスコーンのラッピングに使っていたものだ。
「捨てられなくて、ポケットに入れっぱなしだったんだ」
「分かる、紐もリボンも取っておくと便利だものね」
「っく、はは、君らしい合理的な考え方だ」
心底可笑しそうに、エースは腹を抱えて笑った。
Kuon_ao3
DONE[18/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス 花を摘む、煤色の手袋。
白い可憐な花、紫の上品な花。野原に咲く、名前も知らぬ花々を摘んで、束ねていく。
背丈の低い花の束はやがて、コサージュ程の大きさと量になった。エースは左の胸の、自身の時計に重なる位置にあるポケットから、細いリボンを取り出した。
それはあの、彼女から貰った差し入れの口を結んでいた、水色のサテンのリボン。捨てられなかった、思い出の一部。
ポケットを漁って指先に当たる度に蘇る。
持っている限り何度でも思い出してしまう。
離れている間に、募ってしまう。
故にエースは、一度手放すことにした。彼女に預けて、選択を、二人の行く末を、委ねる。
鼻歌混じりに野の花をリボンで束ね、エースは最後に蝶結びを施した。
322白い可憐な花、紫の上品な花。野原に咲く、名前も知らぬ花々を摘んで、束ねていく。
背丈の低い花の束はやがて、コサージュ程の大きさと量になった。エースは左の胸の、自身の時計に重なる位置にあるポケットから、細いリボンを取り出した。
それはあの、彼女から貰った差し入れの口を結んでいた、水色のサテンのリボン。捨てられなかった、思い出の一部。
ポケットを漁って指先に当たる度に蘇る。
持っている限り何度でも思い出してしまう。
離れている間に、募ってしまう。
故にエースは、一度手放すことにした。彼女に預けて、選択を、二人の行く末を、委ねる。
鼻歌混じりに野の花をリボンで束ね、エースは最後に蝶結びを施した。
Kuon_ao3
DONE[17/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス 愛くるしい姿をしたライオン達は、一足先にハンニバルの元へと飛んで行ってしまった。癒しを求めていた理由を尋ねられ、アリスはまだ整理のついていない心境のまま、時計を直した店員の一件をぽつりぽつりと語り出す。
この国で目が覚めたばかりの彼女が、役持ちの住人にしたことと全く同じ。ルールに則って、なにもかもを忘れたリセット。
「……忘れる方も哀しいと思っていたけど、忘れられることの方がずっと堪えるわね」
背中から当たる夕陽で、足下に長い影が落ちる。横顔には、苦々しい笑みが浮かんでいた。
「そうかな? 君は忘れることの方が耐え難いタイプだと思うけど」
隣を歩いていたエースにそう告げられ、アリスは思わず脚を止める。
458この国で目が覚めたばかりの彼女が、役持ちの住人にしたことと全く同じ。ルールに則って、なにもかもを忘れたリセット。
「……忘れる方も哀しいと思っていたけど、忘れられることの方がずっと堪えるわね」
背中から当たる夕陽で、足下に長い影が落ちる。横顔には、苦々しい笑みが浮かんでいた。
「そうかな? 君は忘れることの方が耐え難いタイプだと思うけど」
隣を歩いていたエースにそう告げられ、アリスは思わず脚を止める。
Kuon_ao3
DONE[16/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス「ありすだ!」
「ようこそ、ありす! こっちこっち」
ふよふよと宙を泳いでいたライオンのぬいぐるみ達は、来客に気が付くと一斉に取り囲んだ。舗装されていない小道の先を示し、門までの案内役を買って出たライオンに対し、アリスは浮かない顔で切り出す。
「ちょっと……哀しいことがあったから、一つお願いがあるんだけど……」
「どんなおねがい?」
円らで愛らしい瞳で聞き返す彼の、綿が詰まった両手をアリスはきゅっと握った。
「吸わせて」
言うが早いが、アリスは鬣のあたりに顔を埋める。毛糸やフェルトの、ふわふわの肌触り。思い切り息を吸えば、日向ぼっこをしていたのか、あたたかくどこか懐かしい香りがした。
すーはー、すーはー、と猫吸いもといライオン吸いを心行くまで堪能したアリスは、ようやくのことで正気を取り戻して顔を上げる。
543「ようこそ、ありす! こっちこっち」
ふよふよと宙を泳いでいたライオンのぬいぐるみ達は、来客に気が付くと一斉に取り囲んだ。舗装されていない小道の先を示し、門までの案内役を買って出たライオンに対し、アリスは浮かない顔で切り出す。
「ちょっと……哀しいことがあったから、一つお願いがあるんだけど……」
「どんなおねがい?」
円らで愛らしい瞳で聞き返す彼の、綿が詰まった両手をアリスはきゅっと握った。
「吸わせて」
言うが早いが、アリスは鬣のあたりに顔を埋める。毛糸やフェルトの、ふわふわの肌触り。思い切り息を吸えば、日向ぼっこをしていたのか、あたたかくどこか懐かしい香りがした。
すーはー、すーはー、と猫吸いもといライオン吸いを心行くまで堪能したアリスは、ようやくのことで正気を取り戻して顔を上げる。
Kuon_ao3
DONE[15/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス ショーケースに並ぶチョコレートは、どれも皆宝石のように輝いて見える。客がトングでつつくのではなく、一粒ずつ店員が丁寧に扱うから尚更そう感じるのかもしれない。
磨き込まれたケースに指紋を付けることさえ躊躇われて、アリスは端から端まで宝石の煌めきとじっくり見つめ合った。
「いらっしゃいませ」
ケースの向こう側に立つ店員に声を掛けられ、アリスはぱっと顔を上げた。
「以前あなたが薦めてくれたチョコレート、とても美味しかったからまた来ちゃった」
あの時手土産の品を一緒に選んでくれた顔なしの店員はしかし、疑問符を浮かべたまま首を傾げる。人違いだったろうか、とアリスは店内を見回したものの、やはり目の前に立つ彼女は前回接客担当してくれた店員で間違いない。
602磨き込まれたケースに指紋を付けることさえ躊躇われて、アリスは端から端まで宝石の煌めきとじっくり見つめ合った。
「いらっしゃいませ」
ケースの向こう側に立つ店員に声を掛けられ、アリスはぱっと顔を上げた。
「以前あなたが薦めてくれたチョコレート、とても美味しかったからまた来ちゃった」
あの時手土産の品を一緒に選んでくれた顔なしの店員はしかし、疑問符を浮かべたまま首を傾げる。人違いだったろうか、とアリスは店内を見回したものの、やはり目の前に立つ彼女は前回接客担当してくれた店員で間違いない。