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    パイロ

    NASU_1759

    DONEオーガタイタンとパイロット
    ハッピージャンキー・サンセット デリックは幸せだった。
     己の人生のほとんどは平穏という場所からかけ離れた場所に存在してはいたが、美味い食事に三食ありつけて、好みの顔の女を抱いて、とびきり極上のヤクをキメて、銃弾の雨を避けながら、時々ほんの少し命の危険がある仕事をこなして、全長およそ二三フィートの悪友がいるだけでデリックの人生は満ち足りていた。
     ぱりぱりと指先でゆで卵の殻を剥けば、つるりとした白身の表面が現れた。綺麗に剥けたことに満足しながらも、パンがあればサンドイッチにできるのに、と時間外だからとゆで卵を投げて寄こした職務怠慢の食堂の婆さんを呪いながらデリックは薄い唇で銜えたままの煙草を一吸いした。ウエスタン・コーストのシガー・ケースのパッケージにはカルフォルニアの海岸にヤシの木が立ち並び、それを沈みかけの夕陽が空や海、砂浜を赤く染めあげていた。フロンティアのどの保養地であろうとも、地球の西海岸の自然に勝るものはないだろう、とデリックはいつも思っていた。といっても、もちろんデリックは地球に行ったことはなく、芸術というものには無縁の世界に生きているデリックだったが、風情あふれるこのパッケージのイラストだけはデリックのお気に入りだった。
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