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    ブラッド

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    DONE11/23の賢マナで出す予定のものです。前にアップした「The day before dispersal」を含めて一冊にして出します。前回のブラッドリー視点に続き、ネロ、石になった魔法使い達、賢者の視点から語っていく話です。加筆修正はたぶんめっちゃする。あと、架空の植物が出てくるので前回の話を読んでからの方がわかりやすいかも。
    The day before dispersal 2 オーロラ色の小さな欠片は飲みこむ前に口の中でひとりでに融けていった。ブラッドが撃ち落としたもう一人のマナ石はおそらく吹雪に埋もれてしまった。短い春が来るまで雪の下で眠ることになるだろう。それか誰かに掘り起こされて食われるかだ。
     ブラッドが、とどめを刺した魔法使いの荷物を確認している間に俺は白樺の樹でテントを作ることにした。ここまで吹雪が激しいなら帰ることは難しい。追跡するうちに風に流された影響もあってか位置も掴みづらい。
    「《アドノディス・オムニス》」
     幹が太くて頑丈そうな一本の白樺に狙いを定めて呪文を唱える。落ちたのが白樺の林でよかった。白樺は一晩中、魔法で雪を掃うわけにもいかないような夜に雪から身を守るためのテントになってくれる。選んだ樹の周囲に生えていた樹々が、めりめりと轟音を立ててしなりながら円錐形になるように中心の樹に絡みついていく。吹雪がやまない夜は時折この音がどこかから聞こえてくる。北の国の魔法使いは葉の代わりに雪を茂らせた白樺の中に籠ってどこにも行けない夜を遣り過ごす。
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    MAIKING謎の現パロブラネロ(ブラッドリーが作詞作曲した曲のボーカルをネロにやってほしいみたいな呟きをなぜか形にしようとした産物)
    聖歌隊の足音1 ブラッドリー・ベインが人生で一番はじめに触れた音楽は聖歌だ。年の離れた姉が敬虔な信徒で、子供のころに家の近くの古い教会の聖歌隊に入れられたのがきっかけだった。同い年くらいの奴らと同じ格好をして行儀よく並び、声をそろえて神を賛美する。その一連の行為自体は大層つまらなかったが、歌い方は覚えた。覚えるだけ覚えたら声変わりを待たずにさっさと抜けて、住んでいた通りの近くにあったライブハウスに通うようになった。そのライブハウスはかつて路上で喧嘩をする代わりに音楽を使い始めた奴らの闘技場を前身とした、今ではこの辺りで活動する名も無きミュージシャンたちの集う混沌としたたまり場でもあった。
     ベインの家はとにかく兄弟が多く、いつもろくに金がなかった。幼い頃は小遣いなんて一文たりとも貰えなかったから、正規の方法で会場には入れなくて、バイトをしていた年の近い兄にくっついてライブを見た。はじめは相当に煙たがれていたけれど、諦めずに通いつめれば顔見知りは増えていき、よくそこでライブをしていたロックバンドのメンバーの一人にギターの弾き方を教わった。バンドのアンサンブルを耳で学んだ。ライブの熱気や高揚感を客席から得て、自分も壇上へ上がることを選んだ。
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