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    furikozaka

    MOURNINGレオの死をループする泉の話。SF(すこしふしぎ)系ホラー。
    昔書きかけていたことを忘れて新しく書き始めたら古いの発掘したので供養します。夢ノ咲時代軸で、フィレンツェエンドを知っている今では絶対に続きを書けないので途中までですがここに供養します。原稿の息抜きで新しく書いている方はシステムとかは基本同じですが同居数年後の軸なので心理状態とか別物になると思います。
    100万回死んだねこ100万回死んだ猫

    二度目は、交通事故だった。

    太陽がとろけるように西の端に落ちていく時間。光がじんわりと街中を舐めて、黄昏色に染め上げていた。鈍色の海は静かに揺蕩って、陽が落ち行く様を見つめていた。
    海岸沿いにある防波堤のすぐ横にある狭い歩道は、白線が摩耗して途切れ途切れだった。大人の肩幅よりもほんの少し広いだけの領域を、泉とレオは一列になって歩いている。この時間帯の交通量は少ないが、信号がほとんどないせいでどの車も勢いよく通り過ぎていく。仲良し横並びが好きな小学生ですら、この道に来れば誰もが黙って一列になる、そんな道だった。
    学院の門を出てからずっと、二人の間に会話はなかった。ずっと一緒にいるはずなのに、このところ学校でもあまり話ができていない。口を開けば喧嘩ばかりで、互いに言葉を交わすことに疲弊していた。それでも、一緒にいることをやめないのは、敵だらけの学院で心を許せるのが互いだけだからだ。静寂すらも、僅かな安寧となっていた。
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    hashi22202

    MOURNINGほんのりオカルトにありそうな「時空の食い違いで死んだはずの人に会う話」で、戦前のトラキア王と戦後の息子さんがなんでか出会う話。同じ話なんですが、前半は息子さん視点で、後半はお父さん視点です。ほんのりアリ→アル
    (779年)
     朝、執務室の扉を開けたら、いないはずの父がいた。
     ”父”は相変わらず顰めっ面をして書類を読んでいたが、ふと顔を上げて、
    「なんだ、おまえか」
     と、ぼそりと言った。どう返していいかわからなかったので、
    「はい、私です」
     と、つい間抜けなことを言うと、そうか、とだけ言われた。”父”はしばらく目の間を揉んでから、少しばかりこちらの顔を眺めていたが、やがて書類に視線を戻した。あまりにも日常的な動作であったから、アリオーンには何も訊けなかった。そうして息子の見ている先で、”父”は長々とため息をついた。
    「相変わらず勝手を言う」
     まったくあの馬鹿は。そう言って”父”は、書類に署名をしたためた。それから、もう一度、やはり深々と息をついた。そうしてため息混じりに、いくつかの決裁を片付けていった。その苦り切った様子が、アリオーンにはめずらしかった。その”父”の、奇妙に悄然とした姿は、あのときのことを思い出させた。
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