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    流菜🍇🐥

    DOODLETF主ルチと桜の話。ルチ視点。TF主くんとルチなら桜に拐われそうなのはTF主来んの方かなと思ったので。
     三月も中旬になると、季節は少しずつ春へと変化する。まだ冬の装いをした人々が目立つのに、花粉は既に姿を現し始めているそうなのだ。もう少ししたら、町はマスクで顔を隠した人間たちで多い尽くされるだろう。機械である僕や、花粉に耐性のある青年には関係がなかったが、ヒトという生き物は厄介だとしみじみと思う。
     春の予兆は、花粉だけではなかった。朝や夕方のニュースでは、桜の開花予測というものが放送されるようになったのだ。翌日の天気予報を報道した後に、画面はピンクの背景に彩られたスライドに切り替わる。そこには日本地図が書かれていて、地域ごとに桜の開花を予測した日付が記されているのだ。
     ただ花が咲くだけのことに、一体何の意味があるのだろうか。僕には分からないが、この国の人間はこのような季節の移ろいとやらを大切にするらしい。春になったら桜の開花を見守り、夏になったら海やプールに向かい、秋には紅葉の盛りを眺め、冬には降る雪を楽しむ。年中行事というものは、テレビで放送するほどに重要なことらしいのだ。
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    豚野郎

    MOURNING・羂髙
    ・モブから少年を人質に取られて誘拐された髙羽が羂のところにかえる話
    ・髙羽がモブに凌辱された後の話なので100%明るい話ではないです

    ・当初のアレは終わったのですがもうちょっとだけ続く予定です
    不離一体 扉を閉めて、後ろ手に鍵を掛ける。本来ならば呪術で封印を施してやりたいところだが、私にそれは許されていない。私はピンチャンの羂索。それ以上でも、それ以下でもない、それで――それが良いと彼の手を取った、運命を選び取ったのだ。

    「髙羽」

     呪符が壁紙のようにびっしりと貼られた、窓のない部屋。中央に置かれた簡易的なベッドに、私の運命はいた。
     名を呼ぶ暇も惜しく早足に歩み寄れば、髙羽が目を閉じていた。朝に薄目で後ろ姿を見た着古した高校ジャージではない。白い甚平、患者衣と言うべきそれは”治療”を受けるにあたって着替えさせられたのだろう。

     隅から隅まで傷の有無を確認することは間違っていない。また、記憶は物にも宿る。嬲られる最中と同じ格好は苦痛を思い出す材料になってしまう可能性が高い。被害者の保護として妥当な判断で、だから、私に湧き上がる感情、何もかもへの殺意は抑え込むべき感情だ。長く息を吐いて、永く生きる中で作り慣れた笑みを顔に貼り付ける。
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