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    湯たんぽ

    甘味。/konpeito

    TRAINING本日の800文字チャレンジ
    クロリン/湯たんぽだけじゃ、足りなくて
    「さすが豪雪地帯の冬、と言ったところか」
     鳳凰館に宿泊しているクロウは、生地の厚いカーテンの隙間から窓の外に広がる雪景色を眺めていた。夕刻から降りはじめた雪は、強くなる一方だ。
     冬のユミルに行かないか。そうリィンに誘われたクロウは、お互いの休みを利用して彼の故郷、ユミルを訪れていた。
    「おお、さみいさみい。――ん?」
     寝間着のうえに羽織ったコートの襟をかき合わせる。不意にドアの向こうへ近づく気配で振り返った。
    「リィンか。どうしたんだ」
     律儀にノックをしてから入ってくる姿に目を瞬く。彼は実家の男爵家へ、クロウはこの鳳凰館へ泊まることになっていた。
    「その、今日は特に冷えるから。湯たんぽ、持ってきたんだ」
     おそるおそる差し出されたものを受けとる。その体温ほどの温かさが冷えた身体に染みた。
    「おっ。サンキューな」
     すっかり手持ち無沙汰になってしまったリィンは、口をひらいては閉じてを繰り返していた。寒さに慣れている彼が二の腕をさすっている。
    「ほれ、早く入れって。寒がりの俺にはこんなんじゃ全然足りないんだよなあ」
     腕ごと引き寄せ、彼の身体を抱き留める。そのままふたりでベッドへ雪 854