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    片思い

    ふう。

    DONE翠千ワンライより
    お題『イルミネーション』

    翠→千
    クリスマスに守沢先輩と会いたいと思う片思い中の翠の話です。
    夜空を覆い尽くしてしまうほどの輝きが、眼前に広がっている。
    右を見ても左を見ても視界に入るその眩い光は、今の俺には眩しくて、俺はそっと目を細めた。
    凍えるような寒さに身体を震わせて、俺は一つ息を吐く。ため息と一緒に吐き出された鬱は、白く変色して夜空に溶けて消えていった。それでも俺の心は晴れないままで、街を行き交う楽しそうな人々の中、まるで俺だけが違う世界にいるかのようだった。


    かれこれ三時間、俺はベンチに一人座って、ぼうっとイルミネーションを眺めていた。どこまで続いているのかと思わせるほどの並木道が、無数のLEDに彩られ、街を華やかに照らし出している。ライトアップされた木々を見上げる人々の顔は、皆明るく笑顔だ。小さな子供と手を繋いで歩く家族や、肩を寄せあって笑い合う男女、クリスマスケーキを片手にどこか充実した顔で歩いているOLの女性、どこを見ても完成された綺麗な世界に俺は相応しくない気がして、思わず目を閉じる。目を閉じれば、思い浮かべたくもないアレの顔が浮かんできて、俺の鬱を加速させる。振り払うように小さく首を振ったけれど、まぶたの裏に焼き付いて離れないアレの顔は、こんな時でも暑苦しくて、俺はまた一つため息をついた。
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    unimisotomochi

    DONE付き合っていない日本とブラジルで遠距離中の侑日が、ひょんなことから写真を送り合う話です。片思いどころか自分の気持ちにも気づいていない二人です。。
    透明な朝 日向がブラジルに戻って二年が経ったある冬の日、めずらしく大阪で雪が降った日のことだった。練習終わりのロッカールームで誰かが言ったのだ。「日向が怪我したらしい」と。
    「……え?」
    「負傷退場したって、ネットニュースに出てる」
     周囲の騒めきが一瞬遠のいた。思考が止まり目の前が灰色に染まる。「おい、侑。大丈夫か?」肩に手を置かれ、侑はハッと我にかえった。
     チームメイトに上の空で返事をすると、慌ててロッカーからスマホを取り出す。いつもなら思うがままに制御できるはずの指先が、画面上をでたらめにすべった。
     記事はすぐに見つかった。第二セットの終盤、スパイクの着地の際に相手コートのブロッカーの足を踏み、右足首を捻ったらしかった。そのまま途中退場し、現在検査中のため負傷の程度は不明。試合後の監督の説明によれば、長期離脱するほどの大きな怪我ではないとある。記事にはさらに、選手やスタッフに両側から抱きかかえられた日向の写真も掲載されていた。眉間に皺を寄せた険しい表情が、壮絶な痛みを物語っているようで。大事ではないことにひとまず安堵したが、侑は小さなその写真からしばらく目が離せなかった。
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