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    賢者

    yutaxxmic

    DONEひか星3の展示品です。
    特性「ときめき」を元にしたお話。
    前の賢者様もちらりと出てきます。
    ときめき ふ、と意識が浮上する。少し首を反らして視線を机の上へと向ける。しっかりと閉めているはずのカーテンの端から僅かに光が漏れている。既に日は昇っているらしい。耳をすませば、誰かの声が聞こえてくるような気配がする。よもや自分が他人の存在を近くに感じる生活を再びすることになるとは思ってもみなかった。魔法舎で生活することが決まった直後はそうした生活に慣れず、厄介な厄災の傷に対する不安も相まって寝付くことが中々できない日々が続いていた。それが今ではすっかり熟睡することができるようになっている。それもこれもあの子──今の賢者が僕のことを気にかけてくれたお陰とも言えるだろう。いや、あの子は僕だけが特別という訳ではないことは分かっている。あの子は──真木晶という男は、賢者の魔法使い全てに等しく優しさを振り撒くのだ。そんな姿を見ると、少しだけちくりと胸の辺りが痛むようだった。賢者の魔法使いとして、この感情に名前をつけるべきではないことは明白だ。頭ではそう理解し、納得しているはずなのだけれど、前の賢者が僕に言ったことを思い出す。もう名前も、声も、顔も思い出すことができない前の賢者。賢者自身のことは忘れてしまったのに、授けてくれた知恵や言葉は覚えている。あの時はさもお見通しだとでも言うかのような物言いが不快でしかなかったが、今では彼のことが預言者のように思えてならない。──あいつの言葉に甘えてもいいのだろうか。そう考えながら食堂へ向かう身支度を整える。確か今日はあの子もこの魔法舎にいたはずだ。今までは足を運ぶことが憂鬱でしかなかった食堂への道中も、ネロの作った美味い料理と晶を一目でも見られるかもしれない期待で胸を満たせば、思わず足取りも軽くなってしまうようだった。
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    oki_tennpa

    DONE薄めのティカクロ
    2部直前に書きました。
    クロエのマナエリアの話。短め、雰囲気小説。

    クロエとラスティカの関係は変わってしまうかもしれないけど、幸せな時間がどこかにあると思うので。
    カプ感ほぼ無し。捏造賢者、死ネタ有ります。

    冒頭の詩は童謡「からたちの花」のパロディになります。
    春って暖かくて良いな~。
    春の水晶にヴィオレットは濡れてミモーザの花が咲いたよ。
    白い白い花が咲いたよ。

    「綺麗な歌だね。のんびりしてて、昼寝しながら聞きたい感じ。でもミモーザって黄色じゃない?白いのもあるの?」
    「おや、そうだったかな。賢者様の教えてくださった歌と混ざってしまったようだ。ミモーザは黄色だよ、クロエ」

    時計の針も仕事を忘れて、白蝶貝の盤面でうたた寝するような昼下がり。
    きぃんと澄んだ鉱石の、冬の空にはお別れをして、甘やかな木苺の春風と三拍子のステップを踏むころ。
    ラスティカとクロエは森で遊んでいた。
    寝不足のクロエは陽だまりの温もりに包まれ、船を漕いでいる。

    「ふわぁ……いつの間にかすっかり春になっちゃった。俺、そんなに出てなかったんだ」
    「どうだろう?僕は今朝眠っていて、ムルに起こされた時にはもう春だったよ」
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    すすき

    DOODLE魔法舎ブラカイ。
    最近めちゃくちゃ多忙なカインのことを賢者とブラッドリーが話してるだけ。

    「何かちょっとやばい気がするから、ブラッドリーちゃんあとよろしく!」
    「オズちゃんも気にしてたから早めにね!」
    どうぞ、と紙を差し出され、ブラッドリーは眉間に皺を寄せた。その表情に、あれと賢者が首を傾げる。
    「ブラッドリーが頼んだって聞いたんですけど…」
    「んなもん頼んでねえよ」
    ここ最近ブラッドリーが頼んだものと言えばフライドチキンぐらいなものである。それに賢者に何か頼むのならこんな回りくどいことはしない。必要ないと言い換えてもいい。
    つまり、賢者に嘘を吹き込んでこの紙を用意させた者がいる。
    「誰に言われた?」
    問いかければ、賢者も何かを察したのか途端に視線が泳ぎだす。その顔を見れば自ずと答えはわかる。案の定小さく呟かれた双子の名に、ため息を吐いた。
    「いいように遊ばれてんじゃねえぞ」
    「うう、すみません…」
    項垂れて小さくなった賢者の手から、紙を抜き取る。懲りずに双子に遊ばれた賢者に呆れはするが、それはそれとして何が書かれているかが気になった。あの二人がわざわざブラッドリーの名前を出してまで頼んだというのも引っかかる。
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