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    yutaxxmic

    @yutaxxmic

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    MAIKING #ふぁあきくん週間 お題の「バレンタインデーの後で」になります。
    「後で」のタイトルなのによりによって当日の話で前編として投稿させていただきます。(終わらない気がしてきたため、保険です……)
    バレンタインデーの後で⚠️2023年バレンタインデーボイス
    ⚠️前編です

     俗世を離れて四百年が経っていた。
     人里離れた嵐の谷で自給自足の生活。生業として呪い屋をしていたが特に具体的な報酬を設定していた訳でも無かったため、気味悪がって成功報酬を渡そうともせず隠れるように去っていく多くの依頼主の中に、時折なにを思ったか大金を置いていく者もあった。元々浪費をするような時代を生きていた訳でも性格でもなかったため、金銭は貯まっていく一方だった。
     それがどうしたことか。
     ファウストを取り巻く状況が一変してしまったのだ。半数の賢者の魔法使いを石へと変え、ファウスト自身にも命を落としかねない重傷を与え、厄介な傷痕を残していった厄災との戦いを機に拠点を嵐の谷から魔法舎へと移し、そこでの新しい生活が始まった。そして変わったことは生活の環境だけではなかった。これまでは時折顔を合わせるヒースクリフの面倒を見るだけだったのが明確に「先生」としての役割を与えられてしまったうえに、生徒は三人に増えていたのだ。
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    DONE10.15-16に開催される晶くんオンリー4にて出品予定のオメガバースのお話の前日譚というか、晶くん視点での導入部分です。オンリーに出品するものはファウスト中心の予定です。
    【ファ…α、あきら…Ω】が前提です。ご都合主義の細かい部分については出品予定の話に盛り込むつもりです。ファ晶♂推し以外の人には優しくない設定。
    以前Twitterに載せていましたが、こちらにはまだだったようなので再掲です。
    ファウ晶♂でオメガバ「この薬を複製できますか?」
    晶は静かに生きていくために不可欠な薬の、少なくなってしまった残りのひとつをフィガロに見せる。
    フィガロは手渡された錠剤を興味深そうに様々な角度から眺め、緩く首を振る。
    「賢者様も見たことがあるだろう?俺たちの世界ではミチルが作るようなものが薬なんだ」
    フィガロは失わないように、手の中の小さいものを晶の両手に握らせながら、それにと続けた。
    「形までは真似なくても成分さえ同じであればいいのだろうけれど、生憎とこれは複雑すぎて分析するには相当な労力がかかる」
    言葉を紡ぎながら、自分でも考えを纏めるような慎重な口調だった。
    「ムルに頼めば複製する機械を作って貰えるかもしれないけど、複製するためには相応の材料が必要だ。無から有を作れないってことは賢者様も分かるだろう?」
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    DOODLE480字の短いお話。今後増やしていくつもり。
    東の先生と賢者さま▼『手紙』2022.07.15
    近頃の晶はミチルが開く青空教室にルチルとリケの隣に椅子を並べて参加するようになったらしい。そこでこの世界の文字を学ぶことが基礎。学んだ言葉を用いて文を書くのが応用。そしてその文を添削するのが僕の役割らしい。この魔法舎に出入りする者の中にはもっと適任がいるのではないか、例えば書記官はどうだと僕は提案したが、クックロビンは忖度してしまうからよくないと返ってきた。晶曰く、何事もテキザイテキショなのだという。今日も晶は僕の部屋へ課題を手に来たのだろう。控えめなノックの音は好ましい。僕はその音に返事をすると、一拍置いてから静かに扉が開かれ、閉じられる。いつも以上に深々と頭を下げ両手で大切そうに紙を渡すものだから、僕もつられて仰々しく受け取ってしまう。紙面へ目を滑らせる。拙いながらも懸命に書かれた文字は愛おしさすら感じさせる。だが、紙に書かれた文字は今までの中で最も少ないものだった。その文面を理解したとき、僕は慌てて彼へ視線を移す。彼はまだ頭を下げていたが、どうやら顔の赤みを隠すためらしい。僕にもそれが伝播する。紙には「あなたをあいしてます」と書かれていた。
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    DONEひか星3の展示品です。
    特性「ときめき」を元にしたお話。
    前の賢者様もちらりと出てきます。
    ときめき ふ、と意識が浮上する。少し首を反らして視線を机の上へと向ける。しっかりと閉めているはずのカーテンの端から僅かに光が漏れている。既に日は昇っているらしい。耳をすませば、誰かの声が聞こえてくるような気配がする。よもや自分が他人の存在を近くに感じる生活を再びすることになるとは思ってもみなかった。魔法舎で生活することが決まった直後はそうした生活に慣れず、厄介な厄災の傷に対する不安も相まって寝付くことが中々できない日々が続いていた。それが今ではすっかり熟睡することができるようになっている。それもこれもあの子──今の賢者が僕のことを気にかけてくれたお陰とも言えるだろう。いや、あの子は僕だけが特別という訳ではないことは分かっている。あの子は──真木晶という男は、賢者の魔法使い全てに等しく優しさを振り撒くのだ。そんな姿を見ると、少しだけちくりと胸の辺りが痛むようだった。賢者の魔法使いとして、この感情に名前をつけるべきではないことは明白だ。頭ではそう理解し、納得しているはずなのだけれど、前の賢者が僕に言ったことを思い出す。もう名前も、声も、顔も思い出すことができない前の賢者。賢者自身のことは忘れてしまったのに、授けてくれた知恵や言葉は覚えている。あの時はさもお見通しだとでも言うかのような物言いが不快でしかなかったが、今では彼のことが預言者のように思えてならない。──あいつの言葉に甘えてもいいのだろうか。そう考えながら食堂へ向かう身支度を整える。確か今日はあの子もこの魔法舎にいたはずだ。今までは足を運ぶことが憂鬱でしかなかった食堂への道中も、ネロの作った美味い料理と晶を一目でも見られるかもしれない期待で胸を満たせば、思わず足取りも軽くなってしまうようだった。
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