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    オルト

    TRAINING22世紀蕎麦屋のタイカケ(小2×中2)
    中学潜入大作戦(後編)
    俺は、カケルを守る為に飛び出したのに、みんな優しい顔をしている。
    「キミ、面白いなぁ」
     一人男が俺たちの方に近付いてきた。カケルに触れるつもりか?!
     俺は身構えてソイツを睨んだ。相手の手が伸びる。やばい! そう思った瞬間、頭をわしゃわしゃと撫でられた。
    「コイツ、カケルの弟か?」
    「い、いえ! まぁなんというか、近所の……幼馴染って感じな子です!」
    「幼馴染っておめぇ……!」
     ただ幼馴染みたいに思ってたのか?! 俺たちは将来結婚するのに!!
    「タイガくん、もしかして、この間見たヤンキードラマ見て僕のこと心配してくれてるのかな?」
    「う……ん」
    「大丈夫。ここに呼ばれたのは、カツアゲとか喧嘩じゃなくて、委員会の仕事だよ」
    「……へ?」

     その後、美化委員だというカケルの仕事に付き合って、花壇の雑草を抜いたり、華の苗を植えたりした。委員会のひとたちに謝って、先生に見つからないようにランドセルを回収して学校を出た。学校に来ることしか考えてなかったので、駅で買えりの交通費がないことに気付いた。カケルが出してくれた。情けない。カッコ悪い。これじゃ、カケルに好きになってもらえない。
    「タイ 1230

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    TRAINING22世紀蕎麦屋のタイカケ(小2×中2)
    中学潜入大作戦(前編)
    カケルの学校に来た。中学に上がって、カケルはますます忙しくなったみたいで、最近店に来る時間が遅い。
    「一体高校で何してんだ……?」
     カケルの学校の場所は知っていた。電車で少し離れたところにある、凄く頭のいい学校。お小遣いで電車に乗って、カケルの様子を見に来た。カケルの話によると、そろそろ授業が終わる頃だ。こっそり学校に忍び込んで、カケルのことを探すんだ。
     校門を入ってすぐの植え込みに、ランドセルを隠した。
    「やべ」
     警備の人が近くを歩いている。身を屈めてソイツをやり過ごす。まだ見つかるわけにはいかない。鬼ごっこやかくれんぼで鍛えてんだ。こんなの、なんてことない。絶対大丈夫。俺は自分にそう言い聞かせ、校舎へ駆け込んだ。
     侵入は無事成功。どうやらまだ授業中。俺はそーっと、音を立てないように歩く。カケルの教室はどこだ? うろうろしてみるが、わからない。中学は俺の小学校と違って、教室がいっぱいある。カケルがA組なのは知っているけど、そのA組がどこかわからない。だったら……。
     俺は来た道を引き返し、下駄箱近くに身を隠した。ここで待って、カケルが出てくるのを見守ろう。でも、もし校舎の中で 1630

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    TRAINING22世紀蕎麦屋の成人タイカケ「うわぁ~! 風つよ~!」
     目を細めて、カケルは楽しそうに言った。砂埃や舞い上がる落ち葉でよく見えないけど、きっと綺麗な顔で笑っている。桜並木の間を並んで歩いていると、楽しそうな声を上げた高校生の集団が俺たちの横を駆け抜けていった。
     ふっと風が止んだのと同時に、カケルは立ち止まって彼らの方へ振り返った。
    「タイガくんも最近まであんな感じだったんだよなぁ」
    「いつの話してんだよ……」
     俺が高校を卒業したのはもう五年も前の話だ。それなのに、カケルはしょっちゅうつい最近のこと見たいに言う。俺が高校生の時のこと、中学生、小学生、幼稚園の頃の話もそうやってする。俺が物心ついてないことのことも。カケルの中で俺は、「あの頃」のまま止まっているのかも知れない。
    「ちっ」
    「あれ? どしたの? タイガくん」
    「べっつに。カケルにとって、俺っていつまでも子供なんだと思って」
    「え? タイガくんはもう大人でしょう? お酒だって飲めるし、免許も取ってるじゃない」
    「そういうことじゃねぇよ」
     先に歩き出した俺に、カケルが続く。いつだって一歩……いや、何歩も先の未来を歩いているカケルと並んで歩くなんて、出 1167

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    TRAINING22蕎麦屋のタイカケとメリナさん「誰だおめぇ!」
    「こら、タイガくん! そんないい方しないの!」
     カケルが連れてきた男に向かい、タイガはまるで忠犬が威嚇するような態度をとる。
     タイガの荒い声に、厨房からミナトが何事かと顔を出す。
    「タイガ、お客さんになんて態度を取るんだ」
    「だって!」
     タイガはそう言うと、カケルとカケルの連れてきた男の間に割って入った。
    「コイツ、カケルにべったりくっついて来た!」
    「タイガくん、コイツだなんて言わないで」
     カケルはタイガに視線を合わせ、困った顔をして言った。タイガが自分に懐いていることも、自分と親しい人になぜか牙を剥くことも、カケルは知っている。タイガがもっと幼い頃からそうだったから。でも、タイガを大事に思うからこそ、自分の身近な人とも親しくなって欲しかった。
    「タイガくんにも、この人とお友達になって欲しいから連れてきたんだよ」
     そう言われても、初めて会う男は自分よりもずっと大人で、カケルの隣に並ぶとバランスが取れているように見えて、タイガは悔しくて仕方なかった。
     カケルよりは背が低いが自分よりもずっと大きいその男。カケルはやはり、子供の自分よりもこういう男の方がいいの 1313

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    TRAINING22世紀蕎麦屋のタイカケ(高一×22歳)「なぁ、カズオ。いつになったらちゃんと俺と付き合ってくれんの?」
    「タイガ、くん……?」
     タイガくんの部屋で勉強を見ていてあげたら、突然床に押し倒された。俺の手首を押さえつける腕は、しっかりと筋肉がついている。あぁ、もうすっかり大人の身体なんだなぁ。ぷにぷにで可愛かったタイガくんは、もう過去の存在だ。
    「なぁ、もう俺の方が力も強いし、背だってあの頃よりずっと伸びた。もうすぐカケルのことも追い越すし……」
     俺を押さえつける手に力がこもる。
    「タイガくん、痛いよ」
    「あ、ごめん」
     タイガくんは力を緩めてくれるけど、その手を俺から話す気はないみたいだ。
     もうずっと、俺はタイガくんの気持ちから逃げている。いや、逃げているというか、まだ応えてはいけないと思っている。
    「タイガくん、あのね……」
     高校を卒業したら。ずっとそう答えてきているけど、タイガくんはどうにも納得してくれない。
    「なんで、卒業したらなんだよ?」
    「だからそれは……」
    「クラスの連中はもう付き合ってるヤツいるぞ?」
    「それは、同じ高校生同士とかでしょ?」
    「うん……」
     タイガくんは、しゅんと眉を下げる。
    「俺は大人で 1292

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    TRAINING22世紀蕎麦屋のタイカケ(6歳差)
    22世紀のタ、何百回でもプロポーズして欲しい。
    「カケル! なぁなぁなぁ!」
    「なぁに~?」
    「なぁ、こっち来て! 俺の部屋! 遊ぼ!」
    「食べ終わってからね~」
     カケルはへらへらして蕎麦を啜った。カケルがおれんちの蕎麦好きなのは嬉しいけど、自分が蕎麦に負けたみたいでなんか悔しい。
     俺はカケルの向かい側に座って、カケルを観察する。もうすぐ閉店の時間で、店の中にはカケルとカウンターに座るオッサン、片付けや明日の仕込みをしている父ちゃんだけ。あぁ、いっそ俺とカケルの二人きりだったらいいのに。
    「ん~おいし」
     カケルはいつも蕎麦と一緒に玉子焼きを注文する。凄く好きらしい。
    「そうかよ。おめぇ、ホント好きだよな」
    「うんっ! だ~いすき!」
     笑顔でそう言うカケルはめちゃくちゃ綺麗で可愛い。この笑顔をずっと傍で見ていたくて、俺がこの笑顔を守りたくて、前からカケルに「俺と結婚してくれ!」って言ってるのに、「まだ結婚出来る年齢じゃないよ」「大人になったらね」と笑って言われて誤魔化されている。確かに、まだ結婚出来る年齢じゃないってのはもうわかる。だけど、せめてコンヤクするとか、コイビトになるんなら、大人じゃなくても出来るだろ? カケルの持っ 819

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    TRAINING22世紀蕎麦屋のタイカケ。
    設定は9割捏造。6歳差。
    今日はタイガくんの成人式。高校の同窓会に参加していたタイガくんを迎えに行った帰り道、赤信号で停車した時にちらりと横を見た。お酒のせいかほんのり顔を赤くした袴姿のタイガくんが妙に大人っぽく見えた。
    「なんだか感慨深いなぁ」
    「あ?」
     ポツリと漏らした言葉に、タイガくんは不思議そうに首を傾げた。
    「いやぁ、タイガくんもいよいよ成人式か、と思ってね」
     あの小さかったタイガくんが。おねしょしたのを必死に隠そうとしたタイガくん。小学校の入学式の日、僕が中学に上がって一緒に学校に通えないと知って号泣したタイガくん。初めて作ったお蕎麦を僕に食べさせてくれてお蕎麦屋さんになると誓ったタイガくん。高校の卒業式の日、第二ボタンを僕に俺にプレゼントしてくれたタイガくん。
    「なにしんみりした顔してんだよ」
    「だってぇ。いつの間にか大人になっちゃうんだもん」
    「いつの間にかって……ずっとそばで見てただろ?」
    「それは、そうなんだけど……近くにいたからこそ気付かないことってあるじゃん」
     小さいころからずっとそばにいたから、いつまでもタイガくんを子供みたいに思ってたけど、もうちゃんと大人なんだよなぁ。
    「帰っ 1493

    Gym_the2nd

    DOODLE麦と元カノと夢の話。事後表現注意。

    少し前に書いたIF日常編のギムかんの話と若干繋がってます。
    灰色の雲の中を、必死に羽を傾けながら飛んでいく。鳴り響く雷鳴の響きを頼りに、先の見えない嵐の雨雲を切り裂いていく。甲高い風切り音と激しい雷雨に混じり、身を掠めていく鋼の欠片が自分を包む黒い羽を一枚一枚剥がしていく。どうにかして乱気流に耐え続けていた羽は長く続いた逃避行に耐えかねて、ついには嵐の海を潜っていくように暗雲の下へと沈んでいった。

     火花、光、轟音と悲鳴。眼下で絶え間なく続く争いの波紋をその身で受けながら先を急ぐ。理由は分からない。ただ、急がなければならないという想いだけが、満身創痍のこの身を奮い立たせる。

     地の裂ける音と共に、高く高く昇る爆煙が視界を遮る閉じた瞬膜の向こう。その先に見えたシルエットが、すでに悲鳴を上げていた全身に久方ぶりの高揚を与えた。

    やっと、たどり着いた。█████。あそこへたどり着ければ――

     探し続けた明かりに、思わず意識が緩む。その緩みの隙間を縫うように、パン、と一発の破裂音が響いた。

    「――――――!」

     声が出ない。腹部から背中へと突き抜ける痛み。耐えきれず羽ばたきをやめた身体は、煙たい大気の中を真っ逆さまに落ちていく。

    鈍い衝撃 1734