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    SF

    下町小劇場・芳流

    PAST大昔のロマサガ1小説。
    ちょっとだけグレイ✕クローディア。
    年越しの話。
    SF版ロマサガ1を前提にしているので、ミンサガとの矛盾、イメージ違いがあります。
    2004.1執筆。
    このジャンルの作品の中では、新しい方(待て)。
    十二の葡萄 年の瀬のメルビルは、普段の落ち着いた佇まいが嘘のように、賑わっていた。
     北が暑く、南が寒いこの地方では、年末は、夏の盛りである。
     惜しげもなく降り注いだ高い夏の日差しは、今はもう海の向こうに姿を消し、代わって街角を照らすのは、市民お手製のランプである。普段は家の中にしまいこまれている机や椅子を表通りに出し、仄かな灯かりとともにその上を彩るのは、秘蔵のワインにとっておきの魚や野菜。人々は思い思いの格好で、飲み、歌い、そしてちらちらと一定の方向に視線を向けていた。
     彼らの注視する先にあるのは、世界で唯一のエロール正神殿である。マルディアス十二神のうち、最高位に位置する神々の父エロール。それを祭った世界でただひとつの由緒正しい神殿は、森の中に屹立していた。そして、その聳え立つ宮の頂きには、これもまたこの街でただひとつの時計塔とともに、二つの月光を受けて輝く、荘厳な鐘が備え付けられていた。
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    りゅうひよこ

    DONE天才と名高い蔵色散人の遺作である人工知能・魏嬰。藍湛はそのAIに道ならぬ恋をしていた。元々彼は身体的な交わりに興味が薄く、恋人が肉体を持たないことを気にしていなかった。だが生物学者・莫玄羽が倫理規定を破り、蔵色散人とその夫の遺伝子を用いて人工胚から人間・魏嬰を産みだしてしまう回。🐰傾向:らぶらぶ♡ SFよくわかりません♡ 🐰スタンプもらえると喜びます♡
    科学者・藍湛×人工知能・魏嬰キッチンで湯が沸くのを待つあいだ、藍湛はひとりでに口もとがゆるむのを感じた。
    何年も思い続けてきた恋人を、はじめて抱きしめた次の朝なのだから仕方ないことだ。恋人が唇をねだってきたときの胸の高鳴りはいまだ治まることなく、藍湛の心を高揚させている。
    ポットとティーカップとマグカップをトレーに乗せて恋人のもとへ向かいかけたが、思い留まって玄関の鏡を見た。チノパンツにボタンダウンシャツというカジュアルな服装だが、襟が曲がっていないことを確かめてから寝室のドアを開けた。
    閉じたままのカーテンごしに朝陽が差し、ほのかに白く満たされた部屋へ入ると、ベッドの真ん中で白いブランケットに頭からくるまった人かげが座りこんでいるように見えた。
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    hanihoney820

    DOODLE円満和解壁崩壊後前提乱寂。
    宇宙に飛ばされそうになる先生と、なんとかしてそれを止めたい乱数のお話。
    エセSF(少し不思議)、暴力表現あり。その他なんでも許せる方向け。
    宇宙に行かなかった。88




    「それでは神宮寺寂雷殿、乱数のこと、くれぐれもよろしく頼みましたよ」
    「ええ、謹んで承りましょう」
    「ちょっとぉ〜? 僕のことペットかなにかみたいに扱うのやめてくんな〜い?」

     乱数の不満は「乱数(君)は黙っていてください!」という迫力のある二重奏に恙無く却下された。
     幻太郎に首根っこを掴まれ、そのまま寂雷に引き渡される姿は、まさに旅行前に預けられるペットそのもの。あまりに人権を無視された扱いに後ろにいる帝統に「ダイス〜! ヘルプ〜!」と助けを求めるが、彼は彼で「頼むからおとなしくしててくれ……」と頭を抱えていた。

     あの後──全国放送のニュースで乱数の過去が赤裸々に放送された後。笑ってばかりで埒があかない乱数を置き去りに、乱数のスマホを取り上げた幻太郎と寂雷との間で一通りの話がまとまったらしい。あんなことが報道された後だ。乱数の事務所なんて、数分と待たず数多の好奇心と悪意の格好の標的となる。だから急遽乱数は寂雷が身を隠すホテルで一時急場を凌ぐということで話がまとまったようだった。もちろん現在世間の注目を一身に集めるふたりを一纏めにするのに幻太郎も寂雷も躊躇いはあったようだが──曰く、「ひとりにすると何をやらかすかわからないから」。
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    hanihoney820

    DOODLE円満和解壁崩壊後前提乱寂。
    宇宙に飛ばされそうになる先生と、なんとかしてそれを止めたい乱数のお話。
    エセSF(少し不思議)、暴力表現あり。その他なんでも許せる方向け。
    宇宙に行かなかった。77




    「──こんなとこにいたのか」

     聞こえてきた声に、顔を上げた。そこにいたのは一郎で、あまり予想していなかった存在に素直に驚く。困ったように、でも優しく笑った彼はごく自然な動きで乱数の隣に腰を下ろした。地面に直接、何も敷くことなく道端に蹲る、乱数の隣に。

    「夢野さんと有栖川さんが、心配してたぞ」
    「うん……そっか、ごめん、もうこんな時間だったんだ。気付かなかったな」
    「はは、ぼーっとしてたのか?」
    「うん、ぼーっとしてた」

     乱数がこの場所に──一郎と描いていた未完成のグラフィティの前に来た頃、まだ周囲は明るかったはずだった。それなのに今辺りはとっぷりと日が暮れて真っ暗で、それなりに人通りもあるはずの道にも人っこひとりいない。いったい今は何時なのだろう、一郎は乱数を探してこんな時間にこんな所まで来てくれたのだろうか。だとしたらあまりに悪い、仮にも未成年をこんな時間まで──。反射的にそう考えかけて思い出す。一郎はもうだいぶ前に、成人を迎えたのだった。
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