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    hariyama_jigoku

    PROGRESS鍾タル小説。「一月のゾールシュカ」前編。公i子が帰国する話。続きはできたら…。.

    「先生のことが好きなんだよね」

     タルタリヤと食事を共にした帰路。今日は随分と話が弾み、互いに酒も進んでいた。日が落ちてから時間も経ち、人気のない道をチ虎岩から緋雲の丘へと歩く。
     その最中、丁度橋へと差し掛かった辺りで投げられた言葉が先のそれだった。
    「それは、愛の類いの話か」
    「まあ、愛よりも恋かな」
     飄々と答えるタルタリヤを、まじまじと見つめる。
    「理解はしたが」
     足を止めて言葉を切った。視線の先に映るタルタリヤは、くるりと振り返って笑う。平静と変わらない表情に見えた。
     鍾離に、もしくはモラクスの化身であった何者かに対して。愛または恋として伝えられた愛の言葉を、それを吐き出した相手の顔も記憶している。どんな表情でそれを語っていたのかも、だ。期待、焦り、絶望、諦念、憎悪、自信。大抵はそのようなものだったが、タルタリヤのそれは記憶の中にあるどれにも該当しないように見える。平静さは自信に思えないこともないが、それにしては鍾離の動向に注視しているようだった。鍾離が是と言うことを信じて疑わない、という風にはとても思えない。
     不可解なことだ、だがそれは鍾離には関係はなかった。 3983

    hariyama_jigoku

    DONE鍾タル小説。甘い。「煩い口なら塞いでしまえ」.

    「せーんせい」
     殊更に甘ったるい声。ぐいっと身を寄せて、鍾離の首に手を回した。すると、タルタリヤの腰に手が添えられて、僅かに鍾離がこちらに合わせて屈む。 タルタリヤはどこか満足げに笑みを浮かべて、目を閉じた。そのまま唇を押し付ける。
     最初の方は、こう上手くはいかなかった。どうにかタルタリヤからでは届かないからと言い含め、せめて屈んで欲しいと教えたのである。代わりにこちらはキスがしたいと示して欲しいとのことだったので、こうやって誘惑するような仕草を取ったりキスしたいと直接伝えることもあった。
     児戯のようにちゅ、ちゅ、とリップ音が跳ねる。曰くこういうことにはあまり興味をそそられなかったのだが、鍾離とのそれは脳を緩やかに浸す毒のようだとすら思った。熱く濡れた舌が下唇に触れ、乞われるままに薄く口を開く。あわいに挿し入れられた舌が、探るように口腔を撫でた。縺れるように舌先が擦り合わされると、びりびりと脳が痺れるように気持ちがいい。
     腰を抱かれて、寝台へと雪崩れ込んだ。口を離される合間合間に息を整えるが、追われるようなキスに体の力を解かれていく。タルタリヤから仕掛けたはずなのに、捕食 1659

    hariyama_jigoku

    DONE鍾タル小説。ボツなんだけどキスの日のSSということにしました。「仄かな夜」.

    「先生、好きだよ」
     そう初めて聞いたのは、食事の席でのことだった。

     新月軒で食事を取っている最中のこと、その日は公子が酒を呷るペースが妙に早かったことを覚えている。折を見て水を飲ませていたものの、肴を置き去りに杯だけを重ねるものだからすっかりと公子は潰れてしまっていた。個室で他人の目がない場所だったからだったのか、本人が突っ伏してしまっている以上真偽は定かではない。
    「公子殿」
     軽く肩を揺さぶっても、意味を成さない声が返ってくる。腕を枕に頭を横たえていて、時折目を瞬かせるもののその動きは酷く緩慢だ。顔も耳も朱に染まっていて、どうやって店から連れ出すべきかと思案する。
     ふと思い出して、己の財布を探った。が、見当たらない。当ては寝に伏している。流石にそんな相手の懐を探ることは憚られて、ツケを頼もうと椅子を引いた。すると立ち上がるかくらいのところで、公子の頭がゆらりと持ち上がる。起きてくれるならそれに越したことはない。会計をしたい旨を口に出そうとすると、赤い相貌がふわりと崩れる。眉を下げて、水を孕む瞳は深い青を蕩かした色をしていた。そして公子は口角を上げて、とっておきの秘密を 1844

    hariyama_jigoku

    DONE鍾タル小説。一発書き。「きらきら笑ったあなた」.

     踊るような一閃。流形の軌跡は大型のヒルチャールの首を、確かに斬り落とした。最後の敵を屠って、タルタリヤは水の刃を霧散させる。一体一体は歯応えのない相手であったが、十も二十も湧いて出てくればそれなりの運動にはなった。
    「じゃあちょっと二人はそれ踏んでてもらっていい?」
     歩み寄ってきた旅人が、タルタリヤと鍾離に問いかける。指差した先には何度か見たことがある、床から少しせり上がった円形の意匠があった。
    「先生の柱にお願いすればいいじゃん。俺もついて行こうか?」
     仕掛けをわざわざ踏んでいなくとも、鍾離がひょいひょいとそこらに立てる柱でも代替できる。それに今は秘境の中だ。わざわざ二手に分かれなくとも、と進言したのだが旅人は首を横に振った。
    「ちょっと素材を探しに行くだけだから大丈夫。それに、あんまり時間がかかって戻る扉が閉まっちゃう方が困るから」
     二人はちょっと休憩してて、と気を遣われてしまえばこちらは閉口するしかない。鍾離は旅人の頼みを真面目に遂行するつもりなのか、仕掛けを丁寧に足の下に敷いている。ひらひらと手を振ってタルタリヤがそれを見送ると、どこからともなく純水精霊が手に纏わ 3620

    ksk_gnsn

    DOODLE野営地の見張りを頼まれたタルタリヤが料理を作り、深夜に鍾離と酒を楽しむ話。前半はタルが料理を作ってるだけです。


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    「獣肉とトマト、それとニンジン……うん。材料は完璧だね」

     午後五時。テイワット有数の雪山とされるドラゴンスパインの麓の野営地にて、タルタリヤは食材と睨めっこしながらそう呟く。
     本来であれば旅人らと共に山に行きたかったタルタリヤなのだが、水元素では雪山に不利という理由で断られてしまい、野営地の見張り兼炊事担当を甘んじることになったのだ。当然、日々闘争を求めているタルタリヤは旅人の指示に不満を露わにしたが、タルタリヤに炊事を任せたいという一言を聞いたパイモンが「公子のご飯が食べられるってことだな!?」と目を輝かせたことで事態は一変した。

    『公子殿の手料理がどうかしたのか』
    『鍾離は食べたことがないのか?公子はこう見えても、料理が上手なんだぞ!』

     人一倍食に貪欲なパイモンは、以前タルタリヤが振舞った海鮮スープの味を思い出して涎を啜る。新鮮なカニを使ったスープは魚介の味がぎゅっと凝縮され、当時秘境帰りですっかり疲れていた旅人たちは思いもよらぬご馳走に目を輝かせたのだ。
     それからというもの。タルタリヤの料理を気に入ったらしいパイモンは、タルタリヤが旅人に同行するたび料理を作らないか 6325

    のくたの諸々倉庫

    MAIKING鍾タル 果たしてかみさまを愛してしまった、ということ以上の驚きが、この世界にあるのだろうかと考えたことがある。
    「おはよう、公子殿。どうしたんだ、そんな顔して」
    「……なんでもないよ、おはよう先生。朝ごはんできてるよ」
    「む、助かる。ありがとう、公子殿」
     けれど今、公子ことタルタリヤがその疑問に答えるとするならば「案外ある」だろう。何せ自分と同じくらいの背格好だったかみさま──鍾離の身長は今、その頃に比べて大分縮んでいた。
    (ほんと、人外っていうのはよく分からないよ)
     小さくなった手でもなお箸を使いこなし、タルタリヤの作った料理を幸せそうに頬張る姿は確かに、子供が好きなタルタリヤからすれば微笑ましいものだっただろう。だがそれはこの少年が鍾離ではない、という前提でのみ起こる思考であり。かつての恋人がそうなっている、なんて現実を受け止め切れていないタルタリヤは、ひっそりと息をつくばかりだった。
     ──仮初のものでこそあれ、朝の光が洞天内を照らす。鍾離がこうなってしまってからしばらく、タルタリヤはこの世界から出ていない。そして彼に世話されている鍾離もまた、塵歌壺の中でのんびりと暮らしている。
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