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    lyra_m

    PAST2022年公開、完売済みの同人誌「猫の日後遺症」
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18149545
    頒布時に無配でつけた小話です。一度支部でもまとめで公開しましたが、
    現在非公開中なのでこれだけでもお届け…!!


    ***
    猫のままでは済まないもので山姥切長義の恋刀の部屋には、二振りで並んで転がっても十分にくつろげる、巨大なクッションがある。今日も部屋を訪れたとき、部屋主――長義の恋刀でもある南泉一文字は、クッションに埋もれてぴすぴすと、愛らしい寝息を立てていた。ほっこりと目を細めつつも一応は礼儀のため、声をかけて。

    「入るよ、猫殺しくん。寝てるかな」
    「んにゃ…?寝てね……にゃ…」
    そうして長義は入室すると、転がる彼の懐へ、いそいそともぐりこんだ。まるで短刀のような甘え方だが、自分と彼との間では、すでにこれくらいは慣れたものなのだ。気づいてか無意識なのか南泉も、擦り寄る長義に腕を回して、髪に頬ずりをしている。

    二人して猫になってしまったあの日から、早くもひと月と半分が過ぎている。その間に二人の関係は、距離感を掴み損ねた古馴染みから、恋刀へと進展した。始まりが始まりだからか、いつだって二人の間の距離は近くて、それは長義にとって、とても嬉しいことだった。
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