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    こうちゃ

    waremokou_2

    DOODLEねやねがこうちゃをのむはなし
     前回までのあらすじ
     先日三毛縞が左腕を捻挫し、全治三日の絶対安静を言い渡される。それを聞いた黒柳は三毛縞に過激なまでの絶対安静を厳守させるのだった。

     昨日に引き続き、三毛縞の絶対安静を守らせる黒柳の態度は変わることがなかった。何が黒柳の琴線に触れたかはわからないが、とにかく三毛縞のせんとする家事や、子供の世話を率先して奪ってしまう。使用人に代わらせるのではなく、自ら進んで三毛縞から取り上げていくものだから、三毛縞も取り上げられた以上何も言えずに任せることとなった。車の運転も、モーニングコーヒーを淹れることも、子供の送り迎えも。三毛縞が動き出すと、いつの間にか黒柳が隣にいて〝何をしているんだ貴様〟から始まり、安静にしていろ、と三毛縞の前を歩く。珍しく二人で送迎に来たことに、照也と業はおおいに驚き、同時になんだか妙に楽しそうだった。悪くない、と思う。この共同生活が始まってから二人が顔を合わせる時間は圧倒的に増えたことは確かだが、こうして同じ物事を揃って協力することはあまりない。親子というより、共同家庭経営者と表現する方がずっと近かった関係だ。それが今三毛縞の知らない、想像でしかなかった〝家族〟という形に近づいているような気がした。
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    waremokou_2

    DOODLEDom/subパロディのねやね
    こうちゃのはなし
     たかが茶の一杯を淹れるため、どうしてこうも手間を掛けなきゃならんのだ。当初はそう呆れた三毛縞も、今や給仕の残したメモなしに黒柳の好む紅茶の淹れ方を覚えてしまった。当初こそ、突如発現した黒柳のドミナント性のコントロールに付き合うという関係性だったはずが、今や黒柳のダイナミクスは安定しており、コントロールにも問題ないどころか自らのダイナミクスを使いこなす様にまでなった。一方の三毛縞はと言えば、未だ命令にも、褒美を与えられることにも、仕置きをされることにも慣れずにいる。成り行きで結んだパートナーという関係性も、気づけば紆余曲折、三毛縞は黒柳から艶めいた黒革の首輪まで贈られ、今それは彼の首筋でくすむことなく輝き続けている。三毛縞の、パートナーのためだ、というのが、使用人をすべて解雇した黒柳の言い分である。無論、黒柳邸に尽くしてきた彼らは今、黒柳の口添えで新たな職場で活躍し、黒柳法律事務所の事務員として雇用され、また新たな分野で自らの夢を追いかけている。問題は、それまで家事などしたこともない三毛縞がそれらをいっぺんに任されたことだ。幸い、給仕たちは皆三毛縞に優しく、引き継ぎのための手記を残してくれていたものの、そのすべてを恙なく実行することはあまりにも大変すぎた。当初はもう、黒柳もろとも野垂れ死ぬんじゃないかと思うような問題の連続ではあったが、今――ぼんやりと考え事をしながらでも、完璧に紅茶を淹れられるようにまでなったことはもはや奇跡に近かった。
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