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    (´・ω・`)

    ( ˙👅˙ )

    PROGRESSかけない(´・ω・`)
    揺り籠の熱③ ベレスはディミトリの胸に触れた。もう片方の手は、腰に回って支えてくれている腕をそっと撫で上げた。たくましい腕がピクリと反応するのがわかる。胸に当てた手のひらには、回る車輪と同じくらい忙しく動き回る心臓の鼓動が伝わってきて、くすりと笑みが漏れた。こんなにも心配げに眉尻を下げて見つめてくるのに、こんなにも動揺している。それが妙におかしかった。
     微笑みながら、ベレスは腰に絡む腕をほどくと、ゆっくりと体を起こした。体と体の間にできた隙間に、車内のぬるんだ空気がひゅるりと入り込む。
     けして冷たくはないが、寂しい。
     体が離れて遠ざかる温もりの代わりにディミトリと視線を絡めたまま、ベレスはそっとディミトリの膝から降りた。ベレスの一挙手一投足を見守るディミトリの視線に心が震える。心とともに喉が震えるのを感じながら、たった今まで横抱きにされてつつましく足を画してくれていたくるぶしまで届く長い長い裾を大きく摘み上げれば、白い素足の太ももまでがあらわになって、ディミトリの目が大きく見開かれるのが分かった。ベレスを支えてくれていた大きな手は、その膝上でぎゅっと拳に握られている。それだけなのに、ディミトリが確かにベレスを意識してくれているのが分かって、なにかに耐えているのが分かって、ぞくぞくと沸き上がる喜びに思わず笑みが漏れる。
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