遙かなる時空の中で
百合菜
DONE「恋は苦く、そしてときには甘く」遙か7・幸村×七緒。
2021年2月7日、天野七緒中心WEBオンリーに合わせた書き下ろしです。
一足早いバレンタインネタをどうぞ~
弱々しいとばかり思っていた日差しが輝きを持っていることに幸村は気がつく。
「あれから一年か……」
七緒が神域に帰ってから約一年。季節の移ろいは彼にとって意味をなさないものとなっていたが、この季節だけははっきりと覚えている。
彼女が最後に見せた笑顔はこの光の強さとともに覚えていたものだったから。
思い出すと彼女の存在がここにないことに気がつき、辛くなるためどこかで彼女への想いを封印してしまいたい自分。一方で、近くにいなくても彼女が遠くの空から自分を見守っていることを信じ、いつまでも胸に留めておきたい自分。
そんなふたつの考えを持つ自分が鬩(せめ)ぎ合う一年であったともいえる。
ふと幸村は部屋の片隅に小さな箱が置かれていることに気がつく。
7244「あれから一年か……」
七緒が神域に帰ってから約一年。季節の移ろいは彼にとって意味をなさないものとなっていたが、この季節だけははっきりと覚えている。
彼女が最後に見せた笑顔はこの光の強さとともに覚えていたものだったから。
思い出すと彼女の存在がここにないことに気がつき、辛くなるためどこかで彼女への想いを封印してしまいたい自分。一方で、近くにいなくても彼女が遠くの空から自分を見守っていることを信じ、いつまでも胸に留めておきたい自分。
そんなふたつの考えを持つ自分が鬩(せめ)ぎ合う一年であったともいえる。
ふと幸村は部屋の片隅に小さな箱が置かれていることに気がつく。
starbirth-iori
INFOWEBオンリー合わせの新作です^^『君の瞳に映るのは誰?』阿国×七緒
阿国さんとお祭りデートする話^^ 前半は私が漫画を、漫画の続きを天音さんが小説として書いてくださっています♪
表紙と、1ページ目のサンプルをば!
気分だけでも本のつもりで!
続きは2/7のオンリー開催時間に内にピクシブにアップします^^ 2
starbirth-iori
DONEちまちま修正を加えつつ…ようやく完成!!^^*ちび絵もアニメ塗りも久々!!
2/7は『う7』にスペースいただきました!
新作は天音さんとの連作2本と、10の質問の回答が1本。…余裕があればプレイ感想のツッコミ4コマも描きたいけれど…難しいかな^^;
本の販売等は特になく、全てピクシブ公開です。
遙か7好きな方と交流できるのを楽しみにしています!
遙か7友達、いっぱいできるといいな~><
starbirth-iori
DONE阿国さんの温泉イベントの翌朝の話。誤字脱字を確認したらピクシブに置いてきます^^
ようやくデジタルで漫画描くのに慣れてきた気がするので、オンリー合わせの合作漫画に戻ります~^^ 5
starbirth-iori
DOODLEコミックスを見て…絵柄のすり合わせメモ!1:髪型!まるっこくてかわいい!小振りな伊達兵庫ということか!ポニテ位置で結って、そこからまるく広げるイメージ
2:3つのかんざし、丸じゃなくて、凝ったデザインになってる!!
3:後ろの紐はリボン部分より房が見えるように…
…と、この練習絵描いてたら、うっかり保存してない漫画下書き5ページが消えた…orz
悔しいからさっきより良いもの描いてやるっ!!
starbirth-iori
DOODLE「確かに…お売りしたのはワタシたちデース。でも…使ったのはアナタたち、でショウ?」みたいな感じで、兵器を売りつけて、相手がどうなろうとも自己責任デショみたいな感じで冷酷に突き放してほしい!←どんな願望
ところで、カピタン、高校で使ってた歴史資料集にちゃんと載っててびっくり!(カピタン・モールとして)
戦国時代、ちゃんと勉強しておけばよかったなぁ^^;←このころから平安末期が好きだった
starbirth-iori
DOODLE原稿の休憩に落書き^^全身描いていたんだけれど、ここだけ切り抜いてほっておいたら、うっかり保存し忘れてとじてしまった…orz いいんだ…落書きだから…(涙)
さて!子どもたちが起きてくるまであと30分!!どこまで進められるかな><!
すみお
PAST体験版をプレイして見事にハマりました。大正時代の和と洋の雰囲気が大好きなので、シナリオにも雰囲気にも満足させて頂きました。
遙かシリーズは6しかプレイした事が無いのですが、この作品の主人公は可愛いだけでなく凛としている子ばかりなのでしょうか。素敵で憧れます。そんな訳で遙か7もちょっと気になっています。
ダリウスの紳士的であり精神的に脆い部分が好きです。梓さんと幸せになってくださいませ。
百合菜
MAIKING遙か4・風千「雲居の空」序章
風早ED後の話。
豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……
※不定期更新です
雲居の空:序章今年も穏やかな春の光が豊葦原を包み込む季節がやってきた。
たんぽぽの綿毛を飛ばしている千尋を見て、この平和がずっと続くことを風早は願わずにはいられない。
何度歴史を変えても起こる戦。
その運命がようやく変わり、今まで見たことない史実が生まれようとしている。
千尋の何気ない仕草はそんな平和の証のようにも思えた。
「何、見てるのよ、風早!」
「いえ、姫があまりにも可愛いもので」
「もう、そんなことばっかり」
相変わらず恥ずかしいことをしれっと口にする風早に対し、千尋は姉、一ノ姫の婚姻が近づいていることを思い出す。
以前から姉が懇意にしている羽張彦は優れた武官として名を馳せており、また家柄も申し分ない。
愛する人と国を守ることができるということで姉はかつてない美しい表情を見せていた。
1542たんぽぽの綿毛を飛ばしている千尋を見て、この平和がずっと続くことを風早は願わずにはいられない。
何度歴史を変えても起こる戦。
その運命がようやく変わり、今まで見たことない史実が生まれようとしている。
千尋の何気ない仕草はそんな平和の証のようにも思えた。
「何、見てるのよ、風早!」
「いえ、姫があまりにも可愛いもので」
「もう、そんなことばっかり」
相変わらず恥ずかしいことをしれっと口にする風早に対し、千尋は姉、一ノ姫の婚姻が近づいていることを思い出す。
以前から姉が懇意にしている羽張彦は優れた武官として名を馳せており、また家柄も申し分ない。
愛する人と国を守ることができるということで姉はかつてない美しい表情を見せていた。
starbirth-iori
DOODLE原稿の合間に…平島殿^^今週末は平島殿の漫画を描こうかと!…思いっきり捏造だけれど(苦笑)
平島殿について、出ている情報が少なすぎて…(TT)そもそもおいくつでいらっしゃるのか…そこだけでも知りたいっ!!
百合菜
PAST遙か1・頼あか。「名前で呼んで」
出会ったばかりのあかねと頼久の話。「源頼久と申します」
そう名乗りながらあかねの目の前に現れたのは、自分より頭ひとつ分違う身長に、鍛え上げられた体躯を持つ少し年上と思われる男性の姿だった。
見慣れない装束、そして腰に差しているのは刀なのであろうか。
これらを見ていると、やはり自分はどこか見知らぬ場所に連れてこられたという事実が現実のものとして迫ってくる。
だけど、何が起こったのか、自分はどうすれば元の世界に帰ることができるのか、見当がつかなかった。
リュウジンノミコとして召喚されたらしいが、普通の高校生である自分にそんな役割が任せられただなんて信じられない。
この先、どうするべきか誰かに聞いておきたかった。
「あの…… 源さん、でしたっけ?」
武骨そうに見え、むしろ寡黙に見える。
しかし、その瞳は嘘偽りがないということを信じることができる。
初めて会ったのに、あかねはなぜか目の前の男性のことを信じることができた。
すると、
「み、神子殿……!」
目の前の頼久と名乗る男性がうろたえているのが目に入る。
「どうしたのですか? 源さん」
そう、問いかけるあかねに対し、頼久は困ったように髪をかきあげる。
「で 1575
百合菜
PAST遙か1・頼あか。2018年のバレンタイン創作。「頼久さん、これあげる」
そう言ってあかねが手渡したのは丁寧にラッピングされた小さな箱。
そのときのあかねの様子が頬を赤らめていてかわいいと思いつつも、ありがたく頼久は受け取る。
今日は2月14日。
いたって普通の平日のはずだが、あかねは前もって頼久にデートの約束を取りつけてきた。
龍神のいたずらで現代の世界において就くことになった仕事はあるが、幸い、水曜日のため、早めに帰っても咎められない空気だった。
そして、冒頭に至る。
「開けてもいいですか?」
あかねがこっくり頷くのを確認してから頼久は包装紙を丁寧にはがす。
中から現れたのは茶色の固まり。
―確かちょこれーと、とか言ったはず。
少し前にあかねに教えてもらった知識と目の前の物体が同じものであることを確認する。
確か甘い味がするため、そんなに好みではなかった。
そして、あかねもそのことを知っていたはず。
しかし、わざわざそれを渡してくること、そしてそれを渡してくるのに、頬を赤らめる理由がわからなかった。
「今日はバレンタインだから」
「ばれんたいん、ですか?」
聞き慣れぬ言葉を繰り返して尋ねる。
少し前からあちこちで耳 1881
百合菜
PAST遙か1・頼あか。「はっぴー・ばれんたいん」
2018年2月にネオロマの世界に戻ってきてすぐに書いた話です。立春を過ぎたとは言え、まだ暖かいとは言いがたい日が続く。
あかねはコートを着て、マフラーも手袋もきちんと身につけた。
でも、日差しは少しだけ春に近づいているのがわかる。
そんな中、あかねは最愛の人と会えると思うと心はますます暖かくなっていった。
学校の授業が終わり、待ち合わせの場所に行くためあかねは昇降口で靴を履き替えていた。
あの京の世界から戻り、半年とちょっと。
あのとき、運命をともにする約束をした頼久はこの世界に馴染むため、そして生活の手段として職についている。
いずれあかねがそれ相応の年齢に達したときに迎えられるようにするため。
二人の待ち合わせは駅前のカフェ。
あかねが店内に入るとそこには頼久の姿が目に入った。
長い足を邪魔くさそうに椅子からはみ出しているのが、あかねにはなぜかかわいく見えてしまう。
「頼久さん!」
「みこ……あかね」
ちょっと油断していると、いまだに京の世界にいたときの呼称で呼びかねない頼久だが、あかねの怪訝な顔つきですぐに訂正する。
「ごめんなさい。来てもらって」
頼久の目の前にあるカップの飲み物はほとんどなくなり、湯気も消えている。
おそらく 2150
百合菜
MAIKING遙か3・望美→将臣の話。いつか書くかもしれない話の一部。「よお、久しぶり」
屈託のない笑顔を見せながら夏の熊野に現れた幼馴染。
心の奥に小さな痛みを感じながら、望美はそんな彼に笑顔を向ける。
「将臣くん、久しぶり! まさか、こんなところで会えるなんてね」
そう、近所のコンビニで同級生と会ったのとはわけが違う。
いくら京と熊野は関わりがあるといっても、戦乱のさなかゆえ今日から熊野へ訪れるには時として命を掛ける必要もある。
もしかすると、ここでふたりが出会うのは深い理由があるのかもしれない。
あるいは避けられない運命なのかもしれない。
どんな事情であれ、今は将臣と行動をともにすることができるのが望美にはうれしかった。
熊野で将臣と過ごす期間は思いのほか、長くなりそうだった。
なぜなら望美たちも将臣も同じ場所を目的地としていたが、さまざまな障害により、たどり着くのが困難だったからだ。
遠回りをすることにした先で滞在することになった勝浦。
しばらくここに留まることとなり、自由時間を持つことができた。
久しぶりに波の音を近くで聞きたくなり、望美は浜辺へ行くことにした。
「よお、そこにいたのか」
浜でしゃがみ込みながら波を見ていると、幼いこ 2600
百合菜
PAST遙か3・白龍と望美の話「将臣くん、誕生日おめでとう」8月12日、勝浦。
熊野川の怨霊の件は解決していないが、焦ったところで解決できるものでもない。
歯がゆい気持ちを抱えつつ、その憂さを晴らすべく、一行は将臣の誕生日にかこつけ宴を開いていた。
「兄さん、こんなものしか出せないけど」
そう言いながら出したのはプリン。
弾力と柔らかさのバランスがちょうどよく、プルンとしていて、見るからに美味しそうだ。
「おおっと。これは譲特製の蜂蜜プリンじゃないか。相変わらずうまそーだな」
「ありがとう。もっとも飲んでばかりの兄さんの口には合わないだろうけど」
「別に俺だけが食べるわけでないからよ、気にするな」
そんな兄弟の会話を横目に、プリンを初めて見る白龍は目を輝かせている。
また、朔や景時も言葉にはしないが、一刻も早く口にしたがっている様子がうかがえる。
そして、譲にうながされ一同はいただきますの声とともにプリンを口にする。
こちらの世界にはない甘い味覚。
想像していた以上の味わいに舌鼓を打つ。
プリンを食べ終える頃、白龍が隣にいる望美にこっそりと尋ねた。
「神子、誕生日って、何?」
望美は白龍の目をし 1680
百合菜
MOURNING遙か7・大七「恋の足音」
リアル身内からのリクエストで大七を書いたときの作品です。
高校2年生ももう少しで終わり。
街に遊びにいった七緒と大和だが、帰りに雨に降られてしまい……。
7の少し前に大和への恋心を意識する七緒ちゃんの話。 1063
百合菜
PAST遙か6・有梓「恋心は雨にかき消されて」
2019年有馬誕生日創作。
私が遙か6にはまったのは、猛暑の2018年のため、創作ではいつも「暑い暑い」と言っている有馬と梓。
この年は気分を変えて雨を降らせてみることにしました。
おそらくタイトル詐欺の話。先ほどまでのうだるような暑さはどこへやら、浅草の空は気がつくと真っ黒な雲が浮かび上がっていた。
「雨が降りそうね」
横にいる千代がそう呟く。
そして、一歩後ろを歩いていた有馬も頷く。
「ああ、このままだと雨が降るかもしれない。今日の探索は切り上げよう」
その言葉に従い、梓と千代は足早に軍邸に戻る。
ドアを開け、建物の中に入った途端、大粒の雨が地面を叩きつける。
有馬の判断に感謝しながら、梓は靴を脱いだ。
「有馬さんはこのあと、どうされるのですか?」
「俺は両国橋付近の様子が気になるから、様子を見てくる」
「こんな雨の中ですか!?」
彼らしい答えに納得しつつも、やはり驚く。
普通の人なら外出を避ける天気。そこを自ら出向くのは軍人としての役目もあるのだろうが、おそらく有馬自身も責任感が強いことに由来するのだろう。
「もうすぐ市民が楽しみにしている催しがある。被害がないか確かめるのも大切な役目だ」
悪天候を気にする素振りも見せず、いつも通り感情が読み取りにくい表情で淡々と話す。
そう、これが有馬さん。黒龍の神子とはいえ、踏み入れられない・踏み入れさせてくれない領域。
自らの任 1947
百合菜
PAST遙か6・有梓「私は幸せだから」
こちらの世界にやってきた有馬と銀座を歩く梓。
そこでふとしたひと言とは……「寒くなってきましたね」
そう言いながら梓は隣を歩く有馬に話しかける。
銀座の街は銀杏の葉が金色に輝き、もうじき寒い冬がやってくることを伝えてくる。
ふたりでこうして一緒に歩いていると思い出す。
風景は違えど、帝都の銀座でこうして歩き、街を守っていた日々を。
しかし、あのときは自分たちだけではなく、千代や秋兵たちもいた。
「みんな、元気かな……」
思わずそんな言葉が口から出てしまう。
しまったと思ったときには遅かった。
隣にいる有馬が何か言いたげに梓のことを見つめてきた。
「ごめんなさい、そういうつもりでは……」
他意はない。
ただ、隣にいる人にこの言葉を向けると必要以上に責任を感じることは、少し考えればわかりそうなものなのに。
「すまない」
その言葉が指しているのが何であるか。はっきりとは伝えていないが、何であるか梓は理解した。
自分を守るために神子の力を使った。
そのために仲間たちとは別れの挨拶すらできなかった。
仕方がないとわかっているが、名残惜しい気持ちはどこかにある。
「一さんが謝る必要はないです」
こちらの世界とあちらの世界。どっちみち、どちらかを選ばない 820
百合菜
PAST遙か6・有梓「今日も帝都の空は澄んで」
有馬と出会って二度目の夏。
結婚を控えた梓。休憩中に空を見上げて、つい気負ってしまう。そんな梓に対し、有馬は……
Twitterに投稿した2020年有馬さん誕生日創作です。「今日も天気がいいですね」
「ああ」
一さんと出会ってから訪れる二度目の夏。
そして迎える二度目の一さんの誕生日。
右手の薬指にはめられた指輪が窓から差し込む光を反射し、壁に小さな虹を描く。少し前に一さんに渡された指輪。秘かに、こっそりと、でも周りにはバレバレな様子で待っていたプロポーズの言葉とともに。
来週、一さんと私は富山に行く。一さんのご実家に、結婚式を挙げるために。式の準備はほとんど終えており、あとは身一つで行くだけ。
去年の今頃には想像すらしていなかった今の状況がくすぐったくなることもある。
でも、これはきっと私たちがひとつずつ着実に絆を積み重ねてきた証なのだろう。そして、そこに至るまでたくさんの人たちの助力があったからこその関係。
「去年よりも空が澄んでいる気がしますね」
一さんは暑さなどものともせずコーヒーカップに口をつけ、飲み干す。それもホットのブラックコーヒーなところがなんだか一さんらしい。
「ああ、そうだな。龍神に見守られているような安心感があるな」
恵みの光をたたえる空。
いつまでも眺めたくなるような蒼。
穢されたくないと思わせるような透明感。
去年の今 1095
百合菜
PAST遙か2・頼花「たとえこの手が穢れていても(後編)6.この手は血で穢れている~前編
「頼忠さん、市に行きたいので、お供をお願いできますか」
一通りの愛を交わしたあと、花梨が頼忠にそうお願いしたのは、先ほどのこと。
頼忠はあっという間に身支度を整え、そして花梨に従い屋敷を出る。
これだけ見ているとどちらがこの家に住むものなのかわからない
「今日は、どちらにうかがいましょうか」
和気あいあいというには、ちょっとかしこまっているのかもしれない。
だけど、出会ったときよりは確実に縮まっているふたり。
少し遠くから見れば、従者とともに出歩いている姿だが、近くで見れば逢瀬にしか見えない。そんな独特の空気を持つふたり。
しかし、そんな仲睦まじいふたりの様子を氷のように研ぎ澄ました瞳で見つめるものがいた。微笑ましい、そんな空気を一蹴するかのような冷たい眼差しで。
「花梨殿、私から離れないでいただけますか?」
頼忠が花梨にそう話しかけてきたのは、必要なものはほぼ揃い、そろそろ帰ろうとしたときだった。
「はい。でも、どうしたのですか? 急に」
頼忠はそのことには答えない。
もしかすると、自分が口を開くことで邪魔になるかもしれないので、花 6803
百合菜
PAST遙か2・頼花「たとえこの手が穢れていても(前編)」プロローグ
「それ、花梨からの文か?」
「ええ、河内で元気にしているようですわ、兄上」
千歳の住む屋敷に勝真が訪れたのは秋も深まったある日のこと。
貴族の女性らしく、めったに表情を崩さない千歳であるが、その日はほんのわずかではあるが口角が上がっているのが見てとれた。
そして、手にしていたのは文であることから、差出人が花梨であると気づいたようである。
「あいつら、いろいろあったけど、元気にやっているみたいだな」
「そうですね」
千歳の言葉を聞きながら勝真は簾のかかった室内から空を仰ぐ。
空の色をはっきりと認識することはできないが、おそらく彼女の笑顔を思い出させる澄みきった青空が河内まで広がっているであろう。
「もう二度と会うことは叶わないでしょうけど…… でも、会いたいわ、花梨」
聞こえるか聞こえないか。そんな千歳の呟き。
返事を待っているわけではないだろうが、勝真もつい答えてしまう。
「そうだな、俺ももう一度会いたいぜ。あいつらに」
そして、思い出す。
花梨たちと京を守るために奮闘した日々と、そしてそのあとの花梨と頼忠を取り囲むちょっとした事件のことを。
ーーーーーー 8597
百合菜
PAST遙か7・幸七「後朝(きぬぎぬ)」
上田から九度山に向けて長い旅がはじまった幸村たち。
七緒はいまだに幸村への気持ちを自覚していないが、最初の宿場町で幸村と夫婦に間違えられてしまい!?
「同じ部屋。しかも布団はひとつ。きゃー、どうしましょう」な話を書く予定が、思いの外真面目な話に。
※肝心のシーンはぼかしていますので、ご了承ください
※内容の都合上、中学生以下の閲覧はお控えください
※再録です 4242
百合菜
PAST遙か7・幸七「華胥之夢(かしょのゆめ)」
七緒と再会した幸村。
そこには予想もしなかった者たちもいて!?
※再録です
蒼い空。
そしてあたり一面に青い花の絨毯が広がる神域。
会いたいと、抱きしめたいと、そして、想いを伝えたいと願ってやまなかった人の姿がそこにはあった。
どんなに想いを伝えても、どんなにくちびるを交わしても、胸の奥底から溢れてくる想いは留まることを知らない。
空白のときを一刻でも早く埋めてしまいたい気持ちと、ここには永遠のときが流れているから焦らなくてもいいと自分に言い聞かせる気持ち。
ただ、いずれにせよ、『独り』でないことが今はただただ嬉しかった。
「そろそろいいかな……」
「待ちくたびれたぜ」
ふたりしかいないと思っていた神域の静けさを割るような声。
現れたのはふたりの子どもたち。男の子と女の子がひとりずつ。
男女というにはまだ年が満ちていないが、背格好からすると童というにも無理がある。
2891そしてあたり一面に青い花の絨毯が広がる神域。
会いたいと、抱きしめたいと、そして、想いを伝えたいと願ってやまなかった人の姿がそこにはあった。
どんなに想いを伝えても、どんなにくちびるを交わしても、胸の奥底から溢れてくる想いは留まることを知らない。
空白のときを一刻でも早く埋めてしまいたい気持ちと、ここには永遠のときが流れているから焦らなくてもいいと自分に言い聞かせる気持ち。
ただ、いずれにせよ、『独り』でないことが今はただただ嬉しかった。
「そろそろいいかな……」
「待ちくたびれたぜ」
ふたりしかいないと思っていた神域の静けさを割るような声。
現れたのはふたりの子どもたち。男の子と女の子がひとりずつ。
男女というにはまだ年が満ちていないが、背格好からすると童というにも無理がある。