帰り道
suzumi_cuke
MOURNING鯉月。樺太帰り道の杉リパ(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14554097)のオマケで前に書いた短いやつ。193話後くらい。賑やかしに置いておきます。怪我してるから血の臭いがするのか人殺しだから染み付いているのか、どちらにせよ良いことではない193話後くらい むくりと音もなく起き上がると、鯉登はかぶっていた上着を手に月島の枕元に立った。
寝台に手をつくと、聞こえるか聞こえないかといった程度に軋む音がして、耳聡く月島が薄く目を開けた。自分の顔を覗き込んでいる鯉登に気がついて、不審そうに眉をひそめる。
鯉登は真顔で見下ろしていた。
「寒くて眠れんだろう」
ぼそりと低い鯉登の呟きに、月島はしょぼ、と瞬くと億劫そうに答えた。
「……さっきまで寝てましたが……」
「一緒に寝てやる」
「いえ結構で」
「狭いな。少し詰めろ」
「話を聞かない……」
上着をばさりと月島がかぶっている毛皮の上にかけると、鯉登は寝台にあがった。鯉登に押しやられ、どう考えても定員を超えている寝台に月島は鯉登と並んで横になった。鯉登と壁に挟まれながら、月島はとにかく心を無にしてこの時間をやり過ごそうと決めた。決めた矢先に、鯉登が月島のほうに身体を向けてきた。吊ったままの腕を広げる。
1032寝台に手をつくと、聞こえるか聞こえないかといった程度に軋む音がして、耳聡く月島が薄く目を開けた。自分の顔を覗き込んでいる鯉登に気がついて、不審そうに眉をひそめる。
鯉登は真顔で見下ろしていた。
「寒くて眠れんだろう」
ぼそりと低い鯉登の呟きに、月島はしょぼ、と瞬くと億劫そうに答えた。
「……さっきまで寝てましたが……」
「一緒に寝てやる」
「いえ結構で」
「狭いな。少し詰めろ」
「話を聞かない……」
上着をばさりと月島がかぶっている毛皮の上にかけると、鯉登は寝台にあがった。鯉登に押しやられ、どう考えても定員を超えている寝台に月島は鯉登と並んで横になった。鯉登と壁に挟まれながら、月島はとにかく心を無にしてこの時間をやり過ごそうと決めた。決めた矢先に、鯉登が月島のほうに身体を向けてきた。吊ったままの腕を広げる。
90murmur
PROGRESS🎋📿文|初めてタッグを組んだ日の帰り道 ビルによって日陰差す路地裏が、悪事の掃き溜めになったのはいつからか。地に伏す幾数十体の男たちを眺めながら、簓は胸ポケットから煙草を取り出した。フィルターを食み、ライターの火を灯す。燃え移った炎は男の肺へ煙を運び、数拍を置いた後、呼吸とともに煙は鋭く吐き出された。
「いやぁ、派手にやられたなぁ」
最後まで立っている、という意味では勝利。しかし手放しに喜べるとは言い難い、ほろ苦い勝ち星だ。
隣に座りこむ赤髪の青年は明らかに青あざやら擦り傷だらけで、全身の負傷が見て取れる。口の中も切れたのだろう、吐き捨てた唾には赤色が滲んでいた。
「テメェのラップが軽すぎんだよ」
不満たっぷりに青年が愚痴る。そりゃいつも組んでるキミの相棒と比べたらなぁ、と脳裏を過ぎる返答はそのまま胃の中へ飲みこんだ。細い瞳をいっそう緩めて「何言うてんねん、俺のフォローがなきゃお前もっと攻撃もろてたで!」とその赤髪を手加減なしに掻き撫でれば「痛ぇわ!」と手を弾かれる。しかし尖っていた唇が吊り上がっているところを見ると、この返しが正解。
1285「いやぁ、派手にやられたなぁ」
最後まで立っている、という意味では勝利。しかし手放しに喜べるとは言い難い、ほろ苦い勝ち星だ。
隣に座りこむ赤髪の青年は明らかに青あざやら擦り傷だらけで、全身の負傷が見て取れる。口の中も切れたのだろう、吐き捨てた唾には赤色が滲んでいた。
「テメェのラップが軽すぎんだよ」
不満たっぷりに青年が愚痴る。そりゃいつも組んでるキミの相棒と比べたらなぁ、と脳裏を過ぎる返答はそのまま胃の中へ飲みこんだ。細い瞳をいっそう緩めて「何言うてんねん、俺のフォローがなきゃお前もっと攻撃もろてたで!」とその赤髪を手加減なしに掻き撫でれば「痛ぇわ!」と手を弾かれる。しかし尖っていた唇が吊り上がっているところを見ると、この返しが正解。
べろす丼
DONE木曜なのでアナログどんべな絵塗りは透明水彩なながくし村への帰り道をふたりでいったら…な今日のどんべちゃんもひかりさま今から後編の周年描くので描き終わるまでこの絵が後編34周年絵の暫定的な物で…何とか早くに仕上げたい…yui_ame_o
DONE夏の京都主従2夏の用事の帰り道、源一郎を案じる浮葉。
秋の別れ。
強いひと 暑い日だった。
日中の最高気温は四十度に達する見込みだと朝のニュースで耳にしたのを思い出し、源一郎はわずかに眉をひそめて視線を上へ向けた。
遠くにそびえたつ入道雲は新雪のように輝いているのに、頭上にたたえられた空は海のように涼やかなのに、照りつける陽ざしはじりじりと肌を焦がしていく。その熱を、まとわりつく湿気が封じこめて逃さない。
浮葉から持つように言いつかった風呂敷包みの重みは、普段なら気にならないていどのものだ。けれどこの暑さのなかではしだいに煩わしくなってくる。それでも、いや、それだからこそ源一郎は大切に腕に抱えなおした。
以前は御門家と懇意にしていた家からの、返却物だった。衣純が存命の頃、なにかの催し物で使いたいといわれて器を貸したことがあったのだという。送ってもらえば良いのではないか、先方から届けてもらえば良いのではないか、と思うが、そうもいかないらしい。
4092日中の最高気温は四十度に達する見込みだと朝のニュースで耳にしたのを思い出し、源一郎はわずかに眉をひそめて視線を上へ向けた。
遠くにそびえたつ入道雲は新雪のように輝いているのに、頭上にたたえられた空は海のように涼やかなのに、照りつける陽ざしはじりじりと肌を焦がしていく。その熱を、まとわりつく湿気が封じこめて逃さない。
浮葉から持つように言いつかった風呂敷包みの重みは、普段なら気にならないていどのものだ。けれどこの暑さのなかではしだいに煩わしくなってくる。それでも、いや、それだからこそ源一郎は大切に腕に抱えなおした。
以前は御門家と懇意にしていた家からの、返却物だった。衣純が存命の頃、なにかの催し物で使いたいといわれて器を貸したことがあったのだという。送ってもらえば良いのではないか、先方から届けてもらえば良いのではないか、と思うが、そうもいかないらしい。
lily__0218
DONE本編189章の帰り道の燃晩。※189章までのネタバレを含みますので、ご注意ください。
【燃晩】みをつくし あわい紅色の膜が、ふたりを世界から切り取っている。
天幕を降ろすように地へと落ちる雨の音と、四つの踵が青石を叩くちいさな音が響いていた。ひどい雨の日の早朝、いつもは多くのひとで賑わう無常鎮の街道からは、帰路を急ぐふたつの息づかいしか感じられない。
墨燃は、すこし先を歩く楚晩寧の背を静かに追いかけていた。薄い膜越しに見える世界はおぼろげで、輪郭の曖昧なひかりが流れては消えていく。ふたりの間に、特別な言葉はない。ただ照れくささのなかに仕舞いこまれた、いとおしさだけが存在している。なにかから逃れるように前を行く彼は、宿を出てからというもの一度だって墨燃を振り返ることはなかった。あいらしい後頭部がちいさく上下する姿が、視界の端でちらちらと揺れる。たったそれだけのことで墨燃の心臓は早鐘を打ち、その振動に促されるように、甘い蜜が胸の奥底からじわじわと染み出してくる。
3339天幕を降ろすように地へと落ちる雨の音と、四つの踵が青石を叩くちいさな音が響いていた。ひどい雨の日の早朝、いつもは多くのひとで賑わう無常鎮の街道からは、帰路を急ぐふたつの息づかいしか感じられない。
墨燃は、すこし先を歩く楚晩寧の背を静かに追いかけていた。薄い膜越しに見える世界はおぼろげで、輪郭の曖昧なひかりが流れては消えていく。ふたりの間に、特別な言葉はない。ただ照れくささのなかに仕舞いこまれた、いとおしさだけが存在している。なにかから逃れるように前を行く彼は、宿を出てからというもの一度だって墨燃を振り返ることはなかった。あいらしい後頭部がちいさく上下する姿が、視界の端でちらちらと揺れる。たったそれだけのことで墨燃の心臓は早鐘を打ち、その振動に促されるように、甘い蜜が胸の奥底からじわじわと染み出してくる。
tela_jikkyouetc
DONE月の綺麗な夜だった。青い満月見たさに、遠回りをした帰り道。
月が雲で隠れ色濃くそまった暗闇に、”ソレ”は突如現れた。
街灯の向こう、蠢く巨大な影。
それは何かと目を凝らそうとした瞬間、男の声が響き、
井上カニパーティー
DOODLE【体調不良ネタ】一族の何か集まりのようなものがあったとして、それに礼装で行き、無事何事も無く終わったものの、繊細な次男のストレスがマッハ。家まで持たず帰り道で滅茶苦茶体調を崩す(長男三男予測済み)…というやつ(?)好き放題しました
enjiji
DOODLE洋三赤ずきんパロ妄想。赤ずきんみっちゃんが安西せんせいのお家からの帰り道に不良の動物達に絡まれてて、それを助けた狼洋平くん。そこでみっちゃんが一目惚れして、よへくんのところへ足しげく通って猛アタックするのです✨
torinokko09
DONE1月「雪遊び、帰り道、電話」一燐ワンドロまとめて掲載 単品でも読めるようにした連作自主企画でした
「ったく、なァんでお前らはそう・・・」
燐音は新年早々頭を抱えていた。向かいには正座をさせた弟と、葵兄弟。三人がしょんぼり顔でこちらを見上げているが、燐音は出てくるため息を抑えられなかった。
「はぁ」
「ごめんよ兄さん・・・」
「いや、もういいけどさァ・・・なんで葵兄弟の分まで俺なワケ?」
「そこはコズプロの縁でしょ」
にかっと笑うひなたの顔を軽くデコピンし、またひとつため息をついた。
先生がいなくなった空き教室の椅子にまたがるように座っていた燐音は、机に置いてある没収したバナナを見た。濡れているそれは、夢ノ咲学院の隅にあったと言う。なんでも、年末に大雪が降ったせいで雪かきのアルバイトを募集したらしい。それに手を挙げたのがくだんの3人。やっているうちに楽しくなったのだろう、校庭の、教師が普段来ないような場所で葵兄弟が雪山を作り始めた。それに一彩が注意しに来たところを有耶無耶にして巻き込んだと言う。
7726燐音は新年早々頭を抱えていた。向かいには正座をさせた弟と、葵兄弟。三人がしょんぼり顔でこちらを見上げているが、燐音は出てくるため息を抑えられなかった。
「はぁ」
「ごめんよ兄さん・・・」
「いや、もういいけどさァ・・・なんで葵兄弟の分まで俺なワケ?」
「そこはコズプロの縁でしょ」
にかっと笑うひなたの顔を軽くデコピンし、またひとつため息をついた。
先生がいなくなった空き教室の椅子にまたがるように座っていた燐音は、机に置いてある没収したバナナを見た。濡れているそれは、夢ノ咲学院の隅にあったと言う。なんでも、年末に大雪が降ったせいで雪かきのアルバイトを募集したらしい。それに手を挙げたのがくだんの3人。やっているうちに楽しくなったのだろう、校庭の、教師が普段来ないような場所で葵兄弟が雪山を作り始めた。それに一彩が注意しに来たところを有耶無耶にして巻き込んだと言う。