おもち
TRAININGPsyBorg。夜と朝の間の時間。暑くて寝苦しい夜だった。一度眠ったはいいけれど睡眠は細切れで、水を飲みに部屋を出たのはまだ夜明けまでずいぶん時間がある頃だった。
冷蔵庫から出した冷たい水をゴクゴクと飲むと体の中が冷えて心地良い。空になったペットボトルをゴミ箱に捨て、買い溜めてあるぬるい水のペットボトルを冷蔵庫に補充した。
まだ夏が始まったばかりなのに昼間だけでなく夜まで冷房をつけるとなると電気代が……。俺ははぁとため息を吐いて寝室に戻り、なかばヤケクソで冷房のスイッチを入れた。ベッドに横になり、しばらくすると部屋の中は涼しくなった。
これなら朝まで続けて眠れるだろうとホッとしたが、動いたせいかすこし眠気が遠ざかっていて、時計で時間を確認した俺は枕元に置いてあるスマホを手に取った。履歴から簡単にその名前を見つけ出しスマホを耳に当てる。
1720冷蔵庫から出した冷たい水をゴクゴクと飲むと体の中が冷えて心地良い。空になったペットボトルをゴミ箱に捨て、買い溜めてあるぬるい水のペットボトルを冷蔵庫に補充した。
まだ夏が始まったばかりなのに昼間だけでなく夜まで冷房をつけるとなると電気代が……。俺ははぁとため息を吐いて寝室に戻り、なかばヤケクソで冷房のスイッチを入れた。ベッドに横になり、しばらくすると部屋の中は涼しくなった。
これなら朝まで続けて眠れるだろうとホッとしたが、動いたせいかすこし眠気が遠ざかっていて、時計で時間を確認した俺は枕元に置いてあるスマホを手に取った。履歴から簡単にその名前を見つけ出しスマホを耳に当てる。
途綺*
DONE🐑🔮//夜空を想う日常のひとコマ。今夜は満月なので夜空に想いを馳せて。
「今日が満月って知ってたか?」
夜の散歩から帰ってきたふーふーちゃんが、玄関で出迎えた俺にハグをするなり唐突な質問を投げかけてきた。
「ううん、だからこんなに外が明るかったんだ」
「あぁ、よく晴れてるから余計に」
満足したのか俺の身体を離してドッゴの脚を拭くふーふーちゃんの横を擦り抜けて空を見上げれば、そこにはまんまるのお月様が浮かんでいた。
「どうりで星の声が静かだと思った」
一等星を除いて月明かりに姿を隠している星々は、まるで後ろに引っ込んでこちらをそっと見ているかのようだった。
「…浮奇には星の声が聞こえるのか?」
目を丸くしてこちらを見てくるふーふーちゃんに、俺は首を傾げた。
「言ってなかったっけ」
「初めて聞いたぞ」
2398夜の散歩から帰ってきたふーふーちゃんが、玄関で出迎えた俺にハグをするなり唐突な質問を投げかけてきた。
「ううん、だからこんなに外が明るかったんだ」
「あぁ、よく晴れてるから余計に」
満足したのか俺の身体を離してドッゴの脚を拭くふーふーちゃんの横を擦り抜けて空を見上げれば、そこにはまんまるのお月様が浮かんでいた。
「どうりで星の声が静かだと思った」
一等星を除いて月明かりに姿を隠している星々は、まるで後ろに引っ込んでこちらをそっと見ているかのようだった。
「…浮奇には星の声が聞こえるのか?」
目を丸くしてこちらを見てくるふーふーちゃんに、俺は首を傾げた。
「言ってなかったっけ」
「初めて聞いたぞ」
おもち
TRAININGPsyBorg。大学生の朝。俺のものじゃないアラームの音で眠りから覚めた。薄く目を開けて手を伸ばし枕元を探ったがそこにスマホは見つからない。
「んん……うき、うき……んっ、浮奇、おまえスマホどこだ?」
体を起こし顔にかかる髪を適当にかき上げた。俺の横で猫のように丸まって眠っている浮奇の肩をぐらぐらと揺らすとうざったそうに手を払われる。
朝の浮奇はたいてい不機嫌で、寝起きが悪い。分かっているけれどこのアラームを止めなければ結局彼の睡眠を妨げてしまう。
「浮奇、スマホ、アラーム鳴ってる。……ていうかおまえ今日三限からだろ? なんでアラーム鳴らしてんだ?」
「んぅ……すまほ……じゅうでんき……」
「充電器……あった」
ベッドの下、すぐそこのコンセントに充電器が刺さってそれがスマホに繋がっていた。浮奇に覆い被さるようにしてスマホを拾い上げ、アラームを止める。ようやく静かになった部屋の中に安心してふぅと息を吐いた。
1512「んん……うき、うき……んっ、浮奇、おまえスマホどこだ?」
体を起こし顔にかかる髪を適当にかき上げた。俺の横で猫のように丸まって眠っている浮奇の肩をぐらぐらと揺らすとうざったそうに手を払われる。
朝の浮奇はたいてい不機嫌で、寝起きが悪い。分かっているけれどこのアラームを止めなければ結局彼の睡眠を妨げてしまう。
「浮奇、スマホ、アラーム鳴ってる。……ていうかおまえ今日三限からだろ? なんでアラーム鳴らしてんだ?」
「んぅ……すまほ……じゅうでんき……」
「充電器……あった」
ベッドの下、すぐそこのコンセントに充電器が刺さってそれがスマホに繋がっていた。浮奇に覆い被さるようにしてスマホを拾い上げ、アラームを止める。ようやく静かになった部屋の中に安心してふぅと息を吐いた。
にこ:)
DOODLE🐑🔮/オーダーメイドヴェール「世界一可愛いって言ってもらいたいの!」
お友達🎭出ます🙏(🔗🎭)
🔗🎭のお話↓のヴェールについて詳しく書きました。順番どちらでも大丈夫です。
https://poipiku.com/8013418/8917367.html 3494
おもち
TRAININGPsyBorg。夜のお散歩に行く話。人目がないほうが触れ合うことに抵抗がないのは俺も浮奇も同じだった。友人の距離でしかいられない外でのデートより、家の中に篭る率のほうが高くなるのも必然。そしてルームシェアをしている浮奇のところより一軒家で愛犬と暮らしている俺の家のほうが都合がいいのも考えるまでもないことだった。
夕方に家に来た浮奇はもう使い慣れたうちのキッチンで夕飯を作ってくれ、夜は狭い風呂に乱入してきて、俺の髪を乾かしたあとはその倍以上の時間をかけてスキンケアを済ませ、まだ眠るには早い時間に俺をベッドに引っ張り込んだ。
日付が変わる頃、夜の散歩を抜かしてしまったことに不服を訴える愛犬が寝室のドアを引っ掻き、パッと起き上がった俺の腕を浮奇が掴んだ。俺を見上げる彼に顔を寄せて瞼にキスを落とす。
1809夕方に家に来た浮奇はもう使い慣れたうちのキッチンで夕飯を作ってくれ、夜は狭い風呂に乱入してきて、俺の髪を乾かしたあとはその倍以上の時間をかけてスキンケアを済ませ、まだ眠るには早い時間に俺をベッドに引っ張り込んだ。
日付が変わる頃、夜の散歩を抜かしてしまったことに不服を訴える愛犬が寝室のドアを引っ掻き、パッと起き上がった俺の腕を浮奇が掴んだ。俺を見上げる彼に顔を寄せて瞼にキスを落とす。
おもち
TRAININGPsyBorg。初めてのお泊まりの話。初めてのお泊まりは、どうしようもないハプニングのせいで突如決行された。
ある日俺と友人がルームシェアをしているアパートが雨漏りをして、工事に一週間ほどかかると大家さんに伝えられた。工事の間はアパートを空けなければならない。
友人はすぐ職場の人に連絡を取って近くに住んでいる後輩の家に泊めてもらえることになったと俺にピースサインを作って見せたけれど、俺はといえば飼い猫も一緒に寝泊まりできて配信もできる環境なんてホテルだとしても探すのは難しい。
ひとまずマネージャーさんに配信がスケジュール通りに行えないかもしれないことと現状を伝え、最低限の荷物をキャリーバッグに詰めながら毎日電話をしている恋人のふーふーちゃんに電話をかけた。
6467ある日俺と友人がルームシェアをしているアパートが雨漏りをして、工事に一週間ほどかかると大家さんに伝えられた。工事の間はアパートを空けなければならない。
友人はすぐ職場の人に連絡を取って近くに住んでいる後輩の家に泊めてもらえることになったと俺にピースサインを作って見せたけれど、俺はといえば飼い猫も一緒に寝泊まりできて配信もできる環境なんてホテルだとしても探すのは難しい。
ひとまずマネージャーさんに配信がスケジュール通りに行えないかもしれないことと現状を伝え、最低限の荷物をキャリーバッグに詰めながら毎日電話をしている恋人のふーふーちゃんに電話をかけた。
おもち
TRAININGPsyBorg。演劇部パロ。演劇部のことよく知らないのでなんか雰囲気で適当に書いてます。彼の声が好きだ。ステージ上から体育館の一番後ろの隅っこまでハッキリ届く力強い声。演技は苦手だって謙遜するのに照れたり逃げたりせずに演じ切るところも好き。舞台映えする体の使い方や目を離せない繊細な表情は俺を惹きつけてやまない。
彼に見惚れているうちに演目は終わり幕が閉じていく。俺は後ろの扉を薄く開けて体育館を出ると足早に部室へ向かった。
鍵を開けて部室に入り、パチパチと電気をつける。衣装用のラックはハンガーだけが乱雑にかけられていた。俺はそれを向きを揃えて整え、座りやすいように椅子の間隔をあけ、空調を強めに効かせる。
部室の準備が整う頃にちょうどよく廊下から足音と話し声が聞こえてきて、俺は扉に手をかけみんなを迎え入れた。
2711彼に見惚れているうちに演目は終わり幕が閉じていく。俺は後ろの扉を薄く開けて体育館を出ると足早に部室へ向かった。
鍵を開けて部室に入り、パチパチと電気をつける。衣装用のラックはハンガーだけが乱雑にかけられていた。俺はそれを向きを揃えて整え、座りやすいように椅子の間隔をあけ、空調を強めに効かせる。
部室の準備が整う頃にちょうどよく廊下から足音と話し声が聞こえてきて、俺は扉に手をかけみんなを迎え入れた。
おもち
TRAININGPsyBorg。アイドルパロ。カプとしては一応さいぼぐだけど、マネージャー👟とアイドル🔮が仲良く話してるだけです。「ふーふーちゃんと一緒がいい」
「一緒の仕事も入れてるじゃん。明日は四人一緒だからふーちゃんもいるし、今日の夜はふーちゃんの家に行くんでしょ?」
「……じゃあちゃんとシュウがついてきてよ。現場に一人、やだもん」
「ええ……? 他のマネージャーとスケジュール確認してみないとなんとも言えない」
「じゃあ断って」
「浮奇〜」
フンッとそっぽを向く浮奇に僕は苦笑を浮かべた。浮奇のわがままには慣れっこだけど、今日は特にご機嫌斜めみたいだ。
僕のデスクの椅子は彼が座って長い足を組むと撮影セットのようにかっこよく見える。浮奇は不機嫌な顔も需要があるから、いま写真を撮ってSNSに上げればまあまあ良い数字になるだろう。
「もう話は終わりでいい? 野菜を買って行きたいからふーふーちゃんの家の前にスーパー寄って」
1669「一緒の仕事も入れてるじゃん。明日は四人一緒だからふーちゃんもいるし、今日の夜はふーちゃんの家に行くんでしょ?」
「……じゃあちゃんとシュウがついてきてよ。現場に一人、やだもん」
「ええ……? 他のマネージャーとスケジュール確認してみないとなんとも言えない」
「じゃあ断って」
「浮奇〜」
フンッとそっぽを向く浮奇に僕は苦笑を浮かべた。浮奇のわがままには慣れっこだけど、今日は特にご機嫌斜めみたいだ。
僕のデスクの椅子は彼が座って長い足を組むと撮影セットのようにかっこよく見える。浮奇は不機嫌な顔も需要があるから、いま写真を撮ってSNSに上げればまあまあ良い数字になるだろう。
「もう話は終わりでいい? 野菜を買って行きたいからふーふーちゃんの家の前にスーパー寄って」
おもち
TRAININGPsyBorg。甘えて甘やかして甘やかされるらぶらぶなさいぼぐが好き。『検査でサイボーグパーツの一部に問題が見つかった』
そう言ってふーふーちゃんはサラダを食べた。あんまりいつも通りの口調だったから俺は作業をしながら「へぇ」と返して、数秒経ってから「うん?」と手を止めた。いま、なんて?
「問題? 異常があったってこと?」
『ああ。それでパーツを取り替えなければいけないんだが、俺のこの体はそこらへんで直してもらえるようなものじゃないんだよ』
「ふーふーちゃんどこか行っちゃうの?」
『いや、俺がどこかに行くんじゃなく、足だけ外してそれを直してくれる人のところに送るんだ。だから、配信はしばらく休むことになる。ただの休暇ってことにするから他のメンバーには特に言わないけど、浮奇には伝えておこうと思って』
3829そう言ってふーふーちゃんはサラダを食べた。あんまりいつも通りの口調だったから俺は作業をしながら「へぇ」と返して、数秒経ってから「うん?」と手を止めた。いま、なんて?
「問題? 異常があったってこと?」
『ああ。それでパーツを取り替えなければいけないんだが、俺のこの体はそこらへんで直してもらえるようなものじゃないんだよ』
「ふーふーちゃんどこか行っちゃうの?」
『いや、俺がどこかに行くんじゃなく、足だけ外してそれを直してくれる人のところに送るんだ。だから、配信はしばらく休むことになる。ただの休暇ってことにするから他のメンバーには特に言わないけど、浮奇には伝えておこうと思って』
途綺*
DONE🐑🔮//月明かりに舞う眠れない月夜にダンスを踊る話。時間があれば ”So This is Love” を聴きながらお楽しみください。
眠りについていた意識が浮上する感覚に抗うように寝返りを打って隣の温もりを探す。伸ばした手が空を切って冷たいシーツへ触れたことで、ファルガーはゆっくりと目を開けた。
「…ぅき?」
確かめるように呼んだ声は掠れて暗い部屋に溶ける。一緒にベッドに入ったはずの浮奇はいつの間にか抜け出したらしく、ぼやけた視界に映るベッドはもぬけの殻だった。まだ暗さに慣れない瞳を瞬きながら手探りでスマホを探して時間を確認すれば、強い光を放つ画面が表示する時間に瞠目して、ファルガーはそっとベッドを抜け出した。
「浮奇」
電気も付けずにカーテンだけを開け放ったリビングに差し込んだ月光が、ソファで膝を抱える浮奇を照らしている。ぼんやりとしていたのかファルガーの声に弾かれたように肩を揺らした浮奇が、困ったような顔でゆっくりと振り返った。
1880「…ぅき?」
確かめるように呼んだ声は掠れて暗い部屋に溶ける。一緒にベッドに入ったはずの浮奇はいつの間にか抜け出したらしく、ぼやけた視界に映るベッドはもぬけの殻だった。まだ暗さに慣れない瞳を瞬きながら手探りでスマホを探して時間を確認すれば、強い光を放つ画面が表示する時間に瞠目して、ファルガーはそっとベッドを抜け出した。
「浮奇」
電気も付けずにカーテンだけを開け放ったリビングに差し込んだ月光が、ソファで膝を抱える浮奇を照らしている。ぼんやりとしていたのかファルガーの声に弾かれたように肩を揺らした浮奇が、困ったような顔でゆっくりと振り返った。
akikane_cosplay
DONEPsyborg 🐑🔮 左右気にせず読めます⚠️死ネタ/ナチュラルに同棲中
新衣装のアンクレットに狂ってしまいました
ミサンガじゃないような気がしないでもないけど全て妄想・捏造なのでなんでも大丈夫な方だけ読んでネ
ミサンガが切れたら薄く開いた窓から流れ込む冷ややかな風が、じんわりと汗の滲んだ背中を走り抜けてゆく火点し頃。
キッチンで夕飯の準備をしながら食卓を挟んだ向こうにあるリビングに目をやると、愛しのサイボーグが珍しく眼鏡をかけて何やら真剣そうに金属の指を動かしている。暇さえあれば文字を追いかける本の虫だった彼だが、最近はああしているところを見る機会が増えた気がする。彼の姿を視界に入れながらも手は動かしていたはずだが、ふと彼がどうしたんだ?というような微笑みをこちらに向けたことで己の手が止まっていたことに気が付いた。
「ごめんね、邪魔しちゃった」
そう言って途中だった盛り付けを終え、皿を食卓に運んだ足でファルガーの元へ向かえば、作業の手を止めて両手を広げてくれる愛しい彼。遠慮なくその胸に納まると、彼の冷たくて大きな手に優しく撫でられた。
6070キッチンで夕飯の準備をしながら食卓を挟んだ向こうにあるリビングに目をやると、愛しのサイボーグが珍しく眼鏡をかけて何やら真剣そうに金属の指を動かしている。暇さえあれば文字を追いかける本の虫だった彼だが、最近はああしているところを見る機会が増えた気がする。彼の姿を視界に入れながらも手は動かしていたはずだが、ふと彼がどうしたんだ?というような微笑みをこちらに向けたことで己の手が止まっていたことに気が付いた。
「ごめんね、邪魔しちゃった」
そう言って途中だった盛り付けを終え、皿を食卓に運んだ足でファルガーの元へ向かえば、作業の手を止めて両手を広げてくれる愛しい彼。遠慮なくその胸に納まると、彼の冷たくて大きな手に優しく撫でられた。
おもち
TRAININGPsyBorg。暑い日でもくっついていちゃいちゃしてる推しかぷは最高。仕事を終えてリビングへ行ったが、浮奇と愛犬が二人して見当たらない。散歩にでも行ったのかとソファーに腰掛けたところで他に誰もいないはずの家のどこからか物音が聞こえた。
恐る恐る音をたどって開いていた窓から顔を出してみると、庭で浮奇が花の植え替えをしているようだった。きっと愛犬は日焼け対策で帽子を被った浮奇を散歩に行くんだと勘違いしてついて行きそのまま一緒に外にいるのだろう。
「ちゃんと水分補給はしてるか?」
「わっ! ……びっくりしたぁ。仕事終わったの?」
「ああ。何か手伝うか? 飲み物を入れてこようか」
「お疲れ様。飲み物お願いしてもいい? キンキンに冷たいやつ」
「了解」
家の中に戻りキッチンでグラスにたっぷりの氷とお茶を入れていると、パタパタと足音が近づいてきて愛犬が顔を出した。ハッハッと息をする様子を見て空になっていた彼のボウルに水を入れる。すぐに勢いよく飲み始めたからホッと息を吐き、水分が必要であろうもう一人にもグラスを届けに行った。
1360恐る恐る音をたどって開いていた窓から顔を出してみると、庭で浮奇が花の植え替えをしているようだった。きっと愛犬は日焼け対策で帽子を被った浮奇を散歩に行くんだと勘違いしてついて行きそのまま一緒に外にいるのだろう。
「ちゃんと水分補給はしてるか?」
「わっ! ……びっくりしたぁ。仕事終わったの?」
「ああ。何か手伝うか? 飲み物を入れてこようか」
「お疲れ様。飲み物お願いしてもいい? キンキンに冷たいやつ」
「了解」
家の中に戻りキッチンでグラスにたっぷりの氷とお茶を入れていると、パタパタと足音が近づいてきて愛犬が顔を出した。ハッハッと息をする様子を見て空になっていた彼のボウルに水を入れる。すぐに勢いよく飲み始めたからホッと息を吐き、水分が必要であろうもう一人にもグラスを届けに行った。
おもち
TRAININGPsyBorg。新衣装寄りのイメージでいちゃいちゃ。わりと🔮🐏。昨日の浮奇の配信がいつもより長かったことはアーカイブに表示される数字を見れば明らかで、開始時間から考えて眠ったのは朝方、もしかしたら俺が起きるほんのちょっと前くらいだったかもしれなかった。
朝食と散歩を済ませて配信を始めるまでの間の時間、俺は寝室に戻ってベッドの上で丸くなる浮奇を見つめた。浮奇が丁寧に手入れをして伸ばしていた髪はもうすっかり長くなって、シーツの上に広がるそれを見ていると少し鼓動が早くなる。一房持ち上げて指先に巻きつけ、柔らかなそれにそっと口付けた。ぐっすり眠って体と心を休められるようにと、祈りを込めて。
浮奇にふーふーちゃんも似合うと思うよと勧められるまま俺も髪を伸ばしてみてはいるが、浮奇のように毎日時間をかけることはなかなかできず、昨日もドライヤーをせずに寝てしまったせいで爆発したような寝癖がついていた。適当にひとつに結べば誤魔化せるのはいいけれど配信をやるには気が抜けすぎている。
3940朝食と散歩を済ませて配信を始めるまでの間の時間、俺は寝室に戻ってベッドの上で丸くなる浮奇を見つめた。浮奇が丁寧に手入れをして伸ばしていた髪はもうすっかり長くなって、シーツの上に広がるそれを見ていると少し鼓動が早くなる。一房持ち上げて指先に巻きつけ、柔らかなそれにそっと口付けた。ぐっすり眠って体と心を休められるようにと、祈りを込めて。
浮奇にふーふーちゃんも似合うと思うよと勧められるまま俺も髪を伸ばしてみてはいるが、浮奇のように毎日時間をかけることはなかなかできず、昨日もドライヤーをせずに寝てしまったせいで爆発したような寝癖がついていた。適当にひとつに結べば誤魔化せるのはいいけれど配信をやるには気が抜けすぎている。
おもち
TRAININGPsyBorg。服屋の店員うきとバーテンふちゃ。いつも同じものしか書かない😅夕陽を反射して眩しいショーウィンドーに並ぶのは馴染みのない洒落た服を着たマネキンで、それらが俺には一生買うことのないような信じられない金額の服であることは想像に容易い。いつものようにチラとそれを見るだけで通り過ぎようとした俺は、目の前のガラス扉が開いて金持ちそうな女性が出てきたのを慌てて避けて「すみません」と声を上げた。驚いて立ち止まったその女性の後ろから出てこようとした人が「わっ」と小さく叫んで、自分の声を恥じるように口元を押さえて「ごめんなさい……」と謝る。
「すみません、大丈夫ですか?」
「ええ、私は大丈夫。ごめんなさいね浮奇くん、急に立ち止まってしまって驚いたでしょう」
「いえ、ごめんなさい大きい声を出しちゃって……ふふ、びっくりしたぁ。お兄さんもすみません、わざわざありがとうございます」
2148「すみません、大丈夫ですか?」
「ええ、私は大丈夫。ごめんなさいね浮奇くん、急に立ち止まってしまって驚いたでしょう」
「いえ、ごめんなさい大きい声を出しちゃって……ふふ、びっくりしたぁ。お兄さんもすみません、わざわざありがとうございます」
おもち
TRAININGPsyBorg。お姫様&王子様呼びし合ってるのでそういうの大丈夫な方だけどうぞ。アラームより先に目覚めて体を起こそうとした俺は、腰に巻き付く腕に動きを遮られて持ち上げた頭を再び枕に落とした。
「……うき」
起こす気の全くない小さな声で恋人の名前を呼ぶ。すやすやと穏やかな寝顔を見せる浮奇に無意識のうちに笑みを浮かべそっとその頬を撫でた。
手入れの行き届いたきめ細やかな肌はいつまでも触れていたいほどに柔らかく気持ちいい。ふにっと頬をつまんで、「うきき」ともう一度名前を呼んだ。
ほら、今日は起きなきゃいけない日だろう。そのために昨日はいつもより早くベッドに入って眠ったんじゃなかったか?
早起きが苦手で寝起きの悪い恋人を起こすのは俺の大好きな任務だった。顔を近づけて、香水なんてついていないはずなのに甘くおいしそうな浮奇の匂いを吸い込む。
1969「……うき」
起こす気の全くない小さな声で恋人の名前を呼ぶ。すやすやと穏やかな寝顔を見せる浮奇に無意識のうちに笑みを浮かべそっとその頬を撫でた。
手入れの行き届いたきめ細やかな肌はいつまでも触れていたいほどに柔らかく気持ちいい。ふにっと頬をつまんで、「うきき」ともう一度名前を呼んだ。
ほら、今日は起きなきゃいけない日だろう。そのために昨日はいつもより早くベッドに入って眠ったんじゃなかったか?
早起きが苦手で寝起きの悪い恋人を起こすのは俺の大好きな任務だった。顔を近づけて、香水なんてついていないはずなのに甘くおいしそうな浮奇の匂いを吸い込む。
おもち
TRAININGPsyBorg。スパイスのためモブ♀が出てきますがただのモブです。待ち合わせの駅を出るとぱらぱらと雨が降っていた。天気予報は晴れのはずだったからにわか雨だろう。傘なんて持ってきていなかった俺は近くの店の軒下に駆け込んで、濡れた髪を手で軽く押さえつけた。
「駅ついたよ。雨大丈夫?」と待ち合わせ相手にメッセージを送って、そのままそこで待つことにした。驚くくらい周りをよく見ているくせに自分のことには少し無頓着な人だから、この程度の雨なら全然気にしてないかも。
でも俺が雨に濡れないように、一緒にいる時は少しの雨でも傘をさしてくれるんだ。彼のさす傘の中でくっついて歩くのが好きだった。外ではいつも触れないような距離を保ってるけど、雨だから仕方ないって言い訳ができる。
相合傘をした時のことを思い出してにやけちゃいそうだったから、俺は両手で顔のマッサージをするフリでほっぺを隠して、違うことに意識を向けるために視線を遠くに向けた。
3605「駅ついたよ。雨大丈夫?」と待ち合わせ相手にメッセージを送って、そのままそこで待つことにした。驚くくらい周りをよく見ているくせに自分のことには少し無頓着な人だから、この程度の雨なら全然気にしてないかも。
でも俺が雨に濡れないように、一緒にいる時は少しの雨でも傘をさしてくれるんだ。彼のさす傘の中でくっついて歩くのが好きだった。外ではいつも触れないような距離を保ってるけど、雨だから仕方ないって言い訳ができる。
相合傘をした時のことを思い出してにやけちゃいそうだったから、俺は両手で顔のマッサージをするフリでほっぺを隠して、違うことに意識を向けるために視線を遠くに向けた。
𝓪𝓶𝓾
DONE肩が触れ合う距離で:🐑🔮学パロです。
カバンの中にメイク道具しか入ってないゥと、ぱんっぱんに教科書を詰めて帰るふふちゃの対比最高じゃないです?←
梅雨…相合傘をしやすい季節……最高です。 2717
おもち
TRAININGPsyBorg。家庭教師🐏と高校生🔮勉強なんて嫌いだったのに、最近はきちんと教科書をカバンに入れてたり授業中にノートを広げてみたりする。今まで勉強してこなかったせいで先生の話は分からないことが多いし眠さに負けることもあるけれど、サボることなく授業を受けていた。クラスが同じ友達たちに揶揄われて、先生たちに「最近頑張ってるな」なんてうざったい声掛けをされて、ほんとちょっと頑張るのやめようかなって思ったけど。
それでもマジメに頑張ったのは、俺だけの先生に、家庭教師をしてくれているふーふーちゃんに、褒めてほしかったから。
学校が終わってから、いつもは寄り道をたっぷりして時間をかけて帰るところを、近道を使って足早に家に帰った。バタバタと自分の部屋に駆け込んで朝寝坊したせいでめちゃくちゃになってる部屋の中をテキパキと片付ける。ベッドの布団を綺麗に整えてヨシ!と大きく息を吐いたタイミングでピンポーンとインターホンが鳴った。慌ててスマホを見るともう約束の時間になっていた。
2063それでもマジメに頑張ったのは、俺だけの先生に、家庭教師をしてくれているふーふーちゃんに、褒めてほしかったから。
学校が終わってから、いつもは寄り道をたっぷりして時間をかけて帰るところを、近道を使って足早に家に帰った。バタバタと自分の部屋に駆け込んで朝寝坊したせいでめちゃくちゃになってる部屋の中をテキパキと片付ける。ベッドの布団を綺麗に整えてヨシ!と大きく息を吐いたタイミングでピンポーンとインターホンが鳴った。慌ててスマホを見るともう約束の時間になっていた。
途綺*
DONE🐑🔮//綺羅星の微睡み甘やかされてふわふわしてぼんやり眠くなる話。※実際にある睡眠導入法を軽くアレンジしています。
「ふーふーちゃんのばか」
足を抱えて小さく丸まった浮奇の声は、深く潜り込んだベッドの中でくぐもって響いた。ファルガーがドッゴの夜の散歩から帰ってきた直後という、浮奇にとっては有り得ないほど早い時間にベッドへ入っているのは低気圧に負けて痛みを訴える頭のせいだった。
外の雨が強くなるにつれて突き刺すような痛みが徐々に強くなってきたこめかみをさすりながら眉根を寄せていた浮奇は、見兼ねたファルガーに鎮痛薬を飲むよう促された。当然の対応だとは分かっていたが昼前から痛んでいた頭は疲れ切って正常な思考を保てず、浮奇は鎮痛薬を差し出すファルガーの手を拒否した。ふーふーちゃんが抱きしめてくれれば治るだとか、脳みそを取り出して壁に投げたいだとか、キスして甘やかしてよだとか。とにかく悪態をついた覚えはあるが何を口走ったのか記憶にない。ただ、話を受け流しつつ浮奇の手を引いてキッチンへと向かったファルガーが唐突に顎を掴んできて、優しく重なる唇に安心したのと同時にぬるい水と薬が口内へ流れ込んできたことで浮奇はようやく正気を取り戻した。
4137足を抱えて小さく丸まった浮奇の声は、深く潜り込んだベッドの中でくぐもって響いた。ファルガーがドッゴの夜の散歩から帰ってきた直後という、浮奇にとっては有り得ないほど早い時間にベッドへ入っているのは低気圧に負けて痛みを訴える頭のせいだった。
外の雨が強くなるにつれて突き刺すような痛みが徐々に強くなってきたこめかみをさすりながら眉根を寄せていた浮奇は、見兼ねたファルガーに鎮痛薬を飲むよう促された。当然の対応だとは分かっていたが昼前から痛んでいた頭は疲れ切って正常な思考を保てず、浮奇は鎮痛薬を差し出すファルガーの手を拒否した。ふーふーちゃんが抱きしめてくれれば治るだとか、脳みそを取り出して壁に投げたいだとか、キスして甘やかしてよだとか。とにかく悪態をついた覚えはあるが何を口走ったのか記憶にない。ただ、話を受け流しつつ浮奇の手を引いてキッチンへと向かったファルガーが唐突に顎を掴んできて、優しく重なる唇に安心したのと同時にぬるい水と薬が口内へ流れ込んできたことで浮奇はようやく正気を取り戻した。
おもち
TRAININGPsyBorg。SS。俺は今とても疲れが溜まっていて、しっかり休むべきだった。それなのにベッドに入ることもせずリビングのソファーにだらしなく座って酒を飲んでいるのだから、自己管理がカケラもできていないことは自覚していた。酔いが回るとともにどんどんと体がだるくなっていくのを感じながら、あとすこし、もうすこし、と酒を注いでいく。
どうしてここから動きたくないんだろうと自問自答していた問いは、「ただいま」の声が聞こえてようやく答えに辿り着いた。
「あれ、ここにいたんだね。ただいまふーふーちゃん」
「……」
「ふーふーちゃん? ……どうしたのベイビィ」
帰ってきてリビングを覗いた浮奇はそこに俺がいるのにいつものようにおかえりと返さないことに首を傾げ、すぐに俺の隣に座って頬に触れた。やわらかく温かい手に擦り寄ると心が和らぐ。ほっと息を吐くと浮奇は心配を滲ませた瞳で俺の顔を覗き込んだ。
1056どうしてここから動きたくないんだろうと自問自答していた問いは、「ただいま」の声が聞こえてようやく答えに辿り着いた。
「あれ、ここにいたんだね。ただいまふーふーちゃん」
「……」
「ふーふーちゃん? ……どうしたのベイビィ」
帰ってきてリビングを覗いた浮奇はそこに俺がいるのにいつものようにおかえりと返さないことに首を傾げ、すぐに俺の隣に座って頬に触れた。やわらかく温かい手に擦り寄ると心が和らぐ。ほっと息を吐くと浮奇は心配を滲ませた瞳で俺の顔を覗き込んだ。
おもち
TRAININGPsyBorg。星空の下でいちゃついてる話。お店で見つけた瞬間衝動買いしちゃったけど使い所がなくてずっと使えずにいた可愛いレジャーシートは荷物を置いて二人で座るには少し小さくて、俺は仕方ないよねって言い訳をしてふーふーちゃんの隣にくっついていた。ふーふーちゃんはちょっと呆れた顔をしたけれど、でも実際離れて座る余裕がないことを理解して小言を言うこともなく肩をすくめただけ。これが昼間で人の多い公園だったら彼はこんな簡単に諦めてくれなかっただろうけど、今は夜中で街から離れた人気のない広場だ。俺たちの周りは芝生が広がっているだけで見える範囲に人はいない。広い星空は、俺たちだけのもの。
「寝っ転がりたいなぁ。やっぱりもうちょっと大きいレジャーシートにすればよかった。同じ柄でサイズ違いがあればよかったのに」
1624「寝っ転がりたいなぁ。やっぱりもうちょっと大きいレジャーシートにすればよかった。同じ柄でサイズ違いがあればよかったのに」
途綺*
DONE🐑🔮//ディナーはハグの後で夕暮れの床に🔮が落ちてる話。
浮奇が床に落ちている。
どうしても仕上げなければいけない作業を終えてやけに静かな階下に降りたファルガーが見つけたのは、すっかりと傾きかけている陽が当たるカーペットの上で猫さながらに身体を丸めて眠る浮奇だった。すぐそこに使い慣れたソファがあるのに昼寝をするには妙な場所で丸くなる姿は、眠っているというより「落ちている」と言った方が正しいような光景だった。
近寄ってみれば浮奇へ身を寄せたKatとCatがこちらを見詰めてくる。まだファルガーに慣れないらしい彼女たちが普段なら一目散に逃げ出しそうな距離なのに、視線を向けるだけで動かずにいるのは浮奇が傍にいるからだろうか。まるで母猫に寄り添う子猫のように見えて、お互い親と離れた身であることを思い出して胸の奥が切なくなる。だが、本人が気に留めていないことを他者がつつくことでもないとすぐに頭を振った。
2062どうしても仕上げなければいけない作業を終えてやけに静かな階下に降りたファルガーが見つけたのは、すっかりと傾きかけている陽が当たるカーペットの上で猫さながらに身体を丸めて眠る浮奇だった。すぐそこに使い慣れたソファがあるのに昼寝をするには妙な場所で丸くなる姿は、眠っているというより「落ちている」と言った方が正しいような光景だった。
近寄ってみれば浮奇へ身を寄せたKatとCatがこちらを見詰めてくる。まだファルガーに慣れないらしい彼女たちが普段なら一目散に逃げ出しそうな距離なのに、視線を向けるだけで動かずにいるのは浮奇が傍にいるからだろうか。まるで母猫に寄り添う子猫のように見えて、お互い親と離れた身であることを思い出して胸の奥が切なくなる。だが、本人が気に留めていないことを他者がつつくことでもないとすぐに頭を振った。
おもち
TRAININGPsyBorg。ワードパレットの「箒星」約束、胸の痛み、苦手、がお題でした。流星群を見に行く約束はまだ有効だろうか。俺はリビングにあるカレンダーに浮奇の字で書き込まれた「デート」の文字を指先でなぞった。これが書かれた時にはこんなことになっているとは予想もしていなかった。
いつも浮奇がクッションを抱き抱えて座るソファーに一人で腰掛けて背中を丸める。スマホを手に取り連絡先の中から浮奇を表示させたけれど、電話をかけることもメッセージを送ることもできずにただ画面を見つめ続け、そうしているうちにディスプレイが暗くなり情けない顔をした男が映った。
ここ数ヶ月、浮奇はほとんど自分の家に帰らず俺の家に泊まってばかりいた。一人暮らしには慣れていたのに、今はどこもかしこも浮奇の気配が残っていて一人きりなのが辛い。いつもはいい子にしていろと言っても戯れてくる愛犬たちはこんな時に限って家のどこかでお昼寝中のようだった。物音ひとつしない家の中で俺のため息だけが空気を揺らす。
4081いつも浮奇がクッションを抱き抱えて座るソファーに一人で腰掛けて背中を丸める。スマホを手に取り連絡先の中から浮奇を表示させたけれど、電話をかけることもメッセージを送ることもできずにただ画面を見つめ続け、そうしているうちにディスプレイが暗くなり情けない顔をした男が映った。
ここ数ヶ月、浮奇はほとんど自分の家に帰らず俺の家に泊まってばかりいた。一人暮らしには慣れていたのに、今はどこもかしこも浮奇の気配が残っていて一人きりなのが辛い。いつもはいい子にしていろと言っても戯れてくる愛犬たちはこんな時に限って家のどこかでお昼寝中のようだった。物音ひとつしない家の中で俺のため息だけが空気を揺らす。
おもち
TRAININGPsyBorg。🧜♀️うきと人間ふちゃの話。前までのやつ読んでからのほうが良いかと。夜が明ける前の暗く底の見えない海から、人魚を抱き上げ砂浜に足跡をつけていく。
いつも一緒の愛犬は今日は家で留守番をしてもらっていた。両手が塞がってしまうことが分かっていたし、無駄吠えはしない子だけれどもし何かの拍子に鳴いて人の注意を引いてしまうことがないようにしたかったから。
海岸から離れ波の音が遠ざかると彼は俺の首に回した腕にキュッと力を入れた。俺は振り返ることなくただ真っ直ぐに、海に背を向けて歩き続けた。日が昇る前に終わらせなければならない。立ち止まる暇はなかった。
人気のないまだ仄暗い道を行き、少し歩けば住み慣れた家が見えてくる。無事誰にも見られることなくガレージから家に入った俺は真っ直ぐバスルームに向かった。予め水を張っておいたバスタブの中に、鱗の乾き始めていた人魚をゆっくり沈める。
1982いつも一緒の愛犬は今日は家で留守番をしてもらっていた。両手が塞がってしまうことが分かっていたし、無駄吠えはしない子だけれどもし何かの拍子に鳴いて人の注意を引いてしまうことがないようにしたかったから。
海岸から離れ波の音が遠ざかると彼は俺の首に回した腕にキュッと力を入れた。俺は振り返ることなくただ真っ直ぐに、海に背を向けて歩き続けた。日が昇る前に終わらせなければならない。立ち止まる暇はなかった。
人気のないまだ仄暗い道を行き、少し歩けば住み慣れた家が見えてくる。無事誰にも見られることなくガレージから家に入った俺は真っ直ぐバスルームに向かった。予め水を張っておいたバスタブの中に、鱗の乾き始めていた人魚をゆっくり沈める。