ahotamanZ
INFO6/2パバステ現地での雨想新刊サンプルです。全年齢/24P/最近雨彦の部屋に本が増えてきたことを知った想楽が、雨彦の家にいくたびに本を借りて、彼を思う時間を増やすお話です。 10
komaki_etc
DOODLE雨想。情事後の朝逃避行 三月なのに雪が降るとは、これいかに。
朝起きて、妙に外が静かな気がして、スマホで天気予報を開く。午前中いっぱい、雪の予報だった。薄い布一枚着込んだだけの上半身が外気に晒されて寒く、またのそのそと布団の中に戻る。
隣に寝転ぶ大きな図体に額を寄せた。彼は体温が低いけれど、寝ていると流石にあたたかい。腹の方に腕を回してみようか考えているうちに、大きな身体はごそりと寝返りを打ち、こちら側を向いた。見上げると、眠たそうな眼が僕を見つめている。
「おはようございますー」
「随分早起きだな」
「寒くて起きちゃってー。雪らしいですよー」
「ああ、なにか外が眩しいと思った」
この家のカーテンは陽をよく通す。寝つきが悪いのなら遮光カーテンにしたらどうだと言ったことがあるけれど、朝日を浴びたいのだ、明るい部屋の方がいい、と言われてしまっては返す言葉もない。キングサイズのベッドの上で、僕らは甘いまどろみを楽しむ。
2406朝起きて、妙に外が静かな気がして、スマホで天気予報を開く。午前中いっぱい、雪の予報だった。薄い布一枚着込んだだけの上半身が外気に晒されて寒く、またのそのそと布団の中に戻る。
隣に寝転ぶ大きな図体に額を寄せた。彼は体温が低いけれど、寝ていると流石にあたたかい。腹の方に腕を回してみようか考えているうちに、大きな身体はごそりと寝返りを打ち、こちら側を向いた。見上げると、眠たそうな眼が僕を見つめている。
「おはようございますー」
「随分早起きだな」
「寒くて起きちゃってー。雪らしいですよー」
「ああ、なにか外が眩しいと思った」
この家のカーテンは陽をよく通す。寝つきが悪いのなら遮光カーテンにしたらどうだと言ったことがあるけれど、朝日を浴びたいのだ、明るい部屋の方がいい、と言われてしまっては返す言葉もない。キングサイズのベッドの上で、僕らは甘いまどろみを楽しむ。
komaki_etc
DOODLE雨想。昔想いを告げて、待たされていた時の話サロメ 電車の揺れがいつもより激しいだけで、怒られているような気持になる。
全国を低気圧が襲った。それほど影響を受ける体質ではないと思っていたけれど、全身が重い。頭が痛い。今日は授業が三コマあった。レポートはどれも手を抜かなかった。靴が窮屈に感じる。カバンをかけた肩が重い。
「……顔色が悪いな」
事務所に着いて、顔を見合わせた第一声がそれだった。雨彦さんはぽんぽんと僕の肩を叩いて、ソファに座るように促す。あたたかい緑茶か麦茶か、と聞かれて、少し迷って緑茶と答えた。ペットボトルのなかに、冷めたほうじ茶があるのを忘れていた。
「クリスさんはー?」
「前の仕事が押してるらしい」
ああ、そういえばLINKが来てたっけ。今日はぼんやりだなあ。大きく伸びをして深呼吸をする。こういう時は酸素が足りていない。
2798全国を低気圧が襲った。それほど影響を受ける体質ではないと思っていたけれど、全身が重い。頭が痛い。今日は授業が三コマあった。レポートはどれも手を抜かなかった。靴が窮屈に感じる。カバンをかけた肩が重い。
「……顔色が悪いな」
事務所に着いて、顔を見合わせた第一声がそれだった。雨彦さんはぽんぽんと僕の肩を叩いて、ソファに座るように促す。あたたかい緑茶か麦茶か、と聞かれて、少し迷って緑茶と答えた。ペットボトルのなかに、冷めたほうじ茶があるのを忘れていた。
「クリスさんはー?」
「前の仕事が押してるらしい」
ああ、そういえばLINKが来てたっけ。今日はぼんやりだなあ。大きく伸びをして深呼吸をする。こういう時は酸素が足りていない。
komaki_etc
DOODLE雨想。逢瀬の帰り道ホッカイロ 深夜も深夜、人通りの少ない道でのみ、雨彦さんは手を繋ごうとしてくる。
それは別に良いのだけど、冬だと「ホラ」と言ってポケットの中に誘導されるものだから、僕のひじは変な位置で固定されてしまう。これなら腕を組んだ方が恋人っぽいのではないかと思うが、僕らは指先の交わりだけで充分だった。
「ん? 今日はあたたかいな」
ポケットの中で、僕の指先を遊びながら雨彦さんが言う。僕はにんまりと笑い、左手に持っているそれを掲げてみせた。
「ホッカイロですー」
「なるほどな」
右手に雨彦さん、左手にホッカイロ。冬だけど、無敵だ。
さっと、目の前を白いなにかが通り過ぎた。猫だ。この辺にはノラが数匹いる。黒いのと、白いのと、茶のまだら。白いのはとびきり人懐こいから、僕も数度おなかを撫でさせてもらったことがある。今日はご機嫌ななめなのか、家の隙間に入り込んで、こちらをキッと睨んできた。
960それは別に良いのだけど、冬だと「ホラ」と言ってポケットの中に誘導されるものだから、僕のひじは変な位置で固定されてしまう。これなら腕を組んだ方が恋人っぽいのではないかと思うが、僕らは指先の交わりだけで充分だった。
「ん? 今日はあたたかいな」
ポケットの中で、僕の指先を遊びながら雨彦さんが言う。僕はにんまりと笑い、左手に持っているそれを掲げてみせた。
「ホッカイロですー」
「なるほどな」
右手に雨彦さん、左手にホッカイロ。冬だけど、無敵だ。
さっと、目の前を白いなにかが通り過ぎた。猫だ。この辺にはノラが数匹いる。黒いのと、白いのと、茶のまだら。白いのはとびきり人懐こいから、僕も数度おなかを撫でさせてもらったことがある。今日はご機嫌ななめなのか、家の隙間に入り込んで、こちらをキッと睨んできた。
komaki_etc
DOODLE雨想 事後半径二メートルの 死ぬ時に笑っていられたらいいなぁ、というのが、僕の目下の目標である。人生にはたくさんのレールが敷いてあって、どの道を歩くかは僕次第なのだけど、行き止まりだったり崩れ落ちてたり、途中で合流したりするその道の先は、想像することしかできない。
暗闇の先、どうか終着点が笑顔でありますように、と願ってやまないのだ。
納得したい。僕の選択全てを。何故こんなことを思うかというと、きっと不安で足元がぐらついているからだ。クォーターライフクライシスになるには、まだ若すぎるだろうか。安心したい。確かな安心が欲しい。
「また難しいことを考えてるな」
「……そんなに分かりやすいですかー?」
「眉間に皺が寄ってた。跡になるぜ」
2265暗闇の先、どうか終着点が笑顔でありますように、と願ってやまないのだ。
納得したい。僕の選択全てを。何故こんなことを思うかというと、きっと不安で足元がぐらついているからだ。クォーターライフクライシスになるには、まだ若すぎるだろうか。安心したい。確かな安心が欲しい。
「また難しいことを考えてるな」
「……そんなに分かりやすいですかー?」
「眉間に皺が寄ってた。跡になるぜ」
komaki_etc
DOODLE雨想Re:おやすみ 元の形がわからなくなるくらい、覆われてしまう時。はじめの形を思い起こそうとするのと、今の形に浸るのと、どちらが尊い作業なのだろう。
控室の机の上で、ぴこんとスマホに通知がくる。クリスさんから、遅れてすまない、もう少しで到着する、とのLINKだった。前の現場が押したらしい。すいすいと指で操作し、返信ついでに今までのメッセージを読み返していた時。
「北村は、Reの世代じゃないか」
と、隣から声が降ってきた。
「Re……?」
「俺の若い頃はスマホじゃなかったからな。所謂ガラケーさ」
「うん、それはわかるけどー」
「だから、LINKもなくて、連絡は全部メールだったんだ」
今だって、かしこまった仕事の連絡はメールを使用する。事務所宛てに企画書が送付されたら、そのまま転送されることもあるし。大学の大切なお知らせだってメールだ。僕は右隣を見上げて、彼が何を言わんとしているのか測る。
2314控室の机の上で、ぴこんとスマホに通知がくる。クリスさんから、遅れてすまない、もう少しで到着する、とのLINKだった。前の現場が押したらしい。すいすいと指で操作し、返信ついでに今までのメッセージを読み返していた時。
「北村は、Reの世代じゃないか」
と、隣から声が降ってきた。
「Re……?」
「俺の若い頃はスマホじゃなかったからな。所謂ガラケーさ」
「うん、それはわかるけどー」
「だから、LINKもなくて、連絡は全部メールだったんだ」
今だって、かしこまった仕事の連絡はメールを使用する。事務所宛てに企画書が送付されたら、そのまま転送されることもあるし。大学の大切なお知らせだってメールだ。僕は右隣を見上げて、彼が何を言わんとしているのか測る。
komaki_etc
DOODLE雨想バレンタインデーサンクスデー 雨彦さんが実家の清掃会社と事務所の間に借りている寝泊まり用のワンルームに、仄甘い香りが広がる。
昨日のうちに、昨日までに事務所に届いていたチョコを運び込んでいたせいだ。僕の分もいったん置かせてもらっている。僕は自分宛の箱の中から板チョコ――海外製のもので、猫の絵が描かれているパッケージ――を取り出し、雨彦さんに「これ、今からどうですかー?」と訊ねた。Bitter、と書いてあるのが読める。
「ひとかけら。ホットミルクに入れると、ホットチョコレートドリンクになるんですよー」
「へえ、いいじゃないか」
じゃあマグカップを用意しよう、と動き出す彼の背を追いながら、今日という日について思いを馳せていた。
世間は華やぐバレンタインデー。日本ではチョコレートを贈る風習がある――ここ数年は、祭典が盛況のようだけれど。多分に漏れず僕らアイドル宛てにも、事務所に大量のチョコレートが届いていた。今目の前にあるのは、ほんの一部に過ぎない。
1912昨日のうちに、昨日までに事務所に届いていたチョコを運び込んでいたせいだ。僕の分もいったん置かせてもらっている。僕は自分宛の箱の中から板チョコ――海外製のもので、猫の絵が描かれているパッケージ――を取り出し、雨彦さんに「これ、今からどうですかー?」と訊ねた。Bitter、と書いてあるのが読める。
「ひとかけら。ホットミルクに入れると、ホットチョコレートドリンクになるんですよー」
「へえ、いいじゃないか」
じゃあマグカップを用意しよう、と動き出す彼の背を追いながら、今日という日について思いを馳せていた。
世間は華やぐバレンタインデー。日本ではチョコレートを贈る風習がある――ここ数年は、祭典が盛況のようだけれど。多分に漏れず僕らアイドル宛てにも、事務所に大量のチョコレートが届いていた。今目の前にあるのは、ほんの一部に過ぎない。
chiocioya18
DONE雨想バレンタイン。想楽くんがから回ってる話です。わりと甘々です 大人っぽくてしっとりした雨想はいませんので解釈違いにご注意ください二月に入った途端、店先はどこもバレンタイン色に染まってしまった。以前のバイト先ならかきいれ時だねーと売り場作りに精を出していた気もするけれど、今では通りすがりに眺めていくだけになってしまった。
……そのはず、だったのだけど。
「色めいた空気に香るチョコレート……」
二月十四日。事務所に向かう僕の鞄の奥底には、綺麗にラッピングされたチョコレートが眠っている。眺めるだけのつもりだったバレンタイン催事のコーナーで、キツネの描かれたパッケージを見つけてうっかり雨彦さんを思い出してしまったのが発端。そういえばチョコあげた方がいいのかなとか、でもファンからのプレゼントでも貰うだろうから僕からはいらないかなとか、でもなにも用意しないのも一応恋人なのに薄情かなとか、なんだかぐるぐる考えてしまって、気がついたらレジでお会計が済んでしまっていた。
2120……そのはず、だったのだけど。
「色めいた空気に香るチョコレート……」
二月十四日。事務所に向かう僕の鞄の奥底には、綺麗にラッピングされたチョコレートが眠っている。眺めるだけのつもりだったバレンタイン催事のコーナーで、キツネの描かれたパッケージを見つけてうっかり雨彦さんを思い出してしまったのが発端。そういえばチョコあげた方がいいのかなとか、でもファンからのプレゼントでも貰うだろうから僕からはいらないかなとか、でもなにも用意しないのも一応恋人なのに薄情かなとか、なんだかぐるぐる考えてしまって、気がついたらレジでお会計が済んでしまっていた。
komaki_etc
DOODLE雨想♀。一人称は僕。2人で温泉に行く話小春日和 しなびた胸だなあ、と思ってしまった。
僕の行く末かもしれないのに、他人にそんなこと思ってしまうのは失礼だ、そんなことはわかっている。だけど、自分の若々しい張りのある肌が、いずれああなると思うと、どうしても途方もない時間が心を通り過ぎていく気がするのだ。
雨彦さんと温泉に来たのは、別に商店街の福引があたったわけでも、プロデューサーの提案でもない。僕から言い出したことだった。電車で一時間くらいのところにスパ施設があるので、平日の昼間ならと誘ってみたら、意外にも彼はくいついてきた。メインイベントの風呂自体は別行動になるにも関わらず、二人でのそのそと出かけることとなった。
のそのそと言うと亀のような、巣籠の熊のようなイメージがあるけれど、実際そんな感じだったので、言い得て妙かもしれない。乗り換えの駅で買い食いをしてみたり、あえて各停に乗ってみたり、僕たちはとにかく、のそのそと言うほかないほどのんびりと目的地に向かった。いつもは雨彦さんかクリスさん、プロデューサーの車に乗っての移動が多いから、こうして電車でゆっくり移動すること自体が久しぶり。僕は大好きな一人旅の時と同じような心地よい高揚感に包まれていた。
2555僕の行く末かもしれないのに、他人にそんなこと思ってしまうのは失礼だ、そんなことはわかっている。だけど、自分の若々しい張りのある肌が、いずれああなると思うと、どうしても途方もない時間が心を通り過ぎていく気がするのだ。
雨彦さんと温泉に来たのは、別に商店街の福引があたったわけでも、プロデューサーの提案でもない。僕から言い出したことだった。電車で一時間くらいのところにスパ施設があるので、平日の昼間ならと誘ってみたら、意外にも彼はくいついてきた。メインイベントの風呂自体は別行動になるにも関わらず、二人でのそのそと出かけることとなった。
のそのそと言うと亀のような、巣籠の熊のようなイメージがあるけれど、実際そんな感じだったので、言い得て妙かもしれない。乗り換えの駅で買い食いをしてみたり、あえて各停に乗ってみたり、僕たちはとにかく、のそのそと言うほかないほどのんびりと目的地に向かった。いつもは雨彦さんかクリスさん、プロデューサーの車に乗っての移動が多いから、こうして電車でゆっくり移動すること自体が久しぶり。僕は大好きな一人旅の時と同じような心地よい高揚感に包まれていた。
ahotamanZ
PAST雨想オンリー一周年ということで、自分の担当した「寒空」の原稿を再掲します。編集していても本当に皆さんの発想と展開とご自身の好きであろうあめそらの姿の詰まり具合に毎日奮い立たせてもらっていました。関われて本当に光栄でした。宝物です。 4chiocioya18
DONE雨想。北村20歳飲酒可能設定。宅飲みでいちゃつく話です。
ほろよいメロンソーダ宅飲みの利点は、他人の目を気にしなくていいことだ。酔った勢い、あるいはそれを言い訳にして、雨彦さんとキスするのだって心置きなくできてしまう。もっとも、他人ではない恋人の目はどうしたって気になってしまうけれど。唇を離してすぐ、雨彦さんの目線が僕ではなくテーブルの上へ向かったのを見逃しはしなかった。
「…なにかー?」
「ん? 何の味かと思ってな」
軽く唇を舐めながら雨彦さんが笑う。僕の前にあるチューハイの缶は期間限定のメロンソーダ味。アルコール分は4%しかない。
「口に合わなかったー?」
「お前さんの口付けはいつでも美味いさ」
「またそういうー…」
糠に釘、暖簾に腕押し、一人相撲。茶化すのは癖らしいけれど、本心なのかふざけているのか、煙に巻くような口ぶりにはいつももどかしい気持ちになる。
881「…なにかー?」
「ん? 何の味かと思ってな」
軽く唇を舐めながら雨彦さんが笑う。僕の前にあるチューハイの缶は期間限定のメロンソーダ味。アルコール分は4%しかない。
「口に合わなかったー?」
「お前さんの口付けはいつでも美味いさ」
「またそういうー…」
糠に釘、暖簾に腕押し、一人相撲。茶化すのは癖らしいけれど、本心なのかふざけているのか、煙に巻くような口ぶりにはいつももどかしい気持ちになる。
chiocioya18
DONE年末の雨想。大掃除とたぬき蕎麦。あのひとコマをずっと擦ってます。公式が強すぎる。
年末に 待ち受けたるは 大掃除。
昨日放送されたお昼のバラエティ番組では、雨彦さんがゲスト出演して掃除のコツを披露していた。掃除屋の肩書きも巷に知られつつある。
うちの事務所はといえば、常から雨彦さんをはじめとした掃除や整頓好きなメンバーがこまめに片付けているおかげもあって、スムーズに掃除が済んでしまった。男ばかりの大所帯だと家具なんかの重いものを動かすにも人手が足りて便利だなと、あの中では比較的非力な僕は思ったものだ。
クリスさんのお宅はこれから家族で大掃除にかかるという。「参加しないと集めた書籍や論文や海グッズが妹たちに容赦なく捨てられてしまうのです!」って、あまりに大袈裟に嘆くから笑ってしまった。クリスさんからしたら笑い事じゃないよねー。
981昨日放送されたお昼のバラエティ番組では、雨彦さんがゲスト出演して掃除のコツを披露していた。掃除屋の肩書きも巷に知られつつある。
うちの事務所はといえば、常から雨彦さんをはじめとした掃除や整頓好きなメンバーがこまめに片付けているおかげもあって、スムーズに掃除が済んでしまった。男ばかりの大所帯だと家具なんかの重いものを動かすにも人手が足りて便利だなと、あの中では比較的非力な僕は思ったものだ。
クリスさんのお宅はこれから家族で大掃除にかかるという。「参加しないと集めた書籍や論文や海グッズが妹たちに容赦なく捨てられてしまうのです!」って、あまりに大袈裟に嘆くから笑ってしまった。クリスさんからしたら笑い事じゃないよねー。
R_betsu
DOODLE前に呟いていたやつ互いの人生に踏み込む覚悟をしてる雨想が好きでな… ☔️の人生に🐧を迎えるのも、いろんな覚悟の上でこの先一緒に生きていくのがアツイ というか23歳×34歳とか社会人同士雨想が見たいだけだな………完
chiocioya18
DONE雨想です。事後のキスマークの話。顔に出ないけど意外と熱に呑まれるタイプの雨彦さんなので解釈違いにお気をつけください。
まだ指先にじりじりと快楽の余韻がある。皺の寄ったシーツに寝転んだまま吐いた息には熱が滲んでいた。もうろくに身体は動かないのに、欲望だけはもっとを求めてキリがない。とはいえ相手がいなければ欲しがったところでしかたない。雨彦さんは先にシャワーを浴びながら僕のために湯船にお湯を張ってくれている。なんとも甲斐甲斐しいことだ。
この、事が済んだ後のクールダウンの時間が、どうにも苦手だった。なにせ最中は……絶えず襲い来る快感と有り余る多幸感で、頭がふわふわになりがちで。冷静になってから、なにかとんでもなく恥ずかしいことを口走ったりしでかしたりしたのではないかと居たたまれない気持ちになる。いっそ気絶して朝まで目覚めないくらいに抱き潰してくれれば、と都合のいい願望を抱えてみても、雨彦さんがそんな無茶を叶えてくれるとは思えなかった。
1849この、事が済んだ後のクールダウンの時間が、どうにも苦手だった。なにせ最中は……絶えず襲い来る快感と有り余る多幸感で、頭がふわふわになりがちで。冷静になってから、なにかとんでもなく恥ずかしいことを口走ったりしでかしたりしたのではないかと居たたまれない気持ちになる。いっそ気絶して朝まで目覚めないくらいに抱き潰してくれれば、と都合のいい願望を抱えてみても、雨彦さんがそんな無茶を叶えてくれるとは思えなかった。
chiocioya18
DONE北村ハッピーバースデー2023! あめそらです。誕生日にちょっとだけ欲張りする話。
誕生日なんて、歳を重ねる毎に何も感じなくなると思っていた。けれど、この事務所に入ってからは毎年盛大にお祝いされる。会う人みんなから「おめでとう」の言葉をかけられて、雨彦さんやクリスさん、それに九郎先生や一希先生、プロデューサーさんからはプレゼントまで貰ってしまって、何も感じないなんて到底無理な環境に置かれてしまった。もちろん、嬉しくて困ったなという意味でだ。
貰い物でパンパンになった鞄を抱えて帰路につく。電車の中は暖房が効いていて、少し暑いくらいだ。それともお祝いされて舞い上がってる気持ちで体感気温があがっているのだろうか。スマホを見れば、兄さんからも誕生日を祝うメッセージが届いていた。ちょっとくすぐったい反面、わざわざ送ってくるということは、と察してしまう。案の定、続きの文面は今日も家には帰れないという旨で、了解とありがとうだけ返信して画面を閉じる。タイミングよく、車内アナウンスが最寄り駅を告げた。
1240貰い物でパンパンになった鞄を抱えて帰路につく。電車の中は暖房が効いていて、少し暑いくらいだ。それともお祝いされて舞い上がってる気持ちで体感気温があがっているのだろうか。スマホを見れば、兄さんからも誕生日を祝うメッセージが届いていた。ちょっとくすぐったい反面、わざわざ送ってくるということは、と察してしまう。案の定、続きの文面は今日も家には帰れないという旨で、了解とありがとうだけ返信して画面を閉じる。タイミングよく、車内アナウンスが最寄り駅を告げた。
chiocioya18
DONE雨想です。雨彦さんを閉じ込めてみた話。こんなキャプションですが監禁とかそういうブラックなやつではないです。
北村兄(酔っ払い)が出ます。川柳いれるタイミングがなかった……!
ヴー、ヴー、ヴー。
机の上に載せていたスマホが忙しなく震える。その音に雨彦さんと二人揃って視線を向けたけれど、僕はすぐに目の前の人の唇を貪ることに戻った。そんな雑音が耳に入らないくらい夢中にさせたかったけれど、僕の技量はまだ足りなかったらしい。雨彦さんはキスの続きより震える携帯を気にしている。
「それ、ずっと鳴ってるなら電話だろう。出なくていいのかい?」
「いいんじゃないー? こんな時間なら、寝てたことにすればさ」
「火急の用事かもしれないぜ。俺は逃げやしないから確認だけでもしておきな」
「……」
雨彦さんの言うことはもっともだ。だからこそ、冷静になりきれていない自分との温度差を感じて苛立ってしまう。理不尽なのは分かっているけれど。
2371机の上に載せていたスマホが忙しなく震える。その音に雨彦さんと二人揃って視線を向けたけれど、僕はすぐに目の前の人の唇を貪ることに戻った。そんな雑音が耳に入らないくらい夢中にさせたかったけれど、僕の技量はまだ足りなかったらしい。雨彦さんはキスの続きより震える携帯を気にしている。
「それ、ずっと鳴ってるなら電話だろう。出なくていいのかい?」
「いいんじゃないー? こんな時間なら、寝てたことにすればさ」
「火急の用事かもしれないぜ。俺は逃げやしないから確認だけでもしておきな」
「……」
雨彦さんの言うことはもっともだ。だからこそ、冷静になりきれていない自分との温度差を感じて苛立ってしまう。理不尽なのは分かっているけれど。
chiocioya18
DONEお月見な雨想。雨彦さんの機械狂わせ体質いつかどこかで書こうと思ってました。今でした。中秋の名月には遅刻しました。
夜なのに外が明るい。それほどに大きな月がぽっかりと空に浮かんでいる。
「すごい月だねー」
独り言ともとれる感嘆に、隣りに佇む人は「そうだな」と短い同意を返す。月が綺麗ですね、なんて言い回しは有名すぎて、意味を知っているに違いないこの人には伝わりすぎるから言ってやらない。
窓を開けると秋の風が頬を撫でた。首から提げたスマホを空にかざす。
「写真か?」
「せっかくだからねー。上手に撮れたらSNSにでも上げようかなー」
画面越しに月を見上げる。四角く切り取られた夜空の中、輝くまあるい金色。
「ん…あれ?」
液晶に不意にノイズが走る。チカチカした点滅、動かしていないのにブレる画面、映された月は紅く色を変える。
「おっと…。こいつはまた俺のせいかもな」
675「すごい月だねー」
独り言ともとれる感嘆に、隣りに佇む人は「そうだな」と短い同意を返す。月が綺麗ですね、なんて言い回しは有名すぎて、意味を知っているに違いないこの人には伝わりすぎるから言ってやらない。
窓を開けると秋の風が頬を撫でた。首から提げたスマホを空にかざす。
「写真か?」
「せっかくだからねー。上手に撮れたらSNSにでも上げようかなー」
画面越しに月を見上げる。四角く切り取られた夜空の中、輝くまあるい金色。
「ん…あれ?」
液晶に不意にノイズが走る。チカチカした点滅、動かしていないのにブレる画面、映された月は紅く色を変える。
「おっと…。こいつはまた俺のせいかもな」
komaki_etc
DOODLE雨想。雨彦さんが吸血鬼はじめから 本日三度目のカフェ。喉が渇いて仕方ない。
連日、雨彦さんに血を分け与えているからだと思う。カフェインばかり摂るなと眉を顰められたから、ブラッドオレンジジュースにするけれど、どうして僕がこんなに気を遣わなければならないんだろう。
きっかけは本当に些細なことで、雨彦さんが吸血しているところを見てしまったのだ。撮影してた建物の、外に続く非常階段の踊り場。外の空気が吸いたくなって、と一人でぷらぷら出ていったら、ばったり。スタッフの一人がこっそり喫煙しているところを口説いたらしい。吸血された時の記憶は消せるから、特に騒がれもせず、こうして撮影やロケのたび、事に及んでいたという訳だ。
「時折ふらふらとどこかに行くのは、そういう訳だったんですねー」
2020連日、雨彦さんに血を分け与えているからだと思う。カフェインばかり摂るなと眉を顰められたから、ブラッドオレンジジュースにするけれど、どうして僕がこんなに気を遣わなければならないんだろう。
きっかけは本当に些細なことで、雨彦さんが吸血しているところを見てしまったのだ。撮影してた建物の、外に続く非常階段の踊り場。外の空気が吸いたくなって、と一人でぷらぷら出ていったら、ばったり。スタッフの一人がこっそり喫煙しているところを口説いたらしい。吸血された時の記憶は消せるから、特に騒がれもせず、こうして撮影やロケのたび、事に及んでいたという訳だ。
「時折ふらふらとどこかに行くのは、そういう訳だったんですねー」
chiocioya18
DONE雨想だと言い張ります。おみやげを選ぶ話。想楽くんのモノローグだけです。
川柳入れる隙がなかったのでタイトルに入れてみました。ノルマだと思ってるので…。
選り好み 知ったかぶりの贈り物例えば一人の旅先で。例えばユニットではないお仕事で遠方に赴いた先で。ここにいない二人に、たまにはおみやげくらいあげてみようかななんて思った時に。
クリスさんのは選ぶのに苦労しない。
海や魚に関係するもの。クリスさんの『海』の守備範囲は案外広いから、海産物を使った乾物やお菓子なんかでもいい。そこまで気にしなくても、海と関係ないものでも素直に喜んでくれるからおみやげ選びのハードルは低いのだ。
雨彦さんのは、難しい。
そもそもあの人の好みがよくわからない。油揚げが好きなのは知っているけど、特別有名な品でもないとおみやげとしては適さない気がする。普通に、おみやげ屋さんで一番人気とポップが出ているものをあげても嫌がりはしないんだろうけど。
734クリスさんのは選ぶのに苦労しない。
海や魚に関係するもの。クリスさんの『海』の守備範囲は案外広いから、海産物を使った乾物やお菓子なんかでもいい。そこまで気にしなくても、海と関係ないものでも素直に喜んでくれるからおみやげ選びのハードルは低いのだ。
雨彦さんのは、難しい。
そもそもあの人の好みがよくわからない。油揚げが好きなのは知っているけど、特別有名な品でもないとおみやげとしては適さない気がする。普通に、おみやげ屋さんで一番人気とポップが出ているものをあげても嫌がりはしないんだろうけど。
komaki_etc
DOODLE雨想砂糖多めに「夜中に口笛を吹くと蛇が来ますよ―?」
「ん? 吹いてたかい?」
「いいえー」
「なんだ、北村のいたずらか」
掃除している雨彦さんが、あんまりにも楽しそうな背中を見せるものだから。そのうち本当に口笛を吹きそうな雰囲気だったので、あらかじめ釘を刺しておいたにすぎない。
「鼻歌は歌ってましたよー」
「そりゃ無意識だった。何を歌ってた?」
「ドライブアライブ」
「はは、我ながらご機嫌だな」
シンクにクレンザーをかけながら、くつくつと笑う。換気扇がごうごう回って、彼の鼻歌をかきまぜていた。
時刻は二十二時。夜中と言っても差し支えないだろう。寝るにはまだ早い、ひそやかな、二人きりの時間。それなのに雨彦さんは、突然掃除をはじめてしまった。
2257「ん? 吹いてたかい?」
「いいえー」
「なんだ、北村のいたずらか」
掃除している雨彦さんが、あんまりにも楽しそうな背中を見せるものだから。そのうち本当に口笛を吹きそうな雰囲気だったので、あらかじめ釘を刺しておいたにすぎない。
「鼻歌は歌ってましたよー」
「そりゃ無意識だった。何を歌ってた?」
「ドライブアライブ」
「はは、我ながらご機嫌だな」
シンクにクレンザーをかけながら、くつくつと笑う。換気扇がごうごう回って、彼の鼻歌をかきまぜていた。
時刻は二十二時。夜中と言っても差し支えないだろう。寝るにはまだ早い、ひそやかな、二人きりの時間。それなのに雨彦さんは、突然掃除をはじめてしまった。
komaki_etc
DOODLE雨想カフェオレ 新潮文庫が好きだ。
天のアンカットや、スピンが付いているところ。ぶどうのマーク。素朴な手触りが、手に馴染む感覚がする。
表紙に惹かれて、所謂ジャケ買いをすることもあるのだが、僕は本を読む時にまず表紙を剥いでしまう。帯も外して、スピンをはじめのページに挟み直して。こうやってはじめて、その本を読み始める準備ができるのだ。
「ブックカバーでもプレゼントしようか」
ソファの隣の席でそう笑った雨彦さんは、コーヒーをミルクなしで飲む。僕も最近はブラックが好きだ。思考がすっきりする気がして、すがすがしくなる。
「あ、いいですねー。嬉しいですー」
「今度買ってやろう」
他愛もないおしゃべり。お互い一緒にいるのに別々のことをする、それが当たり前になっているのが心地よかった。
2382天のアンカットや、スピンが付いているところ。ぶどうのマーク。素朴な手触りが、手に馴染む感覚がする。
表紙に惹かれて、所謂ジャケ買いをすることもあるのだが、僕は本を読む時にまず表紙を剥いでしまう。帯も外して、スピンをはじめのページに挟み直して。こうやってはじめて、その本を読み始める準備ができるのだ。
「ブックカバーでもプレゼントしようか」
ソファの隣の席でそう笑った雨彦さんは、コーヒーをミルクなしで飲む。僕も最近はブラックが好きだ。思考がすっきりする気がして、すがすがしくなる。
「あ、いいですねー。嬉しいですー」
「今度買ってやろう」
他愛もないおしゃべり。お互い一緒にいるのに別々のことをする、それが当たり前になっているのが心地よかった。
chiocioya18
DONE雨想。変装して待ち合わせする話。日焼け止め借りる男なら眼鏡借りるくらいするでしょ(偏見)と思って書いたやつです。
待ち合わせ場所はコンビニの前。角からぬっと、まるで影が伸びてきたみたいにその人は姿を現した。
思わず一歩後ずさった僕を見て、悪戯が成功したみたいににやりと笑う。
「驚かせちまったか?」
「......わざとなら怒るよー、雨彦さん」
「そういうわけじゃないんだが。すまなかったな」
合流を果たしてしまえばここに長居する理由はない。僕の方から促して歩き出すと、雨彦さんは大人しく並んで着いてくる。横断歩道を渡りひとつ隣りの路地へ。移動中にも視線を感じるから「なに?」と尋ねたら、指でトントンと指し示された。
「眼鏡。してるの珍しいな」
「そう? ドラマとかの役でたまにしてたでしょー」
「あれはその役として見てるからな。北村が掛けてるのは新鮮だ」
1155思わず一歩後ずさった僕を見て、悪戯が成功したみたいににやりと笑う。
「驚かせちまったか?」
「......わざとなら怒るよー、雨彦さん」
「そういうわけじゃないんだが。すまなかったな」
合流を果たしてしまえばここに長居する理由はない。僕の方から促して歩き出すと、雨彦さんは大人しく並んで着いてくる。横断歩道を渡りひとつ隣りの路地へ。移動中にも視線を感じるから「なに?」と尋ねたら、指でトントンと指し示された。
「眼鏡。してるの珍しいな」
「そう? ドラマとかの役でたまにしてたでしょー」
「あれはその役として見てるからな。北村が掛けてるのは新鮮だ」
chiocioya18
DONE雨想。北村宅で初お泊まりの回。雑誌見た感じそらくん自室って和室だよなーと同衾だけで何もしないのかえってエッチなのでは?が合体した話です。
据え膳食わぬは予定時間より少し早くレッスンスタジオに入るとまだ雨彦さんしかいなかった。挨拶もそこそこに雨彦さんは僕を呼び寄せるとわずかに声を潜めて告げる。
「すまん北村。今夜の約束は無しにしてくれ」
今夜の約束。雨彦さん家に泊まる予定のことだ。
そもそも僕が押しかけるような形の一方的な約束なのだし、雨彦さんにだって都合も気分もあるのだから中止にしたって全然構わないのだけど。「うん、わかった」と頷いた僕からなにかを汲み取ったのか雨彦さんは少し早口で付け足した。
「うちのエアコンが壊れちまってな。修理が明後日になるそうだ」
「え、それは大変だねー。雨彦さんどこで過ごすのー?」
「日中は事務所や清掃社に避難するさ。夜は今日明日はホテル泊かね」
3434「すまん北村。今夜の約束は無しにしてくれ」
今夜の約束。雨彦さん家に泊まる予定のことだ。
そもそも僕が押しかけるような形の一方的な約束なのだし、雨彦さんにだって都合も気分もあるのだから中止にしたって全然構わないのだけど。「うん、わかった」と頷いた僕からなにかを汲み取ったのか雨彦さんは少し早口で付け足した。
「うちのエアコンが壊れちまってな。修理が明後日になるそうだ」
「え、それは大変だねー。雨彦さんどこで過ごすのー?」
「日中は事務所や清掃社に避難するさ。夜は今日明日はホテル泊かね」
chiocioya18
DONE雨想。レッスン後で汗かいてる話。うろたえる雨彦さんが書きたかった。
今日のダンスレッスンは一段とハードだった。息が整わなくて、立っているのがやっとな始末。コーチの先生が帰ったのを見送ると、気が抜けたのか僕はその場にずるずると蹲ってしまう。
「想楽!大丈夫ですか」
「うん…なんとかー…」
「水分補給しな。水はあるかい?」
「あー…さっき飲みきっちゃったー…」
「私が買ってきます。雨彦、想楽を頼みますね」
クリスさんはレッスン室の外の自販機へと向かった。ぐったり座り込んだ僕の横で、雨彦さんが書類を挟んでいたファイルを扇いで風を送ってくれる。生ぬるい風はあまり汗を引かせてはくれなかった。
「…これでも、体力ついてきたと、思ってたんだけどなー…」
「安心しな。今日のは俺でもきつかった。ついてこれるなら大したもんさ」
1248「想楽!大丈夫ですか」
「うん…なんとかー…」
「水分補給しな。水はあるかい?」
「あー…さっき飲みきっちゃったー…」
「私が買ってきます。雨彦、想楽を頼みますね」
クリスさんはレッスン室の外の自販機へと向かった。ぐったり座り込んだ僕の横で、雨彦さんが書類を挟んでいたファイルを扇いで風を送ってくれる。生ぬるい風はあまり汗を引かせてはくれなかった。
「…これでも、体力ついてきたと、思ってたんだけどなー…」
「安心しな。今日のは俺でもきつかった。ついてこれるなら大したもんさ」
chiocioya18
DONE雨想。はじめてのちゅう。ピュア村くんと甘彦さんです。説明になってるかなこれ。
引用した歌は万葉集の石川郎女です。古典文学詳しくないのでググりました。雨想を書ける教養がほしい。
おとなになれない「北村。目を」
閉じちゃくれないか、と雨彦さんが言い終わる前に瞑ってしまった。期待していなかったと言えば嘘になる。
僕と雨彦さんはお付き合いをしている。告白して同意を得て、たまに見つめあったり、手を繋いだり。成立してから数ヶ月経つけれど至って折り目正しい交際。お互いアイドルなので世間の目には大変に気を遣う必要もあり、ろくにデートにも行けない。だから僕らの密会場所は専ら、僕の帰宅を送ってくれる雨彦さんの車の中だ。
今夜も例に漏れず雨彦さんに兄さんのマンションの近くまで送ってもらって、でもすぐに車を降りたくないななんて考えながらサイドブレーキに置かれた雨彦さんの手に自分の手を重ねてみたりして。そうしたらその手を雨彦さんにとられて、顔を上げたらびっくりするくらい優しい目をした雨彦さんに、そう、せがまれた。
1243閉じちゃくれないか、と雨彦さんが言い終わる前に瞑ってしまった。期待していなかったと言えば嘘になる。
僕と雨彦さんはお付き合いをしている。告白して同意を得て、たまに見つめあったり、手を繋いだり。成立してから数ヶ月経つけれど至って折り目正しい交際。お互いアイドルなので世間の目には大変に気を遣う必要もあり、ろくにデートにも行けない。だから僕らの密会場所は専ら、僕の帰宅を送ってくれる雨彦さんの車の中だ。
今夜も例に漏れず雨彦さんに兄さんのマンションの近くまで送ってもらって、でもすぐに車を降りたくないななんて考えながらサイドブレーキに置かれた雨彦さんの手に自分の手を重ねてみたりして。そうしたらその手を雨彦さんにとられて、顔を上げたらびっくりするくらい優しい目をした雨彦さんに、そう、せがまれた。
ahotamanZ
DONE雨想版一週間ドロライ お題「ヒュチャ」お借りしました。好きな人に自分を食べてもらうやつだけどなんかそういう倫理的な問題にならないやつ?概念的なやつ?が大好きなので書いてしまいました 2kurautu
DONE本編終了後のみかねじ未満です。distortion 呻く声は扉を開く前から聞こえていた。ノックに返事がないのは予想がついていた。鍵を外して部屋へと入る。白いベッドの上で丸くなった体は胎児のようだった。あの頃まで、喜怒哀楽の全ての中に放り投げられる前まで戻れたのなら、そこから動かずにいるのが一番幸せなのかもしれない。
「痛むのか?」
命に別状はない、という診断結果だったけれど、動きを止められる程度には攻撃を受けているのだからとても軽傷とは言えない状態だった。乱れたシーツから覗く足首には包帯が巻かれている。まっさらな白は、病室の中にあっても馴染まずに浮いて見える。
「じきに鎮痛剤も効いてくる。少しの辛抱だ」
さっき投与されたのは、鎮痛剤と呼ぶには少し強すぎる代物だ。彼を苛んでいるのはおそらく傷の痛みだけではない。俺の声が聞こえているのかどうかも定かではなかった。包帯を巻かれた足がシーツを蹴る。また新しく弧が描かれる。強張った手が暴れるように動く。今にも波間に沈もうとしているようだった。
2475「痛むのか?」
命に別状はない、という診断結果だったけれど、動きを止められる程度には攻撃を受けているのだからとても軽傷とは言えない状態だった。乱れたシーツから覗く足首には包帯が巻かれている。まっさらな白は、病室の中にあっても馴染まずに浮いて見える。
「じきに鎮痛剤も効いてくる。少しの辛抱だ」
さっき投与されたのは、鎮痛剤と呼ぶには少し強すぎる代物だ。彼を苛んでいるのはおそらく傷の痛みだけではない。俺の声が聞こえているのかどうかも定かではなかった。包帯を巻かれた足がシーツを蹴る。また新しく弧が描かれる。強張った手が暴れるように動く。今にも波間に沈もうとしているようだった。
chiocioya18
DONE雨想。体温が低い雨彦さん。たぶん1ラウンド終えてのインターバル中のお喋りです。けっこうイチャついている。
爬虫は愛で火傷する「雨彦さん、爬虫類みたいって言われたことないー?」
寝台の上での北村からの突拍子もない質問に無言の間をあけてしまった。狐ならたまに例えられるが、ヘビやトカゲはあまり縁がなかった気がする。
「いいや、ないな。なぜだい?」
「だってこんなに体温低いから。手とか足が冷え症って人はいるけど、ほとんど全身ひんやりしてるよー」
そう言って珍しげに俺の腕や腹を触ってくる北村の手は確かに温かい。そういえば先ほどまで触れていた胸や背中はもっと温かかったと思い返して、ククと喉が鳴ってしまった。
「そりゃあ。俺の全身に触ったことがあるやつしか知りようがないんじゃないか?」
この時の北村ときたら。思いっきり口をへの字に曲げて耳を真っ赤にしていた。
632寝台の上での北村からの突拍子もない質問に無言の間をあけてしまった。狐ならたまに例えられるが、ヘビやトカゲはあまり縁がなかった気がする。
「いいや、ないな。なぜだい?」
「だってこんなに体温低いから。手とか足が冷え症って人はいるけど、ほとんど全身ひんやりしてるよー」
そう言って珍しげに俺の腕や腹を触ってくる北村の手は確かに温かい。そういえば先ほどまで触れていた胸や背中はもっと温かかったと思い返して、ククと喉が鳴ってしまった。
「そりゃあ。俺の全身に触ったことがあるやつしか知りようがないんじゃないか?」
この時の北村ときたら。思いっきり口をへの字に曲げて耳を真っ赤にしていた。
komaki_etc
DOODLE雨想シーグラス 三人で海に来たら、それはもうあっという間に、それぞれが別行動をする。クリスさんは海の中へ、雨彦さんはどこかへふらふら、そういう僕も浜辺をうろうろ。波の音だけが僕らを繋いでいる。
ふと、足元にコツンと何かが当たる。太陽の光をきらきらと柔らかく反射するそれは、貝殻でも珊瑚でもない。拾い上げてみれば、曇ったガラスの欠けら。いわゆるシーグラスだ。緑色の小さな輝きを拾い上げて、太陽に翳してみる。ここに辿り着くまで、どれだけの冒険をしてきたのだろう。僕が名前を知らないどこかの沖で、昔々の海賊が宴会中に放り投げた酒瓶だったら、浪漫がある。それとも案外、この浜辺でうっかり瓶を割っちゃっただけだったりして。くすくす、と込み上げる笑いを波の音に乗せていると、「綺麗だな」と雨彦さんが近付いてきた。
760ふと、足元にコツンと何かが当たる。太陽の光をきらきらと柔らかく反射するそれは、貝殻でも珊瑚でもない。拾い上げてみれば、曇ったガラスの欠けら。いわゆるシーグラスだ。緑色の小さな輝きを拾い上げて、太陽に翳してみる。ここに辿り着くまで、どれだけの冒険をしてきたのだろう。僕が名前を知らないどこかの沖で、昔々の海賊が宴会中に放り投げた酒瓶だったら、浪漫がある。それとも案外、この浜辺でうっかり瓶を割っちゃっただけだったりして。くすくす、と込み上げる笑いを波の音に乗せていると、「綺麗だな」と雨彦さんが近付いてきた。
kurautu
DONE一週間ドロライさんよりお題「クリスマス」お借りしました!雨とクリスマス 初めての恋にあたふたしてほしい
雨は 冷たい雨が凍りついて、白く儚い雪へと変わる。そんなことは都合よく起きなかった。僕はコンビニの狭い屋根の下で、雑誌コーナーを背中に貼り付けながら落ちてくる雨を見上げていた。
初めてのクリスマスだ。雨彦さんと僕がいわゆる恋人同士という関係になってから。だからといって浮かれるつもりなんてなかったけれど、なんとなく僕たちは今日の夜に会う約束をしたし、他の予定で上書きをする事もなかった。少しだけ先に仕事が終わった僕はこうして雨彦さんを待っている。寒空の下で。空いた手をポケットへと入れた。手袋は昨日着たコートのポケットの中で留守番をしている。
傘を差して、街路樹に取り付けられたささやかなイルミネーションの下を通り過ぎていく人たちは、この日のために用意したのかもしれないコートやマフラーで着飾っていた。雨を避けている僕よりもずっと暖かそうに見えた。視線を僕の足元へと移すと、いつものスニーカーが目に映る。僕たちがこれから行こうとしているのは、雨彦さんお気に入りの和食屋さんだ。クリスマスらしくたまには洋食もいいかもしれない、なんて昨日までは考えていたけれど、冬の雨の冷たさの前には温かいうどんや熱々のおでんの方が魅力的に思えてしまったのだから仕方がない。
1915初めてのクリスマスだ。雨彦さんと僕がいわゆる恋人同士という関係になってから。だからといって浮かれるつもりなんてなかったけれど、なんとなく僕たちは今日の夜に会う約束をしたし、他の予定で上書きをする事もなかった。少しだけ先に仕事が終わった僕はこうして雨彦さんを待っている。寒空の下で。空いた手をポケットへと入れた。手袋は昨日着たコートのポケットの中で留守番をしている。
傘を差して、街路樹に取り付けられたささやかなイルミネーションの下を通り過ぎていく人たちは、この日のために用意したのかもしれないコートやマフラーで着飾っていた。雨を避けている僕よりもずっと暖かそうに見えた。視線を僕の足元へと移すと、いつものスニーカーが目に映る。僕たちがこれから行こうとしているのは、雨彦さんお気に入りの和食屋さんだ。クリスマスらしくたまには洋食もいいかもしれない、なんて昨日までは考えていたけれど、冬の雨の冷たさの前には温かいうどんや熱々のおでんの方が魅力的に思えてしまったのだから仕方がない。
kurautu
DONE診断メーカーより:くらうつの雨想さんは、「朝のゲームセンター」で登場人物が「思い出す」、「ミルク」という単語を使ったお話を考えて下さい。https://shindanmaker.com/28927
朝のゲームセンター 思い出す ミルク 僕たちの足元に伸びる光は柔らかく色づいた白で、僕はミルク味のキャンディを思い出した。雨彦さんが覗き込んでいるその機械はUFOのような形をしている。透明な丸いドームの中で色とりどりのお菓子がゆっくりと回っていた。まだ街は目を覚ましていない。朝の眠たげな光の中で鮮やかなその色は目に眩しい。
「幼き日、銀の硬貨を夢に換えー。懐かしいねー」
「そうだな。……いや、俺は初めてかもしれないな」
意外だとは思わなかった。ゲームセンターにいる雨彦さんはどうにもうまく想像ができない。軽やかすぎる音も、点滅する強い光も、ケースに詰め込まれたぬいぐるみたちも、雨彦さんには似合わない。このゲームセンターにはそのどれもがなかった。聞こえるのは目の前の機械が立てる微かな駆動音だけで、光はガラスの向こうから差し込む朝日だけで、ここで手に入れられるものは、どうやらこの中にあるお菓子だけのようだった。
2404「幼き日、銀の硬貨を夢に換えー。懐かしいねー」
「そうだな。……いや、俺は初めてかもしれないな」
意外だとは思わなかった。ゲームセンターにいる雨彦さんはどうにもうまく想像ができない。軽やかすぎる音も、点滅する強い光も、ケースに詰め込まれたぬいぐるみたちも、雨彦さんには似合わない。このゲームセンターにはそのどれもがなかった。聞こえるのは目の前の機械が立てる微かな駆動音だけで、光はガラスの向こうから差し込む朝日だけで、ここで手に入れられるものは、どうやらこの中にあるお菓子だけのようだった。