こにし
MOURNING2021.6.27発行 オーカイ本『ささやかなぼくの天国』より 小説『The fallen spoon』のweb再録です再録にあたり多少加筆修正しております
The fallen spoon 降り積もった雪に胸を弾ませることがなくなったのはいつからだろうとカインは考えた。幼い頃はちらちらと粉雪が降っているだけでも大はしゃぎで薄着のまま家を飛び出し、そのたびに母が追いかけてきて上着やマフラーや手袋を着せられたものだった。その頃は積雪による被害や吹雪の恐ろしさを知らなかったのだ。雪を見てそんなことを考えるようになった今、大人になったというよりかは、歳をとったな、という後ろ向きな感情があった。
一面の雪。真っ白な地表は太陽の光を反射して眩しく、黒目の内側でちいさな光がちかちかと明滅している。防寒具を身に着けてはいるものの、唯一外気に晒された顔面は刺すような寒さに痛みを感じるほどだった。雪と枯れ木だけの山道はまだずっと続いてゆくようで、果ては見えない。
6502一面の雪。真っ白な地表は太陽の光を反射して眩しく、黒目の内側でちいさな光がちかちかと明滅している。防寒具を身に着けてはいるものの、唯一外気に晒された顔面は刺すような寒さに痛みを感じるほどだった。雪と枯れ木だけの山道はまだずっと続いてゆくようで、果ては見えない。
こにし
MOURNING2021.6.27発行 オーカイ本『ささやかなぼくの天国』より 小説『夜半のワルツ』のweb再録です再録にあたり多少加筆修正しております
夜半のワルツ 薔薇の匂いがする庭園で嗜むワインは悪くない味わいだった。グラスは空になってしまったけれど、ボトルを一本拝借してきたので、まだまだ夜は長い。
屋敷の方から微かに漏れている三拍子のワルツに合わせてステップを踏む。やわらかい風に木立が揺れ、それすらも奏者となって今宵の晩餐を歓迎した。いたく気分が良い。今なら誰かと踊ってやっても良いだろう。
オーエンがひとつ呪文を唱えると、庭園の薔薇の茎がしゅるしゅると人の形を象り、花弁のドレスが着せられた。そうしてできあがった薔薇の貴婦人を目の前に呼び寄せると、オーエンはその手をとって彼女をエスコートした。二人は脚をもつれさせることなく完璧なワルツを踊ってみせた。庭に住まうリスや小鳥がやってきて、オーエンの肩に乗るものもいれば、ギャラリーに徹するものもいた。ひそやかでつつましい舞踏会だった。
4442屋敷の方から微かに漏れている三拍子のワルツに合わせてステップを踏む。やわらかい風に木立が揺れ、それすらも奏者となって今宵の晩餐を歓迎した。いたく気分が良い。今なら誰かと踊ってやっても良いだろう。
オーエンがひとつ呪文を唱えると、庭園の薔薇の茎がしゅるしゅると人の形を象り、花弁のドレスが着せられた。そうしてできあがった薔薇の貴婦人を目の前に呼び寄せると、オーエンはその手をとって彼女をエスコートした。二人は脚をもつれさせることなく完璧なワルツを踊ってみせた。庭に住まうリスや小鳥がやってきて、オーエンの肩に乗るものもいれば、ギャラリーに徹するものもいた。ひそやかでつつましい舞踏会だった。
こにし
MOURNING2021.6.27発行 オーカイ本『ささやかなぼくの天国』より 小説①『よすが』のweb再録です再録にあたり多少加筆修正しております
よすが 前を歩くオーエンの歩幅になんとか合わせようと大股で歩いても、彼はどんどん先へと進んでゆく。歩調はさほど変わらないのに追いつく気配がなく、私は、彼のいやみな程に長い脚を思った。椅子に座るときにはいつもすらりと組まれていて、以前みずから自慢げに披露するそぶりを見せたことがある。
淡い色をした美しい夢の胞子が濃霧のように漂っている。加護で守られてはいるものの、その光景を見ているだけでも幻想に呑み込まれてしまうような気がして少しくらくらする。ぼんやりと歩いていると突如、隣から顔を覗き込まれ、私はうわっとなさけない声を上げた。
「大丈夫か?」
凛とした声。それは隣を並んで歩くカインから発されたものだった。私があわてて大丈夫ですと言うと彼はそれならよかったと朗らかに笑う。思わずほっとため息を吐きそうになった。カインは妙に他者との距離が近いところがあり、意識しなくとも時折どきりとさせるようなことを仕掛けてくるものだから、心臓に悪い。誰にでも同じように接するので、彼にとってはなんら特別なことではないのだけど、私が元居た世界だとそれはなおさらたちの悪いことだとされていただろう。
5933淡い色をした美しい夢の胞子が濃霧のように漂っている。加護で守られてはいるものの、その光景を見ているだけでも幻想に呑み込まれてしまうような気がして少しくらくらする。ぼんやりと歩いていると突如、隣から顔を覗き込まれ、私はうわっとなさけない声を上げた。
「大丈夫か?」
凛とした声。それは隣を並んで歩くカインから発されたものだった。私があわてて大丈夫ですと言うと彼はそれならよかったと朗らかに笑う。思わずほっとため息を吐きそうになった。カインは妙に他者との距離が近いところがあり、意識しなくとも時折どきりとさせるようなことを仕掛けてくるものだから、心臓に悪い。誰にでも同じように接するので、彼にとってはなんら特別なことではないのだけど、私が元居た世界だとそれはなおさらたちの悪いことだとされていただろう。
amkchan_
DONEオカ応援会2開催おめでとうございます!まだオーカイの二次創作の方向性が定まっておりませんがとりあえず通過儀礼です。温かい目で見ていただけると幸いです。
(2022/8/29追記)
8/28縁バカ2で頒布したCurse word to youに少し修正したもの(pixivに掲載済み)を再録しています。 4
絵倉庫
DONEオーカイWEBオンリー開催おめでとうございます🎊Twitterとpixivで描いていたパラロイ軸のオーカイの続きで5P描き下ろしました。
※ボスによるキスマーク云々は完全に職場でのジョークとして扱ってます。ここから純度100%のオーカイルートになるのかな~と思って描いたのでよろしくお願いします! 8
もがみ
INFO本編から十年後くらいの2人がカインの実家に行く話です。ミルクセーキ※注意:カイン母がガッツリでてきます。その他、改造設定が多めなのでご注意ください。
「もしかして騎士様って馬鹿なの?」
オーエンは図書室の長机に頬をベターと付け、退屈そうに欠伸をした。何十万冊の本から一冊の本をあてもなく探すカインをかれこれ一時間ほど観察している。何千年と生きるオーエンからすると、カインの手と足に頼る捜索方法は要領悪く思えた。
「双子先生がいないから、一冊、一冊確認するしかないだろ」
カインは本から目を離すことなく答えた。
「……僕、飽きたんだけど」
そう不貞腐れながらも、オーエンはこの場から離れようとしなかった。いわゆる、因縁の仲といわれる二人だか、最近は何でもない時間が増えてきた。忙しなく動くカインとただいるだけのオーエン。オーエンが思い出したようにイタズラをしかけても、二人の空気感が特別に悪くなることもなかった。
8860「もしかして騎士様って馬鹿なの?」
オーエンは図書室の長机に頬をベターと付け、退屈そうに欠伸をした。何十万冊の本から一冊の本をあてもなく探すカインをかれこれ一時間ほど観察している。何千年と生きるオーエンからすると、カインの手と足に頼る捜索方法は要領悪く思えた。
「双子先生がいないから、一冊、一冊確認するしかないだろ」
カインは本から目を離すことなく答えた。
「……僕、飽きたんだけど」
そう不貞腐れながらも、オーエンはこの場から離れようとしなかった。いわゆる、因縁の仲といわれる二人だか、最近は何でもない時間が増えてきた。忙しなく動くカインとただいるだけのオーエン。オーエンが思い出したようにイタズラをしかけても、二人の空気感が特別に悪くなることもなかった。
v_ran_tan
MAIKINGフォ学のオーカイでホラー。憑かれやすいカインくんと、現代まで生き続けて高校生してるオーエンくん。
オーカイのホラー 気付いたら、隣を歩いていたはずの男が居なかった。またか、と歩みを止めて振り返り、再び「またか」と溜息を落とす。忌々しげに名前を呼んでも、男─カインは反応をしない。
僕では無く、目の前のソレに意識を集中させているから。
「どうしたんだ? 迷子か?」
180近くあるでかい体を折り畳んで、カインは小さなソレに目線を合わせて話しかけている。ソレは肩下まである黒い髪を左右の耳の下で結んでいて、白い長袖シャツに黒い膝丈のスカートを身に付けている。この、真夏に。まだてっぺんにも達していないと言うのに、太陽の光はじりじりと肌を焼いている。
このおかしさに、あの馬鹿は全くもって気付いていない。
僕だって学ランを着ているけれど、それは、また話が違うから、ここでは棚に上げて置くことにする。
1297僕では無く、目の前のソレに意識を集中させているから。
「どうしたんだ? 迷子か?」
180近くあるでかい体を折り畳んで、カインは小さなソレに目線を合わせて話しかけている。ソレは肩下まである黒い髪を左右の耳の下で結んでいて、白い長袖シャツに黒い膝丈のスカートを身に付けている。この、真夏に。まだてっぺんにも達していないと言うのに、太陽の光はじりじりと肌を焼いている。
このおかしさに、あの馬鹿は全くもって気付いていない。
僕だって学ランを着ているけれど、それは、また話が違うから、ここでは棚に上げて置くことにする。
v_ran_tan
MAIKING現パロのオーカイが温泉旅館でのんびりするお話。現パロなので因縁は消し飛んだしオエの情緒が育っている。半袖で過ごすには少しばかり寒くなってきた頃、俺はオーエンと温泉旅行に来ている。全国各所に人気の温泉街があるが、ここも有名な温泉街のひとつだ。
テレビでたまたま温泉特集を見て、行きたい、と俺が何の気なしに放った一言が切っ掛けだ。じゃあ今週末、だなんてオーエンが言い出すものだから、慌てて止めたのが懐かしい。今月は買い物をし過ぎたから金欠だった。だが、それを伝えるとオーエンは自分が全額出すのだから関係ない、とばっさり。
確かにオーエンは俺より6歳も歳上で、仕事もしていて、かなり稼いでいる。パソコンで仕事をしている、ということしか知らないけれど、見るからに高そうなマンションに住んでいるし、着ている物もブランド物ばかりだ。だからきっと、オーエンにとって2人分の旅費を出すことなんて痛くも痒くも無いのだろうけれど、それは俺が嫌だった。
俺はまだ学生で、色々な面で限界はあるけれど、オーエンとはできるだけ対等でいたい。だから、オーエンに全て頼るのは、嫌だ。
俺はオーエンのお金目当てで付き合っているわけではないから。2人で楽しむ為なら、自分もその分の出資をしたい。
自分も出す、と言ったら、資金溜まるまで 4158
shiro4_27
MOURNINGオーカイと猫、両片想い?なのだろうかこれは設定とか文章がいろいろおかしい
文字書きさんはほんとすごいと思う、尊敬する………………オーエン
いつからかは知らない。
思い出そうとも思わない。
ただ明確に。
確実に。
自分の中で瞳を交換した男が面倒な存在になった。
「苛立つ。」
小さく呟く。
姿が見えていれば、一つ一つの行動に感情が波のように揺れる。
それが鬱陶しくて、姿を見ないようにすれば何故か気にかかってあの、赤い色を無意識に追う自分がいる。
今日は後者だ。
カインの姿を朝から一度も見ていない。
別にそれで全く問題ないはずなのに、つい、偶然会った賢者に居場所を聞いてしまい、そして知っていたことに思わず渋面を作った。
何がしたいんだ、自分は。
飽きもせず、何度も何度も。
木刀を持ち上げ、振るい、また構え何もない空間に向かって下す。
その度に赤い髪がぱらぱらと跳ね上がって宙を舞う。
「鬱陶しそう。」
ポツリと呟いて切ればいいのに、と頭の中で短髪になったカインの姿を描いて
似合わないな、と無造作に思考を追いやる。
あぁ、でも。
少しだけ頭に描いた短髪のカインを追いかけて捕まえて、正面からまじまじと見ると
なかなかどうして。
伸ばされた前髪がなくて、自分が与えた瞳がよく見えて案外いいかもしれない 7273