kinoko12069
MAIKINGいつか書いてたセベ監。セベ監と言いつつ書きたかったのはセベクの両親の馴れ初めです。捏造過多です。
今回は描写の都合でセベクは見た目も性格もほぼお母さん似ということにしていますが、瞳の色だけはお父さん似とかそういうのいいなぁと思います
「ユウ!!」
「っ!はい!!」
この人に背後から声を掛けられるとびっくりする。さすがに「人間」呼びは止めてくれたものの、彼からのこの呼び方には未だ慣れないでいた。
その人はカツカツと靴を鳴らして此方まであっという間に近づいてきた。接近すると彼の背の高さが際立って見える。彼と話すとき、私はいつだって見上げる体勢になった。
「貴様、次のホリデーはどうするんだ?」
「もうちょっとだけ声、落としてくれるかな……グリムと、あとはゴーストたちと過ごす予定だよ」
彼の大きな声に若干萎縮しつつ、私はホリデーの計画を話した。
皆が心待ちにしているホリデーは、私にとってはちょっとだけ淋しいものだ。だって、みんな故郷に帰ってしまうから。けれどグリムはいるし、ゴーストのおじさんたちもいてくれるという。もはや彼らとご馳走を囲むことになるのが恒例になっていた。
15587「っ!はい!!」
この人に背後から声を掛けられるとびっくりする。さすがに「人間」呼びは止めてくれたものの、彼からのこの呼び方には未だ慣れないでいた。
その人はカツカツと靴を鳴らして此方まであっという間に近づいてきた。接近すると彼の背の高さが際立って見える。彼と話すとき、私はいつだって見上げる体勢になった。
「貴様、次のホリデーはどうするんだ?」
「もうちょっとだけ声、落としてくれるかな……グリムと、あとはゴーストたちと過ごす予定だよ」
彼の大きな声に若干萎縮しつつ、私はホリデーの計画を話した。
皆が心待ちにしているホリデーは、私にとってはちょっとだけ淋しいものだ。だって、みんな故郷に帰ってしまうから。けれどグリムはいるし、ゴーストのおじさんたちもいてくれるという。もはや彼らとご馳走を囲むことになるのが恒例になっていた。
hanaya_san03
DONE2022.3.5-6 イベ展示作品(既作)"四月の雪"
クルnot監🐶🌸
貴方が恋に落ちていく
その横で、私はずっと貴方に恋をしてた。
幼馴染以上、恋人未満。
けれど、確かに特別だった。
⚠︎注意事項⚠︎
*🐶先生と幼馴染設定
*鈍感な先生
*not ハピエン
※こちらは2022.5月開催のtwstイベントで書籍化する予定です* 12
kinoko12069
MOURNING初めての恋人に浮かれるイデア・シュラウドがオルトとかアズールと相談する話。※実際は100も話してないし、監督生はほとんど出てこないです。
たまには書きかけの整理を
カノジョを逃がさない方法100選「ねぇ、アズール氏ィ」
ボードゲーム部の活動中、僕はふと思い立ったことがあって、向かいに座るアズール氏に声を掛けた。当の氏は眉間に皺を寄せて盤面を睨みつけている。今日は頭脳を使うゲームだから、さしものアズール氏でも集中しないとやってられないらしい。
「いま話しかけないでくださいます?」
僕の呼びかけにアズール氏は、その鋭い眼光を盤上から此方へとスライドさせた。睨まれるのは慣れてるので、特に驚くこともなく話を続ける。
「ユウ氏のご機嫌取りって何すればいいと思う?」
その問いかけにアズール氏はその大きな瞳をさらに見開いた。驚き、そしてその表情は喜色に富んだものへと変わっていく。そして駒を動かそうとしていたその手を自らのブレザーの内ポケットへと突っ込んだ。どうやら何かを取り出すつもりらしい。
2615ボードゲーム部の活動中、僕はふと思い立ったことがあって、向かいに座るアズール氏に声を掛けた。当の氏は眉間に皺を寄せて盤面を睨みつけている。今日は頭脳を使うゲームだから、さしものアズール氏でも集中しないとやってられないらしい。
「いま話しかけないでくださいます?」
僕の呼びかけにアズール氏は、その鋭い眼光を盤上から此方へとスライドさせた。睨まれるのは慣れてるので、特に驚くこともなく話を続ける。
「ユウ氏のご機嫌取りって何すればいいと思う?」
その問いかけにアズール氏はその大きな瞳をさらに見開いた。驚き、そしてその表情は喜色に富んだものへと変わっていく。そして駒を動かそうとしていたその手を自らのブレザーの内ポケットへと突っ込んだ。どうやら何かを取り出すつもりらしい。
Ma410ro
INFO2/20BoM合わせの新刊サンプルです。13日のラギ監♀Webオンリー『Donut with You!』にて先行予約開始中。閲覧パスワードはイベント会場内お品書きをご覧ください。
※デフォ名監督生
※捏造・幻覚・ご都合主義
文庫サイズ・ページ数未定(50P前後の予定)
会場価格:400円 5289
minamikantwst07
DOODLE #twstプラス#twst夢
🐬🌸/付き合ってるジェイ監
(ユウ呼び)
落書きオブ落書きー!!
🌸「(何がとは言いませんが)最中、ずっと気を遣わせてるし私に飽きてきてませんか?(少し不安げに)」
の回答。
🐬「貴方に飽きる事はありませんよ、ただ……(落書き内のセリフ)」
🌸「……いえ、今のままで大丈夫です」
kinoko12069
DONEイデ監です。とある海岸沿いに住む少年(モブ)と、たまたま居合わせたデアが会話する話。卒業後設定、女監督生、捏造過多に注意です。二人は結婚しています。
道の向こうに変な人がいる。細くて長い足を組んでベンチに座り、ぼうっと海を眺めているようだ。
具合の悪そうな顔だとか、黒っぽい服を着ているところとか変なところは沢山あるけれど、何より奇妙なのは髪が燃えているところだ。その人の項の辺りまでを、ふわふわと燃える青い炎が覆っている。初めて見た、一体どんな魔法なんだろう……僕がじっと観察していたのに気が付いたのか、その人は此方を見た。気怠げだけどどこか鋭い、そんな視線だった。
「……何か用?」
地を這うような低い声だった。こちらを向いたその顔は30代ぐらいだろうか。もっと若くも見えるけれど、目の下にべったりと隈が貼りついていて草臥れた印象を受ける。何も答えないでいるのも気まずいので、僕はちょっと尋ねてみることにした。
6319具合の悪そうな顔だとか、黒っぽい服を着ているところとか変なところは沢山あるけれど、何より奇妙なのは髪が燃えているところだ。その人の項の辺りまでを、ふわふわと燃える青い炎が覆っている。初めて見た、一体どんな魔法なんだろう……僕がじっと観察していたのに気が付いたのか、その人は此方を見た。気怠げだけどどこか鋭い、そんな視線だった。
「……何か用?」
地を這うような低い声だった。こちらを向いたその顔は30代ぐらいだろうか。もっと若くも見えるけれど、目の下にべったりと隈が貼りついていて草臥れた印象を受ける。何も答えないでいるのも気まずいので、僕はちょっと尋ねてみることにした。
さがみ
DONE🥀「似合う…ね?」♦️「聞かないで!!」
❤️「新郎っつーよりホストじゃね」
♠️「なんか……1人と結婚しなさそう……」
♦️「ケーくん一途だから!!」
♣️「ははははは!にあうなあ!ははははは!げほっ」
♦️「笑いすぎ!!」
監「ドンペリハイリマース!!!」
♦️「入らないからぁぁあああ!!!」
kinoko12069
MOURNING書いたはいいけど自分で解釈違い起こしたやつ。元の世界に帰った監督生の話。
イデアがきちんと約束さえしてれば花嫁が控室から忽然と消えるエンドも有り得たのにねって話。 3
sousaku315
MAIKINGフロ監未満。「小エビちゃん」って言われ続けてたら、ふとした拍子に自分でもそう名乗っちゃう監。
先生を「お母さん(お父さん)」って呼んじゃう時みたいな……そんなかわいい監を描きたかった。
完成させたい。(希望)
25Zenn
PROGRESS欠損ネタのジェイ監の後編です。ほぼ、ジェイド不在なのでフロ監みたいですが。誰が何と言おうとジェイ監です。
ゆくゆくは全部くっつけて支部におまけつけてあげる予定。
いつとは言えない 5528
kinoko12069
MOURNING捕まったルークを監督生が助けに行く話です。6章終わった時空になるのだろうか……。
何度でも言いますが私は大の男が誘拐される話が大好きです。
狩人が誘拐された話「ええ、大人の事情というものですよ」
何も尋ねてはいないのに、学園長はそう私に前置きした。「大人の事情」だとかそういう言葉を使う人間はあまり信用ならないが、話を複雑にするのもナンセンスなので黙っておくことにする。そんな私の様子に気づいているのかいないのか、学園長は飄々と掴みどころのない語り口で、そのまま話を続けていった。
「どんなことにも多少の犠牲はつきものですし、私にも学園の運営という大切な仕事がありますからね。私、こう見えても忙しいので」
……分かってはいたけど、遠回りだ。業を煮やした私は話の続きを促した。
「それで、今日はどんな御用です?植物園の草むしり?喧嘩の仲裁?行事の使い走り?今日は17時からサムさんの店で特売があるので、できれば早く教えていただけると助かるのですが」
10779何も尋ねてはいないのに、学園長はそう私に前置きした。「大人の事情」だとかそういう言葉を使う人間はあまり信用ならないが、話を複雑にするのもナンセンスなので黙っておくことにする。そんな私の様子に気づいているのかいないのか、学園長は飄々と掴みどころのない語り口で、そのまま話を続けていった。
「どんなことにも多少の犠牲はつきものですし、私にも学園の運営という大切な仕事がありますからね。私、こう見えても忙しいので」
……分かってはいたけど、遠回りだ。業を煮やした私は話の続きを促した。
「それで、今日はどんな御用です?植物園の草むしり?喧嘩の仲裁?行事の使い走り?今日は17時からサムさんの店で特売があるので、できれば早く教えていただけると助かるのですが」
mike_zatta
DONE夢を見る監督生の話。飽きもせず寿命ネタです。痛いとか怖くはないけど悲しいかもしれないので、大丈夫な人向け。
3と付いてますが続編ではないのです。またまた別の偏愛。
《 偏愛3 》 空を飛ぶ夢を見た。
毎夜世界に溢れる多くの夢がそうであるように、目を開いた私は唐突に、それでいてごく自然に、あの懐かしいオンボロ寮の裏庭に立っていた。在学中数えきれない時を過ごしたその場所には、一度うっかり使って洗濯物が赤銅色に染まった錆びた物干し台だとか、猫の額ほどの大きさながら驚くほど充実していた家庭菜園、そしてガーデンテーブルというには若干無骨すぎる机と椅子なんかが記憶と変わらずにちゃんとあって、それだけで郷愁に駆られてしまう。視線を落とせば私の手には二人分のティーセットが入ったバスケット。頭上からは「全く、すっかりあなたをお待たせしてしまって」とうっすらと憤りの滲む声が降る。振り仰げばそこには、記憶より少しだけあどけない顔をしたあの人の姿。
3941毎夜世界に溢れる多くの夢がそうであるように、目を開いた私は唐突に、それでいてごく自然に、あの懐かしいオンボロ寮の裏庭に立っていた。在学中数えきれない時を過ごしたその場所には、一度うっかり使って洗濯物が赤銅色に染まった錆びた物干し台だとか、猫の額ほどの大きさながら驚くほど充実していた家庭菜園、そしてガーデンテーブルというには若干無骨すぎる机と椅子なんかが記憶と変わらずにちゃんとあって、それだけで郷愁に駆られてしまう。視線を落とせば私の手には二人分のティーセットが入ったバスケット。頭上からは「全く、すっかりあなたをお待たせしてしまって」とうっすらと憤りの滲む声が降る。振り仰げばそこには、記憶より少しだけあどけない顔をしたあの人の姿。
mike_zatta
PAST監がジェの何を愛してるか、という話。2と付いてますが続編ではないです。また別の偏愛です。
(2021.3.30)
《 偏愛2 》「ジェイド先輩の好きなところ?えーっと頭が良くて格好良くって、それから、」
へーへー、お熱いこって。
呆れた声に返されたのは、すでに懐かしい学生時代のこと。
◇
「ならばここを出て行きますか?あなた、僕無しでどうやって生きていくおつもりで?」
ちょっとした言い合いの最中に投げつけられた言葉。歪に口角を吊り上げたジェイドの挑発的な瞳に見下げられたユウは、頭の中心が急速に冷えていくのを感じた。自身を取り囲む空気がどろり、と澱む。それはまるでスライムが肌を滑り落ちていくような、粘性をもった不快感。
何故
何故、
何故。
どうしてそんな、つまらないことを言うの。
彼女の心を満たしたのはありがちな悲しみなどでは無い。真っ赤な怒りだ。
1417へーへー、お熱いこって。
呆れた声に返されたのは、すでに懐かしい学生時代のこと。
◇
「ならばここを出て行きますか?あなた、僕無しでどうやって生きていくおつもりで?」
ちょっとした言い合いの最中に投げつけられた言葉。歪に口角を吊り上げたジェイドの挑発的な瞳に見下げられたユウは、頭の中心が急速に冷えていくのを感じた。自身を取り囲む空気がどろり、と澱む。それはまるでスライムが肌を滑り落ちていくような、粘性をもった不快感。
何故
何故、
何故。
どうしてそんな、つまらないことを言うの。
彼女の心を満たしたのはありがちな悲しみなどでは無い。真っ赤な怒りだ。
mike_zatta
PASTお互いの好奇心が暴発してしまった2人の話。若干不穏な雰囲気ですが悲しい展開は一切ありません。
ちょっと独占欲を拗らせただけの、ただただ相思相愛な2人です。
(2020.12.3)
《 偏愛 》「ジェイド先輩が泊まりに来てる日は、なんだか安心して眠りが深くなっちゃうみたいなの。」
そんな惚気にあてられてうんざりした顔をしたのは、エースだったかデュースだったか。
◇
深夜二時。監督生がむくりと身を起こす。
"ジェイド先輩が泊まりに来てる日"なのに、目が覚めちゃった。寝起きで靄がかかったような頭をゆるりと振ると、しんと静まり返った部屋の中、すうすうと規則的な寝息が響く。
左隣に顔を向ければ、月明かりの中、ジェイドが無防備な姿を晒している。僅かに上下する胸、時折ぴくりと震える[[rb:瞼 > まぶた]]。そこにあるのは命の気配。
──今なら、この人を殺せるかしら。
唐突に、しかしはっきりと。何故そんな思考に陥ったのか、夜の闇に[[rb:唆 > そそのか]]されたとしか思えない。そっと首筋に手を掛ければ血管がドクドクと脈打つのを感じる。
1466そんな惚気にあてられてうんざりした顔をしたのは、エースだったかデュースだったか。
◇
深夜二時。監督生がむくりと身を起こす。
"ジェイド先輩が泊まりに来てる日"なのに、目が覚めちゃった。寝起きで靄がかかったような頭をゆるりと振ると、しんと静まり返った部屋の中、すうすうと規則的な寝息が響く。
左隣に顔を向ければ、月明かりの中、ジェイドが無防備な姿を晒している。僅かに上下する胸、時折ぴくりと震える[[rb:瞼 > まぶた]]。そこにあるのは命の気配。
──今なら、この人を殺せるかしら。
唐突に、しかしはっきりと。何故そんな思考に陥ったのか、夜の闇に[[rb:唆 > そそのか]]されたとしか思えない。そっと首筋に手を掛ければ血管がドクドクと脈打つのを感じる。
mike_zatta
MOURNING1年前に書き始めてずっと眠ってたやつ。場面場面は割と気に入ってるんですが、話の流れがイマイチ。かといってゼロから組み立てるほどの気力も湧かず。おまけにラストが二つある。メモというには書き込みすぎたので供養 (9000字オーバー)
⚠️ちょっとだけ肌色です。
擬態薬&ウツボ式セの設定はいつかどこかでリサイクルしたい。
《 想い出と対価の話 》 夜遅く人通りも無い鏡舎の真ん中で、オンボロ寮の監督生は逡巡していた。
左から数えて三つ目、巻き貝や珊瑚の装飾が施された鏡の前を行ったり来たり。時折何か覚悟を決めたようにその滑らかな表面をキッと見据え、かと思えば再び目を伏せたりしながら、心はその奥に繋がっているオクタヴィネル寮を、そしてその中の一室にいるはずの恋人、ジェイド・リーチのことを思う。
学園長室に呼び出されたその帰り道、顔が見たいという衝動に突き動かされて一直線にここまで来たけれど、最後の一歩が踏み出せないまま早くも十五分ほどが経過してしまった。
やっぱり迷惑だろうな、こんな夜更けに会いたいだなんて。
手元の時計は間もなく二十二時半を指そうという頃。
9147左から数えて三つ目、巻き貝や珊瑚の装飾が施された鏡の前を行ったり来たり。時折何か覚悟を決めたようにその滑らかな表面をキッと見据え、かと思えば再び目を伏せたりしながら、心はその奥に繋がっているオクタヴィネル寮を、そしてその中の一室にいるはずの恋人、ジェイド・リーチのことを思う。
学園長室に呼び出されたその帰り道、顔が見たいという衝動に突き動かされて一直線にここまで来たけれど、最後の一歩が踏み出せないまま早くも十五分ほどが経過してしまった。
やっぱり迷惑だろうな、こんな夜更けに会いたいだなんて。
手元の時計は間もなく二十二時半を指そうという頃。
kinoko12069
MOURNING・好きな曲から連想して書いた当社比重めなイデ監。何の縁もない田舎の駅で会話する二人の話。この二人は付き合ってはいないです。・人を選ぶ内容なので気をつけてください。卒業後設定、セフレ的な関係と妊娠の描写があります。
・夏が終わったばかりですが冬の話です。
・書き終わってから思い出しましたがこの曲、別れの歌なんですよねぇ……。良かったら聴いてみてください。
There will never be another you「外はやっぱり寒いね」
何もない駅のベンチで蹲っていると、頭上から声が降って来た。今もっとも聞きたくなかったような、それなのに聞きたくて仕方がなかったような声だ。
けれど顔を上げる気にはなれず、俯いたままそれに答える。
「……出てこなければ良かったのでは?」
もともと出不精な人だから、輪をかけて寒い今日などは世界が終わっても部屋を出てこないと思っていた。そういえば今朝はこの冬一番の冷え込みになるとラジオでは言っていたっけ。
それも含めて皮肉を言うと、その人は困ったようにため息をついた。
「君ねぇ……」
彼は何か言いかけて、しかし止めた。そして着ていた外套を脱ぐと、私の肩に掛けて羽織らせた。冷えた身体に、そのあたたかさは染み入っていくようだ。
6588何もない駅のベンチで蹲っていると、頭上から声が降って来た。今もっとも聞きたくなかったような、それなのに聞きたくて仕方がなかったような声だ。
けれど顔を上げる気にはなれず、俯いたままそれに答える。
「……出てこなければ良かったのでは?」
もともと出不精な人だから、輪をかけて寒い今日などは世界が終わっても部屋を出てこないと思っていた。そういえば今朝はこの冬一番の冷え込みになるとラジオでは言っていたっけ。
それも含めて皮肉を言うと、その人は困ったようにため息をついた。
「君ねぇ……」
彼は何か言いかけて、しかし止めた。そして着ていた外套を脱ぐと、私の肩に掛けて羽織らせた。冷えた身体に、そのあたたかさは染み入っていくようだ。