SilverBullet【仁+玖】 ――嗚呼、面白くない。
踵を強く打ち鳴らしながら廊下を往く。肩をそびやかし、界隈を渡る風に制服の裾をはためかせ、緩く編んだ三つ編みを背中の向こうで踊らせながら。
舎利弗玖苑はその日、最高に不機嫌であった。
――仁武は何も分かっていない。どうして、いつも無茶ばかりして……!
誘いを断られるのはこれが初めてではない。ただ、どういう経緯であれ、最終的には折れてくれるのが鐡仁武という男だ。例えば代案、例えば埋め合わせの品、そういった諸々で、臍を曲げてしまった玖苑の機嫌が少しでも良くなるよう立ち回ってくれる。
……けれど。
仁武の責任感と生真面目さは、時に余計な業務まで引き寄せる。人が好いのも手伝って、皆が彼を頼りにする。そうなると、真っ先にないがしろにされるのが自分だ。親友というだけでは、所詮『お仕事』とやらには――政府要人との会合や、机上を埋め尽くすほどの書類や、鳴り止まない電話には勝てないのだ。
4484